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徹夜明けテンション

活動報告で本日の更新はできないと言ってしまったな。あれは嘘だ。

ふざけて、申し訳ありません。

なんとか時間とって書いていたら間に合いました。

 テッドが介入してきた時、マリエルは常に俺たちと行動を共にしていた。だとすれば、テッドはマリエルが用意した二重尾行のようなものなのだろうか?そもそもマリエルと合流した時はクレア王女はいつも通りの状態だった。 

 俺はベッドに横になりながら天井を見上げる。どうしたものか。明日には王都の要塞の街に到着する。そうすれば王に謁見することになるのだが、その間テッドはどうするのだろうか。それ以前にテッドにどう説明するのだろうか?黙ってコソコソと城に入るのか?いや、そもそもテッドはクレア王女の偽名にも気づいているはずなのだがな。よほど鈍感な人物なのだろうか。そんな奴本当にいるのか?

 考えがまったくまとまらない。

 不意に部屋の扉が開く音がした。鍵がかかっているはずだが?

 一体誰だ?


「いつまで唸ってる?もう朝だぞ」


 ロイドの声が絶望をもたらした。




 まさか徹夜してしまうとは、幸いなのはベッドに横になっていたおかげで作業をしている状態での徹夜ではないということ。多少体力に余裕はあるが、最後の砦から王都まで20kmくらいの道のりがある。

 それをフルアーマーで徹夜状態で?

 死んでまうぞ。


「おはようございます」

「………」


 どうしたものか。


「カイトくんー?」

「………」


 いや、結局徒歩なんだからいけるだろ。一徹夜くらいどうってことないぜ。ははっ。


「ハルトくんー?」

「はい?」

「これはまずいですねー」

「どうしたマリエル?」

「いえ、回復魔法をかけておきますねー」

「お、おお、別に必要ないけどな。体調は万全だけどな!」

「なんでいきなりツンデレなんですかー」


 すごい棒読みで言われた。

 やっぱりおかしいか。徹夜でテンションがバグってるかもしれない。気をつけねば。


「大丈夫か?カイト」

「あ、ああ、大丈夫だぞ」

「明け方でこんなに暑いのにフルアーマーは大変だな。荷物持とうか?」


 なんだこのイケメン。惚れるぞ、こら。


「いや、大丈夫。これくらい余裕だ」

「そうかい。助けが必要ならいつでも言ってくれていいからね」


 テッドってナニモンだよ。あれか、どんな相手にも優しくするからモテるとかそういうやつか。行動でイケメン性を上げていくタイプか。いや、顔の造形も整っているからその補正もあって行動もイケメンになって見えるのか?ちょっと待って、俺は一体何を考えているんだ?


「大丈夫ですか、あれ」

「大丈夫じゃないですねー」


 ロイドとマリエルの会話は耳に届かなかった。




 本格的にまずいな。

 要塞の街まで最後の道のりで軽い200mほどの山登り。いや、長い坂道と言えばいいような上り坂がある。その序盤ですでに俺の体力は底を尽きかけている。


「…大丈夫ですかー?」

「やばいかもしれん」


 小声でマリエルに限界を伝える。体力はまだ若干の余裕があるが、フルアーマーゆえの茹だるような暑さが吐き気を催してきた。

 きもちわるい…。


「ちょっと休憩しよう」


 テッドに察せられてしまった。俺たちは軽い休憩を取ることになり、吐き気を押さえ込んで切り株に座り込む。


「ほら、水だ。…大丈夫かよ」

「ちょっとは」

「全然ダメだな。なんで眠れなかった?」

「いろいろ考えていてな…」

「はあ…、お前はまだガキなんだから少しは大人に相談でもしてみ?」

「………」

「…その歳で頑固かよ。それで王女様はなんて?」

「…特に何も」

「そうか、何がおきてるのかな?」

「さあ」

「マリエル様関連か?」

「多分な。教会とうちにダンジョンの関係性が肝かもしれない」

「なんだそりゃ?」

「ラビリンスアースの核心みたいなものだ。聞くか?」

「いらん」

「…おい、少し前のお前のセリフを言ってみろ」

「俺は面倒ごとには首を突っ込まないタイプなんだ。俺のセリフだって?その歳で頑固かよってやつか?」

「その一個前だ」

「何言ったか覚えてないわ。所詮俺の口なんて出まかせしか言わんからな」

「その歳で痴呆症かよ」

「お?」

「あ?」

「「やんのか、こら!」」


 こちとら徹夜明けのテンションだぞ。今ならスキルなんて怖くねえわ。ぶっ潰したるで!


