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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Resonance : 響き合う者たち

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対《虎部隊》対策

 私が連絡すると、周一郎さんはすぐに来るように言った。

 あの虎蘭がまた宗ちゃんの前に現われたからだ。

 全くの想定外の事態がまた起きた。

 本当に次々ととんでもない重要事件が起きる!


 防衛省に着くと周一郎さんと闇絵さん、それに《裏鬼》の連城隊長まで来ていた。

 既に状況は監視していたココロちゃんから伝わっているはずだ。


 「冴姫、大変なことになったな」

 「はい、また虎蘭が接触して来るとは思いませんでした」

 「目的はなんだと思う?」

 「間違いなく宗ちゃんでしょう」

 「……」


 全員がそう思っているはずだ。

 パラオで宗ちゃんに接触したことも、高い確率で宗ちゃんが目的であった可能性がある。

 ただ偶然に和田商事の社員と接触した可能性もあったが、今回日本で再会したことで、確実なものとなった。

 

 「宗三が《特異点》と捉えられているか」


 最大の問題はそこだった。

 相手は宗ちゃんにピンポイントで接近しているが、その目的が分からない。


 「それはまだ分かりません。もしそうであれば、宗ちゃんはとっくに殺されていると思います」

 「ああ、《特異点》を殺せば日本の弱体化は免れないからな」

 「ええ。別に日本は中国と特別な友好関係にあるわけではありません。《特異点》と知りながら生かしておくメリットはありません」

 「うむ、そうすると別な目的か」

 「はい。まったく想像も出来ませんが」


 連城さんが私に聞いた。


 「冴姫さん、虎蘭をどう見ました?」

 「分かりません。何と言うか、底知れない人間ですね。立ち方や動作からある程度は見極められるつもりでしたが、何とも捉え処の無い奴でした。恐らくは相当な戦闘力がありますが、それが推し量れません。ブレッツなどはある程度分かるのですが」

 「そうですか、それは厄介ですね」


 《虎部隊》の厄介さはまさしくその点にある。

 正体がどうしても掴めないのだ。

 実物を目の前にしてからが、この始末なのだ。

 周一郎さんが連城隊長に聞いた。


 「パラオで中国人は見掛けたか?」

 「いいえ、まったく。今は外国人はもちろん、日本人の中でも許可を得た人間しか入国出来ませんからね。パラオ人も全て登録を済ませ、我々が把握してない人間は一人もいないはずです」

