感知
「自己管理もできていない上にスキルも持っていないとか、自殺願望でもあるのか?」
「いえ、まったく」
「反省しているのか!?」
「すみませんすみませんすみません」
少し休憩したのちに、女騎士っぽい人に説教されている。その様子を少し離れた位置から仲間のはずの一員に見守られている。たすけて。
「私はこれでも王都の騎士団の一員なのだぞ、それなのにこの正装に吐瀉物を吐きかけるなど!」
ぷんぷん怒っている。
とりあえず右から左に聞き流しておくか。
「聞いておるのか!」
「はいぃぃぃ!」
なんで反省してますフリを見破れたんだ!?誰にもバレたことないのに…。
「あんなあからさまに顔が緩めばバレてしまいますねー」
「いつまで説教食らっているのですか」
「あはは…、面白いことにはなりましたね」
「それどんなフォローだ」
アクアベアー瞬殺してかなり余裕あるじゃねえか。逃げる必要なかっただろうが。くっそ。味方はいないのか!?ワイズえもんたすけて!
「聞いておるのか!!!」
「はいぃぃぃ!」
腹から声出さないで!耳がキーンってなる。
「もうしばらくかかりそうですねー」
「ようやく解放された…」
「お疲れ様ですー」
「うぅ、マリエル。辛かったよ…」
「よしよし、よく頑張りましたね」
圧倒的な母性。呑んだくれだけど。さすが年長者、頼りにしてます。
「いだだだだ!?」
「何か考えましたかー?」
「なんでみんな俺の心の声見破れるの!?俺のテレパス実は漏れ漏れだったりするのか!?」
「顔に出てますよー」
「なん…だと…!?」
バカな細心の注意で顔には出さないように心がけていたのに。
「それは後で色々と追求するとしてー」
「追求するのかよ…」
「色々とバレてしまいましたねー」
「あー」
俺が必殺の大車輪を見せつけてる時にクレア王女が俺の名前思いっきり読んでたしな。
「そういうわけで、俺はカイト呼びのままでいいかな?お忍びの旅路なのだろう?」
テッドの優しさが心に刺さる。お忍びっていうか。道ゆく人たちが、俺たちというかクレア王女を見て見ぬ振りをしてくれているだけなんだよなあ。特に砦の常駐兵の人たちなんて目を逸らすんだぜ。見て見ぬ振りをしながら護衛をしなくちゃならないとかいう面倒ごとを押し付けている自覚もある。本人は知らんけど。
クレア王女の方を見る。
つーん。
いや、なんでやねん。
なんかツンデレ化?いや、ツンツン化してる。
もうわけわからないよ。
「カイト呼びで頼むわ。それとテッドはどうして俺たちについてきたんだ?」
「…そうですね。事情を話してくれたわけではありませんが、漏れ出た話を聞いてしまったようなものですし。…僕はあるものを探しているだけなのです」
「あるもの?」
「詳細は言えませんが、サウスランドやウェストランドを探し回ったが見つからなくて、今はノースランドを散策中といったところかな?」
「ダンジョン関連か?」
「そうだね」
「それならなおさらダンジョンには入らない俺たちには関係なくないか」
「そうかな?」
あー、なるほど。知ってますよね。俺のこと。大々的に指名手配されてるし。というか大々的に指名手配されているなら、クレア王女だけじゃなく、俺も奇異の目で見られていたのだろうな。誘拐された王女と誘拐犯が愉快に珍道中かましているとか意味不明すぎるな。
「俺を討伐するためか?」
「ごめんね。詳細は言えない」
「いや、いいさ。世話になってるし」
「あはは…」
なんで乾いた笑いをしているのだろうか。
「それとそろそろ王都に向かいましょう。もう目の前まで来ているのに、ずっとここで待ちぼうけしているわけにもいきません」
クレア王女が仕切って王都へと向かうことになった。もう視界には入っているが、まだ2キロほど距離があるし。でかすぎて遠近感狂う。
「あれ?あれ?」
女騎士さんがクレア王女を指差しながら、俺とクレア王女を交互に見る。
「………」
「………」
気まずっ。
王都に入れば、嫌という程に注目される。即座に目をそらされるけど。
「お母さん!お姫様攫われているんじゃないの?助かったの?」
「目を合わせちゃダメよ」
ちょっと待ってそこのお母さん、それどういう意味?
宿屋のチェックインを済ませる。俺とクレア王女は城に泊まるから関係はないが、同行している3人は城には泊まらない。マリエルは泊まれると思うのだが、城内には入らないらしい。
「私たちは城内に向かいますので」
「いってらっしゃいませー」
「僕とマリエルさんは宿にいるから何かあったら気軽に呼んでくださいね」
「俺はどうするよ」
「ロイドは後で迎いに行く。一応許可もらってからじゃないと城には入れないからな」
「あの、私は…」
結局テッドは俺たちの敵対の可能性は下がったと言って良いのかな。そんなことを考えながら城へ向かう。
「………」
「………」
「………」
あれ?また気まずいぞ?
「女騎士さんはなんでついてくるん?」
「わ、私は護衛だ!万が一があっては困るだろうっ!」
万が一ねえ。
ピコピコピコ。
なんか鳴っとる。
「うーん…」
「姫様、それなんですか?」
「ワイズからいただいたものです」
「ワイズちゃん?」
クレア王女がおかしいのはワイズちゃんだった説が浮上してきたな。この謎アイテムはなんだろう。俺がカタログ購入で買ったものだろうか。毎日MPを余らせているともったいないから変なものでも大量に購入している。その時に買った何かだろうか。
「誤作動でもしているのでしょう」
「何のアイテムですか?」
「魔物感知用のアイテムですわ」
「へえ」
そんなの買ったっけ?
「あまり広範囲にも効かないので索敵スキルの劣化版と言ってましたわ」
そういうことか。そりゃ記憶から放り出しているな。
思い出した、確か半径30m以内に魔物がいると反応するとか。身を守るのには多少は役にたつかもしれないけど。それだけ近づかれたら俺としてはアウトだから意味がないとワイズちゃんが言ってた気がする。確かにクレア王女クラスの強さになれば、その領域に魔物が入り込まれて寝てても反応できるだろうな。俺は起きてても逃げ切れるレベルじゃないとのこと。
かなしみ。
「たまにピコピコと反応するのですよ」
「ピコピコっておばあさ———」
アイテム見ながら右ストレートを顔面に突き刺してくるとはなかなかやりおるわい。
「反応があったりなかったり、索敵スキルも持ち合わせているので併用してみましたが、索敵スキルには反応がありませんでした」
「壊れた、のかな?」
俺が買ったものは乱雑に置いているからな。何かにぶつかって故障したのかもしれない。
「…捨てましょうか」
「いや、俺が一応持っておくよ」
「…もしかしてハルトに反応してたりします?」
「俺は魔物じゃないから魔族だから、反応するはずないから」
俺の背後でワナワナと震えている人がいる。あ、これはしまった状態ですね。
「面倒な人が面倒な状態になっちまった…」
「貴様やはり曲者か!?」
「いや、ちょっとだけ弁解させて?」
「魔族の戯言に付き合えるか!」
「へるぷみー」
「王女様どいてください!そいつを殺せません!」
この猪突猛進系女騎士が暴れているというのに衛兵たちが見て見ぬ振りをしている。お前ら仕事しろや!




