番外編 時間はゆっくりある
残酷なシーンがあります。
ご注意下さい。
遠くで、シャリ、シャリという音がする。
((何の音だ……?))
松井と村山の意識が、音の方向に向いた時だった。
「そろそろ、起きて。二人とも」
楽しめそうな声と、揺り動かされる腕の感触に、松井と村山は目を覚ます。
「やっと起きたね」
中川が二人の側に立っていた。反射的に、松井と村山は起き上がろうとしたが、縛られているのか、四肢の自由が利かない。唯一動くのは、首から上だけだ。
「っ!! ここは何処だ!?」
「俺たちをどうするつもりだ!?」
松井と村山は中川を怒鳴り付ける。
以前の中川なら、ちょっと声を荒げただけで、ビクッと身を竦ませ逃げ出すのに、ここにいる中川は、身を竦ませることなく、反対に嬉しそうに松井と村山を見下ろしている。
「ここは、拷問部屋だよ。解体部屋とも言った方がいいかな」
「「解体部屋……」」
絶望を含んだその声に、中川は満足そうに微笑むと、天井のある一部を指差した。
そこには、明らかに人だった者の手足が、切口を逆さにしてぶら下がっていた。
一瞬にして、それが誰のものか松井と村山は理解した。
同時に、強烈な嘔吐感が込み上げる。吐き出されるのは、胃液だけだった。
その臭いを近くで嗅いでも、中川は顔を歪めない。反対に嬉しそうだ。
「血抜きをしてるんだよ。そうしないと、食べれないからね」
「…………狂ってる……」
切れ切れな息の中で、村山が吐き捨てる。
「そうだよ。何、当たり前の事を言ってるのかな? 僕は君たちに復讐するために、人であることを捨てたんだよ。山岸さんや斉藤さんは女性だから、すぐに殺してあげたけど、君たちはすぐには楽にしてあげない。これから、意識を保ったまま解体されていくんだよ。そうだね……まずは、足の指からいこうか? それとも、手の方がいいかな? 選ばせてあげるよ。松井君、村山君、どこにする?」
ワクワクした声で、中川は胃液にまみれた松井と村山に呼び掛けた。
『…………中々、エグイですね。麗さん』
さすがのレンも、口元に手を当てている。道化は言葉も出ない。モニターを操作していたスタッフも、三分の二がこの場から逃げ出していた。
モニターには、ゆっくりと解体されていく、人間の肉体が映し出されている。
一人、麗だけが、何事もなかったかのように、平然と笑って眺めていた。
『始めに、そう言っただろうが。我は。それで、これを見せてよかったのか? 勇也に』
そう訊かれて、レンと道化は答えられない。
『普通の人間なら、耐え切れないだろうな。運よく耐えられたとしても、その精神は深い傷を負っている筈じゃ。それも、致命傷に近い傷をな。そんな状態の勇也を、この場に留めおく事は、まず無理だろうな。それとも、お前たちは勇也が壊れても、居て欲しかったのか?』
『『…………』』
レンと道化は答えられない。この映像を見れば、麗が勇也にとった態度は間違っていなかったと、レンと道化は思う。
それに、レンと道化がそんなことを望んでいないことは、麗には分かっていた。
精神を壊した勇也は、もはや、麗たちが知っている勇也ではないのだから。
いつしか、モニター室には三人しか残っていない。
人形として生きていくことになった、中川は別として。人形は視線を逸らせることなく、モニターを見続けている。
逃げ出さなかったレンと道化に笑みを浮かべると、麗は人形の頭を撫でながら、柔らかな口調で言った。
『まぁ、時間はゆっくりある。事を急いては失敗するぞ。なぁに、解けたと思っておる縁は、今も繋がれたままだ。三か月後には、クリスマスイベントも始まる。……今度は、ゆっくり滞在してもらおうかのぉ……』
段々、麗の笑みは深くなる。
アヤカシたちは、三か月後に思いを馳せた。
モニターから流れる、松井と村山の悲鳴をBGMにしながら……
お待たせしましたm(__)m
番外編最終話です。
一応、これにて、「人喰い遊園地」は完結になります。
この作品に登場するキャラクターたちを愛してますので、もしかしたら、続編を書くかも……。あくまで、かもです("⌒∇⌒")
最後まで読んで頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
心からの感謝の気持ちを込めてm(__)m