 「そうだな。でもどこかに潜んでいる可能性は?」

 「在り得ません。周辺の島も全て調査済みで今はレーダー施設も完備しています。と言いたいところですが、《虎部隊》に関してはどこまでも万全とは言い難いですね」

 「そうか」


 連城さんも《虎部隊》の不可視性に関しては絶対の自信は無かった。

 ところで、ブレッツと連城さんが会談したことは分かっていたが、あまりにもタイミングが良かったのを思い出した。

 《裏鬼》は那智と一緒に今はパラオで防衛任務に就いているはずだった。

 その《裏鬼》を指揮する連城さんが日本にいるのはどういうわけだろうか。

 だから周一郎さんに聞いた。


 「どうして連城隊長がここにいらっしゃるんですか?」

 「ああ、一度宗三に会わせておきたくてな。丁度呼び寄せた所にブレッツの申し出があったのだ」

 「え、宗ちゃんに?」

 「そうだ。先日《能力者》を全員宗三に正式に紹介した。だから《裏鬼》も宗三に知っておいて欲しいからだ」

 「また宗ちゃんの《特異点》の力ですか」


 宗ちゃんの《特異点》の能力が連城さんがこのタイミングで日本にいるようにさせたのか。

 宗ちゃんに関わる人間は変容することは分かっている。 


 「その通りだ。《裏鬼》は日本の戦力の要の一つだ。表の戦闘では常に第一線で活躍してもらっている。まあ、それも非正規戦闘が多いがな」

 「ブレッツとのことは宗ちゃんの能力でしょうね。でもそれに連城隊長のことを宗ちゃんが知ることで、《裏鬼》も飛躍的に発展するという狙いがあったわけですね」

 「そういうことだ。我々にもどういう展開になるのかは分からない。でもそれが必要だと百家の巫女も言っている」

 「また百家ですか……」


 度々百家の巫女が宗ちゃんのことに関して予言をしている。

 その頻度が高まっているように感じているのは私だけだろうか。


 「宗ちゃんに関しては全ての情報を私にも下さい」

 「分かっている。だが我々も百家の予言は10時間前に知ったばかりなのだ」

 「じゃあ10時間前に下さい」

 「分かった」


 闇絵さんが口を押えて笑っていた。

 周一郎さんに意見する人間は少ない。

 周一郎さんも機嫌を損ねるわけでもなく苦笑していた。


 「ココロからも聞いている。虎蘭は宗三に礼をしたいと言っていたな」


 ココロちゃんは常に宗ちゃんの傍にいて監視している。


 「そうです。宗ちゃんも受けるようで、むしろ嬉しそうでした」

 「そうか、ならばな。冴姫、お前は宗三の婚約者と虎蘭に紹介されたのだな?」

 「はい、そうです」

 「ならばお前も同席しろ」

 「もちろんです」

 「但し、絶対に能力は出すな」

 「宗ちゃんが危険なことにならなければ」

 「ダメだ。宗三が危険になっても何もするな」

 「それは出来ません!」


 周一郎さんが私に近付いて言った。


 「お前が《能力者》だと知られれば、宗三が《特異点》であると見抜かれる可能性がある」

 「!」

 「そうなれば宗三の情報は拡散され、世界中から狙われるようになる。お前も《特異点》がどのようなものかは分かっているはずだぞ」

 

 もちろんそうだ。

 だから私は言った。


 「もしも宗ちゃんのことが知られた場合、容赦しません」

 「冴姫!」


 周一郎さんが慌てた。

 私の言葉の真意を理解したのだ。


 「私は世界を破壊します。宗ちゃんを喪うくらいなら、世界を亡ぼして宗ちゃんを守る。《虎部隊》も《ボルーチ・バロータ》も《ヴァーミリオン》も関係無い。他の連中だってそうじゃない人間だって全て殺します」

 「お前……」


 周一郎さんが黙り込んだ。

 私の決意が伝わったのだ。

 私が躊躇なくそうすることを。


 「私には宗ちゃんが《特異点》かどうかなんてどうでもいい。世界と引き換えにしたって宗ちゃんが大事。これは絶対ですよ」

 「そうだったな。そういうお前だからこそ《トリポッド》もお前に宗三を任せたのだった。お前が絶対に宗三を守るからだ」

 「忘れないで下さいよ、周一郎さん。あなたは私なんかよりもずっと頭がいいのだから」


 闇絵さんが私の後ろに来て、肩を抱いた。


 「私も協力するわよ。他のあの子たちもみんな同じ。冴姫ちゃんと私たちが本気になれば、世界なんてあっという間に終わるわ」

 「お前たち、勘弁してくれ」


 闇絵さんが笑いながら言った。


 「群長、これは一つの戦略ですよ。私の家はずっと日本の国体を守護するために続いて来ました。だからそのためには何でもやります。群長、大好きな誰かのためにその戦いが出来るなら、他のどんな理由よりもいいと思いませんか?」

 「闇絵、お前まで何を……」

 「群長だってそうでしょう? 神楽坂家は《特異点》の保護と教育のために今まで尽力して来た。だから八咫烏の現成である《トリポッド》も神楽坂家、そして神楽坂宗三を全面的に庇護し全力で支援している。宗ちゃん以外に何も必要ないのです。宗ちゃんのために世界が滅ぼうとも、それは必然なのです」

 「闇絵、それはお前の言う通りだが……」


 連城さんが言った。


 「郡長、私も冴姫さんに同意見です。宗三さんのことは何が何でも守らなければなりません。そして同時にある程度彼の自由に行動させる必要があります。《仁王会》が宗三さんの拉致に失敗したのは、何も《仁王会》の実力不足ではありません」

 「お前は宗三の力だというのか」

 「その通りです。宗三さんは何らかの運命関与をしている。もちろん無意識にですがね。そして《聖女》も《虎蘭》のことも何ら拒絶してはいない。このことには何かがあると思われます。日本国家にとって有益な流れがあるのだと」

 「そう考えたいところだがな。何しろ宗三は全てに関して何の理解も無い。あいつの無邪気さにどこまで付き合えば良いのか」

 「自分が全て引き受けます」

 「なんだと?」

 「周一郎さん、私もそうだよ」

 「群長、私もですよ!」

 「……」


 周一郎さんは、とにかく連城さんを宗ちゃんに合わせてからだと言った。

 宗ちゃんが連城さんを良く思わなければ、この話は終わりだと。

 でも私は、宗ちゃんは連城さんをきっと気に入ると思っていた。

 連城さんは純粋だ。

 鬼神のように恐ろしい力で戦うが、それは常に日本のためだ。

 それに情が深い。

 戦場であっても子供たちが危険な状況になれば、それを助けるのが連城さんたちであることを知っている。

 任務外のことであったのだが、連城さんたちに躊躇は無かった。

 宗ちゃんと同じだ。

 だからきっと宗ちゃんは気に入る。




 土曜日の晩、連城さんがマンションを訪ねて来た。

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