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おっさんが行く 異世界で軽運送   作者: 仕事の傍ら執筆中
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食べ物、大事

 昼飯時、畑仕事してる村の人たちに卵ロール配ったら大好評だった。

「作り過ぎちゃったんで、よかったらどうぞ」

 自分で作ったんじゃないけどな。

「よ、よろしいのですか?こんな高級なものを」

 んー、この世界の食べ物に比べて見た目も洗練されているから高級に見えるよね。ビニール包装されてるし。

「あー、いいから遠慮しないで下さい。たくさんあるので。あ、お茶もどうぞ」

「えっ、しかも茶なんて、領主様が貴族の方々くらいしか…」

 えっ、そうなの?じゃ、みんな普段なに飲んでるの?水、あ、さいですか。ま、今日のところはこれ飲んでよ。

 と差し出したところで気付いた。

「しまった、コップが無い」

 すると一人のじいさんが

「はっは、コップなんかなくても、ほれ」

 そう言うとそばの茂みから葉っぱを一枚取り、手のひらの中で器用にくるりと丸め、葉っぱのコップを作ってみせた。

 おおぅ、小さい頃うちの親父も作ってみせてくれたことがあったな。このコップと比べると形がいびつだったけど、それで飲んだ湧水の味と葉の匂い、唇に当たる葉っぱのギザギザ…妙に記憶に残っている。

「お見事です。さ、どうぞ」

 じいさんのコップへ真っ先に注いだ。

「おっ、こりゃすまんね」

 じいさんは注がれたお茶を一口。

「おぅ、これはうまい。さっぱりしますな。香りもいい」

 良かった、好評だ。

「オレもできる!」「あーん、しーちゃんも!」

 ガキンチョたちが集まってくる。よしよし、じゅんばーん!並べ並べ。こんな小さい子も畑の手伝いしてんのか、偉いな。よし、後でオヤツにポテチ持ってきてやろう。ジュースも少しくらいならいいだろう。あ、大人もモジモジして並んでる。ふふ。なんか微笑ましいな。

「たくさんあるからなー、慌てないで」

 現代物資を使った安易な餌付けはしない、と思ってたけど、これってまさに餌付けだよな。余った食料をダメにしたくなかったからしょうがない…よな。交流を深めるための潤滑油だ。


 その後おやつタイムのポテチが村中で大騒ぎになったのはまた別のお話。


 翌朝、井戸水で顔を洗い身体をタオルで拭いてさっぱりしたところで。

「はい、皆さんお待ちかね、本日の召喚ターイム!」

 いまこの場には俺ひとりです。


 異世界に来たばかりで不慣れとはいえ、昨日までの俺は無計画すぎた。反省。もっと俯瞰的(ふかんてき)視野で生活を組み立てなければ。スキルのご利用は計画的に。

 その場の思いつきで召喚すると失敗の元だな。必要な物をリストアップして優先順位をつけていこう。

 まずはそれを書き留めるノートとポールペン。

 台所周りは、まず食器類。食器用洗剤はあるのでスポンジ・タワシ。洗い桶大小。布巾。調味料。ナベ、フライパン。 ああ、ザルも。

 食料は、米、麺類と。冷蔵庫が無いので保存がきくものがいいな。レトルト食品や缶詰め、フリーズドライ野菜とか。乾燥わかめは優秀な保存食だ。村の人と分けられるから果物もオッケー。あ、生野菜も分ければいいのか。すぐ食べてもらえば肉もいけるな。いずれ発電設備を整えて冷蔵庫も導入したいが、まずは直近のサバイバルを解決させよう。


 次に衣服。生活の基本は衣食住、とはよく言ったものだ。俺の場合、住処が先に決まって食料もなんとかなってるから順序が逆だが。

 元の世界では、遠方への配達に備えて着替えを常に車に積んでいた。見知らぬ土地での立ち寄り温泉が楽しみの一つだったんだよね。でもその着替えだけじゃ足りないので召喚リストに服も入れる。

 下着、半袖シャツ、長袖、ズボン、靴下。上から羽織るもの、靴も何足かローテーションしないと足の臭いがキツくなるぞ。農作業用の長靴も出そう。 サンダルは…車のがあるからいいや。


 とりあえずこんなとこか。ではもろもろまとめて、しょーかーん!


 洗い桶は大小1つづつ出てきたのでよしとして、おいスポンジ!一箱何十個入ってるんだ、タワシも!一生使える気がしてきたぞ。パスタとうどんの乾麺がどっさり。これはおすそ分けしよう。缶詰めも。リンゴと梨もうまそうだ。

 あ、包丁を忘れた。まな板も。うーん、やっぱり抜けるなぁ。段ボール箱にギッシリのポールペンを取り出し、大量のノートから一冊取ってメモする。あ、味噌漉しも。おたま、揚げ物用深鍋も欲しい。


 む、なんかデカいものがあると思ったら、冷たい鶏肉が丸のまま現れてた。なるほど、お肉頼んだからね。食肉加工場を出荷する時の荷姿なんだね…って、おい!


 スーパーのパック入りの肉が出てくるものと勝手に思った俺が悪いのかもしれないけど。…しかし鶏でよかった。牛肉だと大変なことになっていたかもしれない。バンの荷室に牛まるまる一頭入らないか。

 丸鶏って、解体したことないし。だれか村の人に頼もう。


 Tシャツも出てきたが、デザインのセンスについては目を瞑ろう。『LOVER』ってなんだ、『愛人』か。うん、次回からは無地を指定しよう。

 下着や靴下はまぁ、無難な感じ。サイズ指定してなかったけどちょうど良いのが来てるな、不思議だ。 このへん、俺のイメージから自動調整されるのかしら。え、じゃぁ、あのTシャツって…考えるまい。


 食器はねぇ、ふっふっふ、キャンプ用のセットを召喚したのだ。これなら同じ皿ばかりたくさん、なんてことは無いでしょ。学習してるなぁ。あ、段ボール箱の中に4セット入ってた。ま、まぁこれくらい許容範囲。スプーンもフォークも、ペナペナじゃなくて割としっかりした作りのやつ選んだよ。


 よし、これで最低限自炊ができるようになった。 ぐんと生活感が出てきたな。

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