陰謀論
「結局、NISAって、政府の陰謀だったんだろ」
「陰謀?」
「だいたい国が推奨するのは、絶対にウラがあるんだよ」
「ウラ、ってなんですか?」
「んなことわかるわけねえじゃん」
「わからないのに、なぜウラがあるって言えるんですか?」
「ああ? 決まってんじゃん。国民にカネ使わせて、うまい汁吸う奴がいるんだよ!」
かわいい人が「はあっ」と首を振った。
「にゃんさあ。それ、どんなオチにするつもりなのよお」
「オチ? うーん、そうなあ、ええっと、うーん、・・・わかんね」
「あんた、ばっかじゃね? んな話されて、ほーちゃん答えようないじゃん」
「でもさあ、今月アタマの暴落で、損した奴いっぱいいるんだろ。NISA儲かるとか言われてたのに暴落したんだから、それ見たことかって話、ネットでも出てくるじゃん。こんな話する奴、出てくるんじゃね?」
文化祭が近づいている。
株式投資部は去年に続き、部として参加することにした。
去年はそう多くの人たちが来場したわけではなかったけれど、中には熱心に質問をする人もいた。
想定問答の練習をしたほうがいいというかわいい人の提案で、一年生交えて、部であれこれ議論する一環でのいちシーンがこれ。
かわいい人のつくため息とはウラハラに、わたしは男子先輩の言うことにも一理あると思った。
「投資は長期目線で」
とは、NISAがはじまったときから常に言われていたこと。新NISAになって、まだ1年にもならないのに、騙されたのなんだの大騒ぎするのは、「あなた、ちゃんと話を聞いていました?」としか思わない。
メディアの姿勢も軽薄さを感じる。
暴落で損をした人たちの声を過剰に取り上げ、危機感を必要以上に煽っている印象があった。もっと言えば、暴落したときの発信内容を事前に決めていて、想定どおりのコメントを発した人の記事を掲載したのではないかとさえ勘繰りたくなる。
笑ってしまうのは、大暴落後の急激な戻りに対して、あれほど大騒ぎしたにもかかわらず、投資は短期の動きに惑わされてはならないなどと、わかったようなことをしれっと発信していること。かと思えば、本当の暴落はこれから起こるなどの意見をも掲載している。
未来のことは誰にもわからないし、人の数だけ意見があるとは言え、その羅列に意味を見出だせない。下がれば悲観論、上がれば楽観論でも、投資経験の乏しい人が大多数なら、ときどきの読者感情を揺さぶる発信こそがアクセス数を増やすのであろう。情報発信側もまたニーズを追っていることを、受信側はよくよく理解する必要があると感じる。
とは言え、暴落時のリアルな恐怖は肌身に感じた。
現物しか持たぬわたしの場合、損失は最悪でも投資額に限られる。
信用取引をする者の中には、保有資産を上回る損失を被った者もいるだろう。身ぐるみ剥がされる恐怖は想像を絶する。どれぼどのリスクを背負えるのか、よくよく考える必要があるということであろう。
勝負するにせよ、再起できないリスクを不必要に抱えることはない。
2024年8月23日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 2,000株 買値319.8円 株価365.2円 時価730,400円 含み益90,800円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,078.5円 時価415,700円 含み益109,700円
・3445 RS Technologies 200株 買値3,200円 株価3,520円 時価704,000円 含み益64,000円
・5888 DAIWA CYCLE 200株 買値1,800円 株価2,925円 時価585,000円 含み益225,000円
・7134 アップガレージグループ 800株 買値835円 株価1,024円 時価819,200円 含み益151,200円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,525円 時価610,000円 含み益183,200円
現金 28,699円
時価総額 3,892,999円 含み益892,999円 含み益率30%
8月5日にはほとんど吹き飛んだ含み益が、ずいぶん戻ってきた。
振り返ってみると、5日の終値は。
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 341円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 1894.5円
・3445 RS Technologies 2,678円
・5888 DAIWA CYCLE 2,420円
・7134 アップガレージグループ 820円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 1,245.5円
つくづく企業業績に関係なく株価だけ動いたことがわかる。
3445 RS Technologiesなど8月9日の決算発表によれば、ネットキャッシュだけでひと株当たり2,520円ある。見込EPSが300円近くある会社の株が、着実に売上高を増やし純資産を積み上げてきた会社の株が、2,678円と保有現金程度にしか評価されていないのだから、実質的に、ほぼタダで購入できるチャンスだったことになる。
8306 三菱UFJフィナンシャルグループは、日銀が利上げすると宣言し、将来の増益が約束されたにもかかわらず、株価だけが暴落した。利益の出ているところから資金を捻出しようとする者たちが多かったのか。都銀株を買いたくても機会を逃してしまった人には絶好の買い場であった。
この経験はしかし、投資の基本はどこにあるかを脳に刻み込んだ。
「あの暴落を経験したから」
わたしは何ものかになることができた。
と、後年言う日が訪れることになるかもしれない。
そんな想像をする自分がおかしくて、ひとり笑ってしまった。




