十三人参上(九)
その頃のフェニックス&天上界王はと言うと、西階段と中央階段を交互に利用し十二階に向かっていた。
別にしたくて面倒くさい事をしている訳ではない。
セキュリティのため、エレベーターは無く、一階−二階は西階段のみ、二階−三階は中央階段のみ、という風になっているのだ。
もう、用心深いというか、何がなんだかという感じである。
最初の方は二人ともセキュリティ万全で結構だと思っていたが、さすがに五階を越えてくるとただの嫌がらせにしか思えなくなってきた。
「天上界王、今何階だ…?」
「次で七階だろう…。」
「ったく、変なもの作りやがって…。」
「ぐはっ!」
天上界王が突然謎のうめき声を発した。
「どうした天上界王!?もう年老いたため骨が脆くなっており、更にこの複雑な階段を延々と上っているせいで足をつったか!?」
「的確に当てるのね、育ち盛り君」
「フッ、こう見えても小学生の頃は将来探偵か刑事か迷ったもんですヨ」
「そして今は軍隊に入ろうとしますか」
「アンタが入れたんでしょ」
ここに今は亡き李伊奈がいればサブジェクトが解らなかった奴が探偵などとほざくな、と言っていただろう。
馬鹿話を続けて十数分、遂に十二階に着いた。
「さてと大会議室はどこかなー?」
階段から見て順番に部屋の名前を挙げていこう。
大会議室1。
大会議室2。
大会議室3。
大会議室4。
大会議室5。
以下略。
「…天上界王」
「…何だい」
「これもセキュリティの一種だろうか?」
「なるほど。敵に脅され、幹部はどこにいるかと聞かれ、十二階の大会議室と答える。すると、十二階の部屋は全て大会議室だったと。」
「非常時の訓練はしっかりと活かされているな」
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「ざっけんな!オラ幹部出てこい!」
「落ち着けフェニックス!」
いくら叫んでも誰も出てこない。最初の叫びの時、どこからか、わっ、と驚きが聞こえたが、誰も出てこなかった。
「こいつら出てこないつもりかぁ〜…。」
フェニックスがフンフン鼻息を吹きながら凄い形相で廊下を見つめる。
「よし、わしが呼んでみよう。えー、ゴホン。わしは天上界王である」
ガチャ。ガチャガチャ。
「お呼びですか、天上界王」
「ご無沙汰しております、天上界王」
「何用ですか、天上界王」
全ての部屋から人がゾロゾロと出てきた。
「こ・い・つ・ら〜!」
「落ち着け、フェニックス」
天上界王が一息おくと、
「ここに来たのは幹部諸君と会議するためだ。どこでやっている」
「大会議室1です、天上界王」
目の前にあった部屋である。
フェニックスの全ての苦労は意味を成さなかった。
長机数脚で一つの長方形を作り、それを囲むように人が座る。
天上界王とフェニックスもそれに倣った。
「して、何用でしょうか、天上界王」
「その少年は」
「うむ、今日来た理由はこのフェニックスに関係がある。そして、その案件には君達幹部の承認が不可欠だ」
それがこの王の長所なのだ。
自分一人で権限を握らず、色んな所に分散する。ただ、ある事柄においては民全員の賛成が必要になる場合もあった。
王の長所であり、界の短所だ。
天上界王が続ける。
「今、天上界軍にはいくつか部がある。少人数部、多人数部など。そして、新たに部を作りたい」
「何部ですか」
「テニス部」
「…………。」
「…………。」
「天上界王、えー、大変面白いご冗談を頂きましたが、この場では真面目に…」
「チッ、ユーモアセンスの欠片も無い奴等め。これだから、エリートってやーねぇ」
幹部諸君、「殺意」の二文字で対王として一致団結している。
「じ、実際の所は何部でしょうか」
「バスケ部」
「サーベルファイア!」
一人の男が天上界王に技を出した。
「フッフッフ、真面目にやってくれませんかねぇ、天上界王…」
「ハハハ、フレアー君、少人数部にいる息子は元気かね…」
黒焦げになりつつも戦友の息子を案ず、心広い王様である。
するとフェニックス、
「そろそろ真面目にやれ」
と言った。
「仕方無い。新しく作りたい部は地上界防衛部だ」
幹部全員が、冗談か?マジか?という顔をしている。
察知した天上界王が、
「これは真面目に言っている」
と言った。
「そして、その長がこのフェニックスだ」
「…遂にボケましたか、天上界王」
「死ぬ時はお供します、天上界王」
「待たんかお前ら」
完璧にボケたと判断された天上界王だ。
「これはマジだぞ」
フェニックスが言った。
「馬鹿タレ小僧が、ガキはガキらしくガキ大将でもしていろ」
「俺に憎しみを抱いているのかな、フレアー」
「当たり前だ、フェニックスとやら。ウチの息子が貴様の仲間によってナンバーワンを引きずり下ろされた事ぐらい耳に入っている」
「へー、アイツらそんな事したんだ」
「とにかく!」
天上界王が大きめの声で言った。
「地上界防衛部を作り、地上界防衛長はこのフェニックスにする。これを審議してもらいたい」




