受験前の先輩と顧問の自民党論
「あら、志帆ちゃん」
図書室で声をかけられた。
見ると、3年生の先輩だった。受験する方の。
2月を前に、いよいよ受験が始まる。志望校はもう絞り込んだという。
驚いたことに、国立も受けるという。
「共通テストが思いのほかよくってさあ」
ダメもとで受けることにしたのだとか。武運を祈る。
「それはいいんだけど、株価すごいよね」
なんだか、うちらの引退狙ったかのように上がりだしたでしょう。
先輩が例に出したのが、良品計画。
「ずうーっと持ってたんだけど、引退までに回復しないと思って、売ったのよ。で、それはそれで正解だったんだけど、思ったとおり、今になって上がってきた。引退がなかったら、絶対持ち続けてたから、これからもっと増えるばず」
やっぱ、先生の言うこと、まちがってないわ。
「株は目先の上げ下げに惑わされちゃダメ。長い目で見て、成長を続ける企業を持ち続けることだわ」
先輩はもうひとつ付け加えた。
「実はね、引退してから手元に残った軍資金で、株を買い戻したの」
そう言うと、頼みもしないのに、保有銘柄を見せてくれた。
・2588 プレミアムウォーターホールディングス 買戻し価格 2,898円 現在値 3,340円 含み益 44,200円
・6777 santecHD 買戻し価格 2,663円 現在値 3,470円 含み益 80,700円
「プレミアムウォーターホールディングスは、やっと上がりはじめたんだよね。見立てどおりになってきたかなってとこ」
ただねー、引退したとき、強制的に解約されたでしょう。そこで利益出た分、税金取られてるんだよね。そのまま持ってたら、含み益だってもっとあったはずだから。
「そーゆーことでも、株はずうーっと持ってるに限るってことだよ。あたし、このふたつはだから少々のことでは売らない」
先輩と別れてから、彼女の保有銘柄を調べてみた。
プレミアムウォーターホールディングス
宅配水ナンバーワンの会社。すごい勢いで伸びている。特徴は低い原価率と、高い販管費率。
営業利益率が10%に満たないものの、その理由は多額の販管費を使っているためで、ひとえに顧客獲得のため。
典型的なストック型ビジネスなので、顧客さえ獲得できれば、あとは継続的に利用してもらえる。利益はあとからついてくるというわけだ。原価率が低いので、獲得した顧客からの利益率はきわめて高い。分厚い顧客基盤を作ってしまえば、そこへは水だけでなく様々な商品・サービスを売り込めるだろう。
宅配水はまだまだ一般的とは言えず、飲める水道水が普及した日本で、どこまで拡大する余地があるのかわからないが、低い普及率は裏を返せば大きな拡大余地があるとも言える。
santecホールディングス
光通信関連の会社。こちらもすごい勢いで伸びている。
特徴は高い利益率で、純利益率が20%近くある。市場競争力の高い製品を持つ証左と言えよう。
光通信産業は、NTTがIOWN構想を提唱するなど、情報社会にあって、高い伸びが見込まれている。光測定器や光部品を担うことから、半導体における黒子企業が大きく成長する姿に似た雰囲気がある。
いずれも典型的な成長株だと思うが、わたしは見逃していた。
つくづく思う。
銘柄選択は果てしない。
見ていたつもりが見逃していることが少なくない。
そして、誰かが示した銘柄は、とても魅力的に見える。
それぞれの銘柄にはそれぞれの魅力がある。それを誰かがどこに魅力があるのかを論理的に説明しようものなら、無条件に買いだと衝動的な気持ちに襲われることさえある。
そういう気持ちで買った銘柄は、自分に明確な根拠がないから、売りの判断が難しかろう。
部室では、顧問が、自民党の混乱について、半ば呆れたような物言いをした。
裏金問題について、最大派閥・安倍派の幹部の面々は、いずれも会計責任者に一任していたので知らぬ存ぜぬで押し通したいようだが、誰がそれを信じると思うのだろうかと。百歩譲って、仮にそうだったとしても、だからわたしに責任はありませんとはならないだろう。
仮にそれで済むと思っているのなら、甚だ安易と言わざるを得ないし、もはや要職に就く見込みはないと思い定めるべきだろう。仮に彼らを重用するなら、自民党はまた野党に堕ちることになりかねない。
「こんなバカな話で国会がまともな議論もしないようになることが一番の問題です」
政治改革も必要なんでしょうけど、解決すべき課題は山積しています。国際情勢、経済対策、少子化対策、いずれも喫緊の課題です。なのに、政治の在り方から問わねばならないという体たらくですから。
