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押し掛けギャルは殲滅者  作者: 青夜
Boy Meets Gal : 双方ともとんでもないというお話

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押し掛けギャルはカワイイ子

 あれは2か月前の4月初旬。

 四谷のJ大学を卒業した俺は「和田商事」という中堅の商社に何とか入社でき、研修が始まってからの最初の休日を味わっていた。

 研修はそれほど厳しいことも無いのだが、慣れない社会人としては精神的にちょっと疲れていた。

 神奈川県の横浜の生まれだが、大学から東京に出てきており、四谷のマンションに今もそのまま住んでいる。

 俺の通うJ大学が近かったせいだが、新宿にある和田商事にも便は良かったのだ。

 学生時代から住んでいる青い屋根の13階建てのマンションが気に入っていたせいもある。

 古いマンションだったが、俺には趣があるように思っている。

 遅く起きて朝食を食べようかという頃にチャイムが鳴り、俺はオートロックの映像を見た。

 誰も映ってない。

 じゃあ、直接ドアのチャイムか。

 ならばこのマンションの住人か管理人さんだ。

 ご近所さんも管理人さんも、ちゃんと挨拶する仲だ。

 俺はドアを開けた。




 ギャルが立ってた。




 「神楽坂宗三かぐらざか・そうざ、だよね?」

 「え、君は?」


 このマンションで見たことが無い。

 なんだ、この子?

 でも俺の名前を知ってるぞ?

 今初めての人だが、恐ろしいほどに美しい。

 ギャルだが。

 どこかで会っただろうか?

 いや、覚えは無いが、誰か知り合いの関係者?

 友人の妹か知らない親戚?

 そういうこともないだろうと思いながら、考えあぐねていた。

 そんな俺の心情をお構いなしにギャルが言った。


 「あたし? 冴姫! これからよろしくね!」

 「サキさん?」


 別にそれを聞きたかったわけではないのだが、冴姫が名前の漢字を教えてくれる。

 苗字は名乗らなかった。

 なんなんだ!

 ようやく俺は物凄く怪しい人物の前で、もうドアを開けてしまっていることに気付いた。

 最近じゃ闇バイトなどというもので、自宅に押し入って金品を奪っていく強盗も多くなった。

 うちには大したものは何もないが。

 俺は危険な状態かもしれないと思ったら、途端に恐怖が湧いてくる。

 迂闊にドアを開けたのは不味かった。

 俺のミスだ。

 まあ、でも相手は細身のギャル一人だ。

 武器でも持っていない限りは大丈夫だろう。

 何よりもカワイイし。

 まだ、そんなことを考える余裕もあった。


 「あの、何の御用ですか?」

 「あー、あたしあんたの婚約者ね。今日からここに住むから、よろ」

 「はい?」

 「早く入れて」

 「おい!」


 俺は思わず大きな声を出した。

 絶対ヤバい奴だ。

 部屋に入れれば、あることないことを言って俺から金を脅し取るつもりかもしれない。

 すぐにコワイ人たちが来るに違いない。

 俺は慌ててドアを閉め、鍵を掛けた。

 ついでにドアチェーンも掛ける。

 自分ののんびりさに流石に反省した。

 危なかったぁ!

 ああそういえば、これまでドアチェーンなんて使ったこともないや。



 ガチャリ



 鍵が開いた!

 なんでだよ!



 ガシャン



 ドアチェーンで扉が止まったので、冴姫が叫んだ。


 「あー!」

 「待て待て待て待てぇ!」

 「もう!」



 ガション!



 銀色の光が上から走ったと思うと、ドアチェーンが見事に切れた。

 一瞬だった。

 力尽きたドアチェーンが垂れ下がって揺れた。


 「!」


 冴姫がドアを開けて入って来た。

 右手に大きなナイフを握っている。

 まずい、武器を持っていたか!

 しかも、普通のナイフじゃない。

 刃渡りが50センチもあり、分厚く、真直ぐな形状ではない凶悪に幾つものカーブを描いた見たことも無いものだ。

 本物であることは今の一瞬で分かっている。

 そのナイフを持ちながら冴姫が頬を膨らませながら言った。


 「何で閉めるのよ!」

 「な、何で入って来るんだよ!」

 「え? ああ、鍵持ってるもん」

 「だから何でぇ!」

 「周一郎さんからもらった」


 「なんだってぇー!」


 「周一郎」は俺の兄貴だ。

 自衛隊のナントカ戦群という特殊な部隊にいると聞いている。

 年が離れているが、兄弟仲は良く子供の頃から自分のことを可愛がってくれている。

 今は同じ東京にいるので、確かに俺のマンションの鍵も預けてはいた。

 兄貴は市ヶ谷の防衛省に勤めているので、俺のいる四谷とは目と鼻の先だ。

 だから学生時代から時々マンションにも来てくれていた。

 鍵を預けたのは兄貴に言われたからで、でも兄貴は一度もそれを使ったことは無い。

 単に俺に万一のことがあったら入れるようにという用心のためと説明されていた。

 よくは分からなかったが、兄貴が言うことには全幅の信頼を寄せている。

 それをどうしてこの女が持ってる!


 冴姫は遠慮せずに玄関でゴツいレッドウィングのブーツを脱いで上がって来た。

 俺が呆然としているので、勝手に探してスリッパも出して履く。

 靴を脱いで初めて気付いたが、結構背は高い。

 俺が178センチだが、冴姫も近い長身だ。

 多分、175センチくらいか。

 冴姫は部屋を見渡して言った。


 「へぇー、結構綺麗にしてんじゃん」

 「お、お前、なんなんだよ!」

 「あたしさー、きったない部屋って無理だからさぁ。良かったぁー」

 「おい!」

 

 全然人の話を聞いてねぇ!

 でも、兄貴が関わっているのならば事情は聴いておかないと。

 それに、なんだかんだ言って、あらためて見ると冴姫はやっぱり綺麗な女の子だった。

 化粧は濃いが、元々が美しい顔立ちなのは分かる。

 痩せているが胸がやけにでかい(ここ重要、俺は断然巨乳派)。

 赤い薄手の革ジャンに黒の革のミニスカートから長い生足が伸びている。

 黒の地に凶暴なキングコブラのプリントのTシャツ(どこで売ってんの?)。

 髪は金髪の長めのポニーテール。

 胸から下を見ると、引き絞られた腰に小さなお尻(俺の好み)。

 視線を顔に戻す。

 広い額に綺麗に手入れした濃い眉と、そのすぐ下の強い光を湛えた切れ上がった大きな目。

 鼻は外国人のように高い。

 唇は薄めで赤がきつめのルージュを塗っており、顎は細い。

 少しとがり気味の両耳に逆さ十字のピアス。

 大変に満足です。

 取り敢えず、ダイニングのソファに座らせた。

 俺が襲われる心配は今のところ無さそうだ。


 「喉かわいたー」

 「……」


 俺もだ。

 俺は何も聞かずにコーヒーを準備した。

 怪しさ満載の女だが、一切俺を脅したり睨んだりもしていない。

 柔和な笑みを浮かべて部屋をあれこれ眺めている。

 

 「あ、豆から挽くんだぁ!」

 「おう」


 冴姫がキッチンの俺を見て叫んだ。

 コーヒーが好きなので、ちょっと拘っている。

 丁寧にドリップして自分と冴姫の分をカップに注いだ。


 「いい香り!」

 「おう」





 これからどうなるのー!

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