「なんで喧嘩してるんですかー」

「あはは…、仲良いですね。あの2人」

「なんのための休憩なのかしら」


 外野が何か言っているが気にはしない。俺はやるときはやるからな。ロイドに目のもの見せてやる。


「ほれ」

「ぐへっ」

「弱体化しすぎだろ」


 瞬殺されてしまった。足ひっかけられただけで顔から地面にダイブしてしまうとは。


「ほれ、フルフェイス被ってな。マジで今のお前スライムに負けるんじゃねえの?」

「バカにすんな」

「いや、お前も道中をバカにすんなよ?」

「…」

「お前に死なれたら困るって前にも言ったよな。お前は背負いこみすぎなんだよ。少しは自分に余裕を持たせろ」

「…今度は相談しろとは言わないんだな」

「俺じゃああまり力になれないからな」

「なんもかんも勇者が悪い…」

「まあ、そうなんだけどさ…、愚痴くらいは聞いてやるから」


 くっそ、アラフォーのおっさんに慰められるとは…。


「お前失礼なこと考えてるだろ」

「考えてませーん、勝手に人の思考を決めつける方が失礼な人ですー」

「相変わらず可愛げのないガキだな」

「そんなガキに雇われているなんて大層なご身分で」

「あ?」

「あ?」


 次は一発はいれてやるからな。


「元気そうなのでもう行きますよー」

「待て、マリエル。俺はロイドとの決着を———」


 ザザザ———

 木々が静かに倒れる音が聞こえる。そして倒れて行く木の中から水が出てきた。そして倒木はみるみるうちに枯れていく。


「アクアベアーだと!?」

「え?…えぇー…」


 なんか水が漂って熊みたいな形を作っている。これ魔物か?ファンシーすぎない?


「走れ!」


 ロイドに背中を押し込まれ、その勢いで一気に坂を登っていく。

 だよな。真っ先に足手まといな俺は魔物から距離を取った方が良いに決まってる。

 舗装がある程度されているとはいえ、登りな上にフルアーマー、地面も少しデコボコしている。ロイドとマリエルがアクアベアーとかいう魔物と交戦に入る。


「先頭は俺に任せてくれ。前方の注意は俺が引き受ける」


 テッドは前を行き、逃げる時に見落としがちな前方の注意を買ってくれた。


「厄介な…、木々のなかに紛れていましたね」

「木々の、中?」


 山道を登りながら、クレア王女が軽く呟いた。


「アクアベアーは形は熊に近いですが、本質は水です。なので木々の中に水分の状態で身を潜めていたのでしょう。本来なら眠っている状態なのですが」


 どう考えても俺とロイドがアクアベアーを起こしたってことだな。

 すんません。

 というか、やっぱりクレア王女は息切れひとつしないんだな。俺はすぐに呼吸が乱れてしまう。


「ハルト、あと少しですから」


 前を行くテッドを追いかける。

 とにかく今は考える余裕がない。俺は膝が上がらなくなりつつあるが、気合いで持ち上げ、前を進む。


「よし、ひとまず上りきったぞ。って、カイト?」

「え?」


 いつの間にかテッドを追い越してしまっていた。そしてこの坂道を超えた先は緩やかな下り坂が待っている。

 つまり俺は今転げ落ちようとしているのだな。

 これなんて走馬灯?


「ぐへ、ぐはっ」

「ハルトーーー!?」


 痛い痛い痛い!

 いや、アーマーのおかげでそこまで痛くない!?

 というか目が回るー!?


「何をしている」

「ぐへっ」


 坂道の上から転がり落ちる俺を踏みつけるように誰かが止めてくれた。見るからに女騎士っぽい人だな。

 さんきゅーべりーまっち。

 というかキモチワルイ…。


「まったく一体何事だ?」

「オロロロロ…」

「ぎゃあああああ!!!」


 最悪な出会いをおみまいしてしまった。

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