野党は、その体たらくを追求するんでしょうけど、それで終わりなら、国民は納得しないですよね。与党に代わって喫緊の課題に対する具体的な解決策を持っているのか、そして、それを実行することができるのか。国民が見ているのはそういうところでしょう。
ただ批判だけすれば、国会議員という安定した身分が保証されているのなら、むしろ与党より野党議員でいる方がよっぽど気楽でしょう。
もしトランプさんがアメリカ大統領に復帰したなら、しっかり渡り合えるのかどうか。
野党が本気で政権を目指すなら、いい加減な輩への追求よりもすることがあると、わたしは思います。
顧問の話を聞きながら、わたしは思った。
国政の中枢を担う自民党が呆れるような人々の集まりであったにせよ、日本の日常は当たり前のように電車やバスが定刻にやってきて、ゴミはゴミの日に出されてきちんと回収されてゆき、能登のような大地震に見舞われることがなければ、蛇口を捻れば水は出るし、電気が消えたりガスが止まることもない。ネットや電話が通じなくなることもない。夜、女性が一人で歩くのも普通だし、銃を持つ人が闊歩することもない。ましてや、ミサイルが飛んでくることも、どこかから戦車が攻め込んでくることもない。
なにかを勘違いした政治家が多いのかもしれないけれど、それが許されるほど平和だと言えるのかもしれない。あるいは、そういったことを飲み込むほどに社会の許容量が大きいと言えるのかもしれない。
いずれにせよ、かくもていたらくな政治でも、しっかり日々を回している多くの人々の頑張りがあるということだ。
その一方で、社会の変化に対する機敏さに欠けるのは、昨日と違う明日を創造し、実現することが、社会の現機能を維持する人たちにとって、自分の仕事の範疇ではなかったり、もっと言えば、今の日常を維持する上で余計なことになるからであるかもしれない。
そんなことを思いながら、しかし、顧問と議論する欲求を覚えなかったので、わたしは黙っていた。
NISAはオルカンやアメリカ株のインデックスが人気と報じられているが、個別株での人気銘柄についても報じられた。
ネット証券5社の買付上位には、JT、三菱UFJフィナンシャルグループ、NTT、三菱商事、トヨタ自動車などが並んだ。
いずれも大型の高配当株だ。わたしの持ち株もある。
NISAの場合、売却益が出た場合だけでなく、配当金の課税も免除されるので、配当利回りの大きい銘柄が好まれたのだと思われる。JTなど配当利回りが5%近い。定期預金代わりにNISAを活用すれば、まるまる利息がつくみたいなものだ。無論、株式だから、元本保証はない。それでも、これら大型株なら安定していると思われるのだろう。
「どーして株式投資部はNISA使わないの?」
かわいい先輩が顧問に聞いた。
「株式投資益には税金がかかる・・・これが基本だからです」
顧問はあっさり答えた。
「でも、NISAだったら、年間360万円まで、最大1,800万円まで無税なんでしょう」
「ええ、だからこそ、あなたたちが卒業して、NISAをはじめたら、制度のありがたさがよくわかると思いますよ」
顧問はそう言って、笑った。
2024年1月26日現在 わたしのポートフォリオ
・1678 NEXT FUNDS インド株式指数 Nifty50 連動型上場投信 1,400株 買値300円 株価333.7円 時価467,180円 含み益47,180円
・2579 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス 200株 買値1,530円 株価1,981円 時価396,200円 含み益90,200円
・6623 愛知電機 100株 買値3,615円 株価3,910円 時価391,000円 含み益29,500円
・7330 レオス・キャピタルワークス 300株 買値1,358円 株価1,343円 時価407,400円 含み益▲4,500円
・8306 三菱UFJフィナンシャルグループ 400株 買値1,067円 株価1,341円 時価536,400円 含み益109,600円
現金 95,517円
時価総額 2,289,680円 含み益289,680円 含み益率14%
仮想運用分
・2372 アイロムグループ 買値2,003円 時価2,007円
・4498 サイバートラスト 買値2,160円 時価2,183円
・6758 ソニーグループ 買値14,540円 時価14,005円




