辰年
令和6年が始まった。
雲ひとつない青空が広がり、ぽかぽかと暖かな元日だった。
わたしは家族と一緒に、父方の祖父母の家にいた。
そこには伯父がいた。今はずっと遠いところにいて、顔を見るのも一年振りだ。
伯父は父とはずいぶん年が離れていた。二人の子どもがいたが、いずれも社会人になっていて、もう何年も会っていない。今日もここにはいない。尤も、いとことは言え、年がずいぶん離れているので、親近感もなかった。
要するに、祖父母の家で、わたしはすることがなかった。大人ばかりの中、ひとり書棚から本を取り出しては、パラパラとページを繰ったり、祖母に呼ばれてお菓子をつまんだりした。
伯父が「ほら、高校生」と、ポチ袋をくれた。三つある。
いとこ二人からの分も預かってきたとのこと。礼を述べて、ありがたく頂戴する。
「学校の部活はなにやってるんだ?」
馴れ馴れしげに聞かれた。
「株式投資」
「株式投資? そんな部活あるんだ」
「仮想資金で運用している」
伯父は興味を持ったようだった。
「今年の相場はどうなると思う?」
「どうなるとは?」
「日経平均は上がりそうか?」
「日経平均株価は上がると想定している」
「でも、去年はずいぶん上がったんだろ? バブル当時の株価に近づいてきたって言うじゃない。もうそろそろ危ないんじゃないの?」
日経平均株価が一年で3割近く膨らんだことから、バブル再来を疑う声がある。
バブル時の1989年に日経平均株価が最高値をつけたときのPERは、60倍ほどだったという。
個別株でも60倍ものPERを許容されるのは、よほどの高成長企業であり、ふつう、そこまでのPERをつけた銘柄は、いずれ値を消してゆくことが多い。
日経平均株価のPER60倍に応えるには、毎年5割の伸びをEPSに求めることになる。
どんな好景気でも、全体が年率5割増益を続けることは至難、というより不可能だろう。
今はどうか?
日経平均株価のPERは15倍程度でしかない。
株価=EPS×PER
この単純な方程式に当てはめると、株価が同じで、PERが15倍と60倍なら、今のEPSは1989年当時の4倍になる。しかも、インフレに伴う販売価格の値上げや、円安基調の為替は、いずれも全体的なEPSの拡大に寄与し得る。
「要するに、株価は似たような額としても、内実はバブル当時と今とでは全く異なるということ」
バブル当時は実力に対して過大な人気があった。今は実力に見合った程度の人気に過ぎず、その実力はさらにパワーアップする見込みが高い。
著名投資家、ウォーレン・バフェットが重視するという「バフェット指数」でみるとどうか。
「バフェット指数」は、株式市場の時価総額を名目国内総生産(GDP)で割ったもの。100%を超えていると、過熱感があると言われる。
日本の時価総額を名目国内総生産で割ると、バブル期に匹敵するほどの過熱感だそうだ。
しかし、日本企業の時価総額と国内総生産を比較することに、何の意味があるのだろうと思う。
上場企業の多くは海外で稼いでいる。バブル期と比べても、海外展開を広げた企業は多いはず。国内総生産と比較するのは片手落ちではないか。
「以上が、日経平均株価が上がると考える理由」
伯父は呆れたような顔をした。
「なにを言ってるのかよくわからんが、株価がどうなるのかなんて、誰にもわからないんじゃないの?」
それはそう。
未来のことは誰にもわからない。
だから、今年の日経平均株価が下がることはない。などと断定するつもりはない。想定外は常に起こり得る。しかし、先々何が起こるかわからないのは、株式投資に限った話ではない。
何が起こるかわからないからとて、何もしないわけにはゆかぬ。自分なりに決断して、何かをする。その結果、うまくゆけばよし、うまくゆかねば再考すればよし。ただ、それだけのこと。株式投資に限った話ではない。日々の買い物でも同じこと。何を買うのか、何は買わないのか、常に決断して生活をしている。
「株価の行方は誰にもわからない。だから、自分で考える。考えた結果が日経平均株価の上昇であるなら、あとは実行に移すまで」
わたしの言葉に、伯父は「なるほど」とだけ言った。
先のことは誰にもわからない。
想定外がいつでも起こる。
などと言っていると、元日の能登半島で大地震が起こった。大きな津波が発生し、街なかで大火災も起こった。多数の死者も出た。
「新年明けたばっかりなのに」
と誰もが言った。
翌二日には、羽田空港で日航機と海上保安庁の機体が接触事故を起こして共に炎上した。幸い日航機に死者はなかったが、海保機からは犠牲者が出た。
株式市場は四日に大発会。
日経平均株価(225種)は175円マイナスだった。
が、東証株価指数(TOPIX)はプラスだった。
翌五日は日経平均株価、東証株価指数ともにプラス。
時価総額は二日続きで上昇した。
新年の二日間で今年の相場を占えるものではないが、楽観的な空気を反映したものと思われる。
わたしは、会社四季報を1ページ1ページ確認しながら、有望銘柄をピックアップしていった。
今年は、新たな試みを始める。
部活では投資金額に上限がある。
投資資金に限りがあるのは致し方ない。誰もが無尽蔵の資金を持つわけではないからだ。
しかし、部活の上限では、あまりに買える銘柄が限られる。
それで、部活の投資金額分とは別に、わたし独自の「仮想取引銘柄」を別に選出して、別途、架空取引をすることにした。
ただ、野放図に対象を広げすぎると、収集がつかなくなる恐れがあるため、部活分の5銘柄とは別に5銘柄を選出する。部活運用分を1軍、仮想運用分を2軍、と称せば、わかりやすいかもしれない。2軍は2軍で運用し、必要に応じて、1軍2軍を入れ替える。
・1712 ダイセキ環境ソリューション
・2127 日本M&Aセンターホールディングス
・2353 日本駐車場開発
・2372 アイロムグループ
・2681 ゲオホールディングス
・2937 サンクゼール
・3661 エムアップホールディングス
・3836 アバントグループ
・3844 コムチュア
・3925 ダブルスタンダード
・4040 南海化学
・4053 Sun Asterisk
・4216 旭有機材
・4439 東名
・4498 サイバートラスト
・4771 エフアンドエム
・4972 綜研化学
・5032 ANYCOLOR
・5967 TONE
・6005 三浦工業
・6076 アメイズ
・6149 小田原エンジニアリング
・6200 インソース
・6239 ナガオカ
・6432 竹内製作所
・6436 アマノ
・6866 HIOKI
・7086 きずなホールディングス
・7096 ステムセル研究所
・7105 三菱ロジネクスト
・7157 ライフネット生命保険
・7201 日産自動車
・7373 アイドマ・ホールディングス
・7453 良品計画
・7614 オーエムツーネットワーク
・7715 長野計器
・7826 フルヤ金属
・8117 中央自動車工業
・9039 サカイ引越センター
・9432 日本電信電話
・9467 アルファポリス
以上が、ピックアップした銘柄。
ここから、仮想資金で対象を絞り込む。
2024年1月5日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 1,400株 買値300円 株価333円 時価466,200円 含み益46,200円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,017円 時価403,000円 含み益97,300円
・6623 愛知電機 100株 買値3,615円 株価3,805円 時価380,500円 含み益19,000円
・7330 レオス・キャピタルワークス 300株 買値1,358円 株価1,175円 時価352,500円 含み益▲54,900円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,258円 時価503,200円 含み益76,400円
現金 95,517円
時価総額 2,201,217円 含み益201,217円 含み益率10%