自炊はじめました
よし、鶏肉捌ける人探しに行こう、というか、ケダサカさんに紹介してもらおう。
え、ピクトさんやるの?
「羽根もきれいに取ってあるし、頭も落としてあって、血抜きも完璧ね。これなら楽勝よ。任せて」
おお、頼もしい。ムネとモモのところだけ少しくれれば、残りは差し上げます。
「ホント!?ホントにいいの!嬉しいぃ~!こんなに丸々と太った鳥は初めて見るわ。ニワトリっていうの?柔らかいわ~あら~なに作ろうかしら!」
めっちゃテンション上がってますね。良かった。ガラからもいいスープが出ますよ。
お礼にと葉野菜をもらった。キャベツっぽいなにか。歯応えも味もそっくり。うん、もうキャベツでいいや。
よし、お昼のメニュー決まり。鳥の唐揚げだ。
家に帰り、さっそく準備だ。一口大に切ってもらった鶏肉を醤油とニンニクに漬け込む。調味料は一通り車内の荷物の中にあったから助かる。
その間にお米を仕込む。鍋で炊くのは久しぶりだ。ほんのりお焦げもできておいしいんだよね、手間かかるけど。土鍋も旨いんだよなぁ。今度召喚しよっと。
米の量も水加減も、目分量。これでいいのだ。新米のようなので気持ち水は少なめに。
キャベツ。ほんとは千切りにしたいけど包丁が無いので手でちぎる。お湯にさっと潜らせて柔らかくして、と。水気をよくきって皿に敷く。 包丁は召喚し忘れてるのにザルは有るってなんだ。
米がふつふつ言いだしたので火力を調整。おいしく炊けろ〜。
カセットコンロをもう一台使って揚げ油を加熱する。鶏肉に片栗粉を薄くまぶす。肉のかけらを一つ油に落としてみると、初めは無音。すぐにチチッ、プチチリッ、チュルルル…とカケラが歌い出す。
うん、よさそう。余分な片栗粉を叩いて落とし、油に投入!
ゥジュッ、ンパジュウワチチッ!
おお、いい音するね、一呼吸置いて次の肉を投入していく。
米も蒸らしの段階まできたぞ、よしよし。これで冷たいビールが、って!っああっ!!無い!しまった!バンの召喚容積もたしかほとんど残ってないぞ。いや、仮にビールをケースで召喚できても、冷やす手段が無い。いやでも熱々の唐揚げにビールが無いなんて、拷問じゃないか。昨日みたいに間に合わせのカップ麺とは違うのだよ。ちゃんとした自炊ごはんですよ!冷たいビール無しなんて認めない!
考えろ、考えろオレ。諦めちゃダメだ、諦めちゃダメだ。
残りの荷室容積で冷たいビールを、あと数分で用意するにはっ!?
!はっっ!
頭に雷が落ちたような衝撃を感じた。これだ!
召喚!!『単品売りのクラフトビール』からの、『工場直送氷ブロック』!!ギリギリ容積足りた!
洗い桶に急いで水を張り、ブロック氷を入れひたすら砕く!砕く!ビンのクラフトビールを沈ませる!
やった…おれはやったぜ。
米が炊き上がった。唐揚げも油を切る。あー、キッチンペーパーもいるな。
テーブルに料理を並べる。
炊き立てのごはんに、熱々の鳥唐揚げ。品数は少ないが、昨日までのカップ麺生活と比べるとぐっと進歩した。さっそく頂きます!
よく冷えたクラフトビールをシェラカップに注ぐ。美味そう。世間ではビールの泡をたてて注ぐのが良しとされているが、俺は嫌いだ。泡をあまりたてずに注いだほうが絶対に旨い(個人の感想です)。泡が蓋になって気が抜けるのを防ぐ?冗談じゃない。俺は泡のその下に用があるんだ。気が抜けるほどチンタラ飲んでたらそもそも温くなって不味いだろ。
と、いう訳でまずは一口、グビリ。っはあぁ!ってかあぁ!旨い。
続いて唐揚げをガブリ、っと熱っ!ジュワッと旨い!
口の中が脂っぽくなったところに、硬めに炊いたゴハンを一口ッ!塩気と脂に出会ったコメがいい仕事をするッ!
さらに残った脂っぽさを熱気と共に冷たいビールが洗い流す!
あぁ、なにこの幸せ無限ループ。
時折り脂っこさに傾きそうになった口の中を、そうはさせじとちぎりキャベツが引き戻す。
はぁと幸せのため息を吐くと、ふわりと顔を出すのがニンニクの食欲を加速させる香り。なんて罪な食べ物を作ってしまったんだ俺は。
その日の午後は昼寝した。あれ、仕事してないなぁ、俺。




