うぐいす
5月初日は、らしい爽やかな幕開けだった。
空は澄みわたり、緑は萌え上がり、薫る風が涼やかに渡る。鳥のさえずりが響く。
わたしは、かわいい先輩と、のっぽの後輩と一緒に、連休谷間の放課後、緑溢れる団地の遊歩道を散策していた。木漏れ陽がこぼれる小径は、ただただ心地よかった。
ここは新入生・エルムが暮らす団地の中。高校のそばにある。
そばにあるが、わたしや先輩が使う駅から逆の方向だから、今まで足を運ぶことはなかった。
けれど、ここで花見をしたこと、エルムがここに住んでることから、かわいい人が興味をもったらしい。
「この団地、どんだけ広いの?」
「なんか森の中にい、作ったってえ、なんか聞きましたあ」
「えー、こっちにも野球場あるんだ。すごくない?」
のっぽの後輩はあまり興味なさそうな顔をしていた。
「子どものとき、遊ぶとこに困らなくって?」
「そうなんですけどお、ここお、車道となんか分離された造りになってるんでえ、なんかここで育った子どもはあ、普通のところに行ったらあ、なんか道に飛び出すから危ないとかってえ、なんか先生とかからあ、なんかよく言われましたあ」
「あっ、そうなんだ。じゃあ団地の中だけなら、走りまわっててもクルマにひかれることないってこと? それ、天国じゃん」
エルムに言わせると、子どもには天国でも、この団地は終わってるらしい。
「なんで?」
「年寄りばっかなんですよお。ほら、あんな人ばっかりい」
彼女が指差す方向には、おばあさんが歩いていた。
「小学校の頃はあ、まだマシだったんですけどお、年々人が減ってえ、なんか年寄りばっか増えてるうって感じでえ。昔はなんか小学校が3つ、中学校が2つあったんですけどお、今は1つずつになっちゃってえ、少子高齢化の先進地域とかって言われてるみたいでえ」
「ふーん、なんだかもったいないなあ。こんな緑いっぱいなのに」
ゴールデンウィークの最中、為替は目まぐるしかった。
日銀の植田総裁が利上げに慎重との見方が強まり、円は一気に160円を下回った。
と思いきや、一転急騰。
次いで、インフレが終わらないことから、アメリカは当分は利下げをしないと表明されたことを受けて、再度円安に触れたものの、またも急騰。
為替介入との続くアメリカとの金利差が改めて意識された格好とのこと。一時160円突破したところで、大きく値を戻した。日本の為替介入ではないかと言われている。
ともあれ、日銀が利上げしない限り、円安傾向に変化はないと思われる。
「円安は株にはプラスなんですよね?」
陰気な銀縁眼鏡にぼそっと聞かれたことを思い出した。
「なぜ?」
「って、どこかに書いてたの見たんですけど」
「為替の影響は、その会社の事業構造によって大きく変わる」
「そうなんですか」
「輸出する企業は円安になれば安くなった分、多くの円を得ることができる。例えば製品を1ドル売ったとき、以前なら100円だったのが今は150円入るのなら、その会社は労せず50円分売上を増やすことができる。一方で、輸入する企業は製品を1ドルで仕入れたとき、以前なら100円支払えばよかったのが今は150円かかるから、その会社は原価が50円分増えることになる」
「ちょっと待ってください。てことは、円安は輸出企業にとってはプラスだけど、輸入企業にとってはマイナスってことですか」
「基本はそう考えられていると聞く。しかし、実際にはそう単純な話ではない。輸出企業が製品を作るための材料を海外から輸入しているなら、原価は確実に上がる。製品に競争力があるなら、コストアップ分を売価に反映すれば利益増につながるが、そうでなければ為替の影響は相殺されると考えられる。輸入企業の場合も、為替によるコストアップ分を売価に反映できる製品なら必ずしもマイナスではない。嗜好品なら値段が上がれば買い控えが起こる可能性が高いが、必需品なら消費者は高かろうが買わざるを得ない。結局、その会社が提供する商品の需要次第と言える。為替は決して無視できるものではないが、一時的な影響に右往左往するものでもない。需要があれば為替に関わらず売れる。投資家視点からは、為替の影響を考えることも重要ながら、為替に関わらず需要ある商品を提供し続ける会社を見出すことがより重要と考える」
神妙な表情をする新入生男子の肩を、メガネをかけた先輩男子が「むずかしいわな」とどんと叩いた。
「全体の話と個別の話は違うっつーことだ。あんまりこうだからああなるとかって、枠に入れて考えないこっちゃ」
ホーッ
息を吸う鳥の声が間近で聞こえた。
ホケキョウ
小径を行く女子三人が歩みを止めた。傍らの茂みの中から声がした。しばらくするとまた声が響いた。
ホーッ ホケキョウ
「こんなところにいるんだね、うぐいすって」とかわいい人が笑った。
団地の中の別のところからも声がした。
ホーホケキョ
今度は樹上からだった。茂みの中からのものよりいささか性急な鳴き方だった。
「うぐいすにもお、鳴き方のお、なんかうまいのとへたなのがいてえ、やっぱうまいのは響きが違うんですう」
ホーッ
茂みからまた声がした。
ホケキョウ
鳥の鳴き声にも、巧拙があるとは知らなかった。
2024年5月2日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 1,400株 買値300円 株価367円 時価513,660円 含み益93,660円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価2,242円 時価448,400円 含み益142,400円
・5888 DAIWA CYCLE 200株 買値1,800円 株価2,055円 時価411,000円 含み益51,000円
・6623 愛知電機 100株 買値3,615円 株価4,050円 時価405,000円 含み益43,500円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,554円 時価621,600円 含み益194,800円
現金 1,146,903円
時価総額 3,546,563円 含み益546,563円 含み益率18%
仮想運用分
・6758 ソニーグループ 買値14,540円 時価13,060円
さあて、120万円弱もの現金をどこに投じようか。
連休が明ければ、3月期決算が続々と出てこよう。為替はいずれ円安傾向を脱する。目先の動きに惑わされてはならない。




