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新しい投資先の検討 弐

 「はあー、都銀すごいわ」

 くりんくりんの髪を揺らしながら、かわいい先輩がパソコンを前にため息をついた。

 増収増益増配。

「ひろこさんわあ、ギンコー株ぅ、なんか持ってるんですかあ?」とエルムが無邪気な質問。

「持ってる持ってる」

「どこですかあ?」

「三井住友」

「あー、なんかミドリ色のとこですよねえ」

「そーそー」

「赤が、えーと、なんとかゆーえふじぇえ、青が、えーと、なんでしたっけ?」

「色々あるけど、都銀なら、みずほ、だね」

「あー」


 インフレと金利の先高観が銀行株の追い風になっている。

 それもあって、このところ銀行株は上昇傾向にあったが、都銀の2024年3月期決算はどこもすごかった。2025年3月期もどこも増益を見込む。

 特に先輩の保有銘柄、三井住友フィナンシャルグループは爆騰と言っていい上げ方であった。


「先輩の三井住友はいくらぐらい儲かったんですか?」

 陰気な銀縁眼鏡が言うと

「あのね、少年」とかわいい人。

「誰がいくら儲かったなんて話はするもんじゃないの」

 後輩男子は思わず息を止めた。

「どこで誰が聞いてるかわからないし、どこに勝手な話が流れてゆくのかわからないでしょ。回り回ってどんな話がどこで語られるか。あいつ、カネ持ってるぞー、なあんてことになったらどーなると思う?」

「えーと、」

「少年、このわたしを魔の手に落としたいのかな?」

 後輩男子が固まった。


 ふっと笑った先輩男子が「おまえが言うの?」とツッコミを入れた。

 かわいい人は、この春、卒業した人に同じことを聞いて窘められていた。

「ちょっと、にゃん! 要らんこと言わないの」

 先輩男子は後輩を見た。

「まあでも、こいつが言ってることはその通りだ」

 誰がいくら儲けたって、おまえにはなんの関係もない。肝心なことは、おまえが自分の頭で判断できるようになることだ。

 かわいい先輩が片腕で頬杖しながら笑った。

「さっすが部長、いいこと言うじゃん」

「はあ? なに言ってんだ、おまえ」

「なに照れてんの? やっぱ、器が人を作るってゆーけど、それ、ホントだよね」

「はあ?」

「部長に推してあげてよかったでしょ♡」


 3年生の二人は仲がいい、と思う。

 この二人を見ていると、部に同級生のいない寂しさを感じないこともない。

 それはともかく、先程の会話を聞いて、自分の頭で判断できることの重要性を改めて反芻した。

 著名な投資家、例えばウォーレン・バフェットの投資対象を忠実にコピーすることで、確かな運用成績を確保する金融商品があるそうだ。それはそれでひとつの考え方だし、かような商品に需要があるなら、需要を満たす供給はあって然るべきであるが、あなた任せの運用には自分の意志を反映できない側面がある。また、仮に好成績な運用実績を得られたところで、その要因がどこにあるのかわからない。理解の範囲を超えたところに自己を委ねる怖さを承知しておく必要がある。

 市場平均を取るのなら、インデックスファンドを買えば済む。高値掴みの怖さがあるというなら、ドルコスト平均法で、毎月なり四半期ごとなりに一定額を購入すれば済む。あるいは買値より下回った場合に追加投資してもよい。100万円で買ったものが90万円になれば追加で買う、80万円になれば更に追加で買う。個別株ならば最悪、倒産の恐れがあるため、株価が下がり続けるような株を無条件に買うわけにはゆかないが、インデックスファンドならそんな心配はまず不要だろう。下値で買う数量を増やせば、株価が戻ったときの見返りも大きい。100万円で1株、90万円で2株、80万円で3株買えば、100万円に戻ったときには600万円になる。買値合計が520万円だから、80万円の利が出る。


「ほーちゃん、次の投資先はもう決まったの?」

 かわいい人が唐突に問いかける。

「まだ」

「そう、もう3月期決算もほとんど出たから、絞り込みはできてきたんでしょう」

「そこまでに至っていない」

「ふーん、狙い目は?」

「狙い目、とは?」

「だから、成長株にするとか、割安株にするとかだよ。ほーちゃん、去年は色々な種類に分けてたでしょ?」


 そういう区分で言えば、わたしの持ち株はこうだ。

 ・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 → 成長株

 ・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス → 業績回復株

 ・5888 DAIWA CYCLE → 成長株

 ・6623 愛知電機 → 割安株

 ・7330 レオスキャピタルワークス → 成長株

 ・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ → 安定株

 このうち、レオス・キャピタルワークスはすでに売却済。


「基本は成長株と考えている」

「理由は?」

「コロナウィルスによる経済制限が解除され、飲食、流通、観光、交通などが正常に戻った。故に業績回復株はすでに回復してしまったものが多いと思われる。全体の株価が回復しているので、安定株も相応に株価が回復していると思われる。となれば、狙うは成長株」


 ・2585 ライフドリンクカンパニー

 大阪本社の飲料製造会社。お茶、水、炭酸水などを製造する。プライベートブランドの受託製造がメインと思われる。インフレ下、ナショナルブランドの高価格化に伴う低価格商品需要増を考えれば、成長余地は大きいと思われる。似たような製造事業者は多いだろうが、それらを吸収することで拡大することも考えられる。


 ・6243 テクノスマート

 大阪本社のフィルム塗工乾燥機などのメーカ

 長い目で見ると、多少凸凹あるものの、増収増益傾向にある。

 全固体電池に関係するとのこと、これが軌道に乗れば、より大きな成長期待がある。


 ・6564 ミダックホールディングス

 浜松本社の産廃処理事業者

 期待先行だった高値から、株価は4分の1の水準にあるが、増収増益が続くことから、そろそろ反転してもいいかと考えられる。


 ・7134 アップガレージグループ

 横浜本社のカー用品販売店

 リユース品に特徴がある。インフレ下、低価格品に対するニーズは拡大するものと想定され、増収増益傾向が続くものと思われる。急成長でないところも、店舗販売の上では望ましい。店舗運営の人材教育が店舗増に間に合わないようだと、粗製乱造につながりかねないからだ。


 先週ピックアップした銘柄

 ・4238 ミライアル

 ・5979 カネソウ

 ・6432 竹内製作所

 ・7466 SPK


 これらともども、中身をみてゆくことになる。


 2024年5月17日現在 わたしのポートフォリオ

 ・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 1,400株 買値300円 株価363.3円 時価508,620円 含み益88,620円

 ・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価1951.5円 時価390,300円 含み益84,300円

 ・5888 DAIWA CYCLE 200株 買値1,800円 株価1,920円 時価384,000円 含み益24,000円

 ・6623 愛知電機 100株 買値3,615円 株価4,005円 時価400,500円 含み益39,000円

 ・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,554円 時価621,400円 含み益194,600円

 現金 1,146,903円

 時価総額 3,451,723円 含み益451,723円 含み益率15%

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