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14 隠しキャラの隠れ場所

 リーフライトはあの王太子と話した日から、教室で過ごす態度を変えた。すると、ちょっと後から色々と変化があった。変えたと言っても、堂々と胸を張り顔を見せただけだ。


 エルザはリーフライトを昼食には誘わなくなったが、代わりに他から誘いが来るようになった。エルザと昼食を取るためにウロウロしていたのを見られていたらしい。お茶のためにサロンに、移動したのも見られていたらしい。ランドスタークっていう王太子のご友人とやらが、あの鳩の奇術凄かったなぁ今度また茶会でと、廊下で親しげに人の肩をバンバン叩いたりしたせいかもしれない。


 何故か、平民の娘から侯爵令嬢まで、同級生から上級生まで、昼食やお茶に誘われるようになった。

 身分にバラツキがあるのは、一応当たり障り無い身分として、遠国の伯爵の令息としていたからだろうか?


 最初は包帯を見せ体調が優れないからと断っていたが。すぐに休み時間、人のいないところに逃げる方向性に舵を切った。


 リーフライトはそこからなんとなく逃げ続けている。もう諦めたかなと思っても、獲物を見つけたとばかりに席に戻った時に、呼び止められたりもした。女性たちからは逃げられるようになったが、逆によく出会う人が出来た。


 会うのは使われていない塔の階段とか、先生がたまにしか来ない美術準備室や、筋トレするための道具や木剣が入った用具倉庫、人気のない裏庭の茂みとか。


 よく出会うそいつは、会う時は連日、少なくとも三日に一回の頻度くらいで会った。


 そいつはいつも一人ではなかった。だが、いつも違う女性を連れていた。金髪、銀髪、ブルネット、巨乳に貧乳に中間サイズ、身分とかもバラバラの女子生徒ばかりだ。女子が小さな悲鳴を上げて胸元を直す、ちょっときわどいシーンもあったりした。


 最初はちょっと驚いたような顔で、途中ちょっとわざと邪魔されているようで不快そうだったが。先にリーフライトが陣取っている事も多いため、「ヨッ」とか軽く挨拶をしたり、「また会ったな」と目配せで会話する事もあった。


 その日は使われていない塔の部屋で、リーフライトが本を開いていた時にやってきた。珍しく一人、彼は緑がかった金髪の持ち主だった。


「ヨッ」


手を頭の横に敬礼のように軽く当てて挨拶をしてきた。最近気にいった場所だったから、一応自分の周りはホコリは払って、鎧戸が外れてしまった窓は、余計なものを寄せて光を遮るようにしている。


「誰かと待ち合わせか?」


 リーフライトは来訪者に尋ねた。


「いや、誰かさんとあまりに良く会うから、ちょっと気になってね。二ヶ所目で見つけたよ。」

「誰かさんは別に会いたくなかったんだが。」

「まぁ、あまりによく会うと、運命みたいなものを感じないか?」

「男色に興味があるのか?」

「残念ながら、そっちはないようだ。君を押し倒したいような衝動はないね。」


彼は当然のようにリーフライトの横に座った。


「たまには休憩したかっただけさ。」


 彼は肩こりでもとろうとするように、伸びをした。

 リーフライトとしては誰かが来たから逃げるのも、微妙だなと手持ちの袋から色々出してセットする。


「毎回違う女子を連れて歩くのにも、ネタが尽きてきたか?」


 アルコールランプに火をつけて、火の上に鍋が乗せられるよう台をセットした。


「同じ子と毎日会うと、期待させちゃうだろ?でも、話さないと相手のことわかんないから、好きになれるかもわからないし」


 小さな鍋に、水筒の水を入れて火にかける。水筒は毎日洗って、水を新しいものに入れ換えている。


「僕の方では君らしい男子生徒が、女子の食事の誘いから逃げ回ってる話は聞くけど。君こそ男色疑いが出るほど固くないかい?」


 リーフライトはよくしゃべる来訪者に、めんどくささを前面に出しつつ答えた。


「そちらと違い、女子なら何でもいい訳じゃない。あと、昼食とかには付き合わなかったが、断り続けるのが申し訳なくて話だけならしたことがある。」

「ほうほう、いい雰囲気にならなかったのかい?」


興味津々に聞いてくる相手を横に、荒いガーゼの袋に茶葉を入れ、携帯用の金属のポットに入れる。


「私のパートナーになって、王太子主催の茶会に行きたいと熱心なアピールをいただいた。同じようなことを別の人にも言われたな。」

「下心が見えて、馬鹿馬鹿しくなったと」


鍋で沸いたお湯を、ポットに注いで入れる。


「そういう野心みたいな動機だけじゃないと思うが、君容姿はかなりのレベルだし」


リーフライトはお湯を入れ少し待ってから、ポットと同じ金属製のコップに茶を注ぐ。


「茶を淹れたが飲むか?」

「こういうとこで飲んだことはないけど、なんか楽しそうだからいただくよ。だけど、なんだかどこかで野営してるようなセットだね。いつもこんなことしてるの?」

「まぁな」


嘘である。一度試しに使ったし、水は毎日入れ換えて持ち歩いてるが、食事をしない事を不審がられないためのセットである。

 彼はコップを受け取り、香りをかいで微笑んだ。


「僕の幼なじみが好きなお茶だね。」

「お前も好きなのか?」

「さて、どうだろう。クセのあるお茶だしね。だけど、何故かたまに飲みたくなるんだ。」

「そうか。」


さらに、リーフライトは布袋から取り出した、紙袋に入った焼き菓子を勧める。昨夕に街で買ったものだ。消化のため明け方の森で前々日の古い菓子を撒き、鳥に餌をやるのが日課になりつつあった。

 相手は焼き菓子一つ取り、紅茶を口に運び、不審そうな顔をした。


「自分で淹れないから、何故かはわからないけど、いつもと味が違うな。微妙に変な味だ。」

「私にはよくわからないな。あまり自分で淹れた事もないし、これを飲むのは二度目だしな。」


リーフライトは少し冷めたのを見計らい、口に含むが言われた味の差はよくわからない、


「貴重な茶葉だし、もったいないような微妙さだな。今度従者やってる奴に、茶の淹れ方を教えてもらったらどうだ?」

「文句言うなら飲まなくていい。」


リーフライトはその日はなんとなく、そいつとしゃべって昼休みを終えた。

読んでいただきありがとうございました

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