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五人の覇者  作者: コウモリ
十三人参上
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十三人参上(四)

「…?」

フェニックスが困惑していた。

「どうだ?」

天上界王は気づかずに聞いてくる。

「…天上界王、ちょっと頭が追い付いていない」

「だから、お前だけ他の四人よりクラスの高い軍人にならんか、と言っているのだ」

フェニックスの顔が天上界王から四人に向いた。

「…と言われているんだが」

「良いんじゃないの、お前が良いなら」

ペガサスが答える。

「でもよ…」

フェニックスはまだ迷っていた。

「でもよ、俺がいなくなったらお前らちゃんとやっていけるのか?」

最早、十歳以上年上の人間に対する発言ではない。

「…………。」

そして、その発言に突っ込まずにマジで考えている四人である。

「俺がいなかったらとんでもねー事になるんじゃないの?」

「…………。」

十歳以上年下に今後の人生を懸念される屈辱がお解りだろうか。

解るはずがない。

「やっぱ俺は抜けられねーよなぁ…。」

だが、そこに救世主は現れた。

「私が面倒見ますから大丈夫です」

同年代の美女に面倒を見ると言われる屈辱がお解りだろうか。

解るはずがない(いや、解る人は解るかもしれない)。

因みに、声の主は水神である。

「良いのか水神?」

「構いません、フェニックスさん。安心してお行きなさい」

「それに、私も付きますから」

「サンキュ、ツルギ。お前ら二人がいたら大丈夫だろう。でも、そうすると覇者隊に火の覇者がいなくなるよな…。」

ここまでの展開を見てもう先が読める方も大勢いるだろう。

そう、現れたのはリュウである。

「フェニックス君」

「何だ、ルウ」

「フェニックス君、小文字のヤユヨが言えなくなったの?ドラコンが華麗にカレーのルーに変身しているんだけど」

リュウのユーモアセンスが自信を無くさないようにここはドッと笑ってほしい。

「華麗」に「カレー」のルーに変身したのである。

「悪い悪い。突然の登場にビックリしちまって」

フェニックスがスルーしたことでリュウはかなり落ち込んだ。

「…………。」

「で、用件は何なんだよ」

「今までの会話の流れで理解してほしかったね」

「ん…?」

「理解できないの!?」

サブジェクトが科目と解らなかったフェニックスに理解できるはずがない。

「何かあったっけ」

「…………。」

「おい、言うなら言えよ」

「…………。」

言えるはずがない。自分から覇者になると言うなど傲慢にも程がある。

そこで、リュウの取った作戦はこうだ。

「僕からは言えないんだ」

「何でだよ」

これからやるのは、どさくさに紛れて言っちゃう作戦。

つまり、 僕からは言えないんだ、自分から覇者になると言うなど傲慢にも程があるからね、あ、言ってしまったー! と言うわけだ。

リュウらしいような、らしくないような作戦である。

「だって、自分から…」

「フェニックスさん、リュウさんを火の覇者にしては?」

「あっ、ナイスアイデア水神!」

水神がリュウの気持ちを理解したのか理解していなかったが自力でその案を生み出したかは未だ不明である。

「…………。」

作戦、不発。

「で、リュウは何で言えないんだ?」

どうやら、不発弾は自国で爆発したようである。

「い、いやぁ、気まぐれかな…?」

被弾、回避。

「ふーん。で、火の覇者になる気は?」

「あるよ。火の覇者、火竜ひりゅうリュウにね!」

「火竜リュウって言いにくいな。いっそのこと名前変えたら?」

フェニックスの破天荒なアドバイス。

「火竜サラマンダーとかどうだよ」

精霊技、龍臨に次ぐ第三のサラマンダーである。

果たしてリュウは承認するのだろうか。

リュウより先にサンガーが言った。

「なんかそれヒーローの名前みたいじゃないか?火竜サラマンダー!って」

「ダーの辺りがそれっぽいですね」

クラーケンが乗ってくる。

ようやくリュウの出番である。

「名前を変えるなんて聞いたことがないよ。やっていいかどうか…。」

現覇者五人が笑ってある人を指差した。

「なら、聞くのにうってつけの奴がいるじゃないか」

指を指された奴が反応する。

「お呼びかな」

「…!」

リュウが愕然とする。

そう、リュウを今見つめているのは天上界王である。

覇者達にはただの男かもしれないが、リュウにとっては手を伸ばしても届かない所にいるお方だ。

「リュウ、という名前なのかな?」

「は、はい…。」

「君の力だけまだ解らない。私に技を撃ってくれ」

恐れ多すぎて失神しそうなぐらいの事である。

たかが民が王に技を撃つなど。

「遠慮はいらない。さぁ、最高の技を撃ってくれ」

「大龍火炎!」

大きな龍の形をした炎が王に向かった。

それを王は守ると思ったが…

「天上界王!」






「大丈夫ですか?」

「大丈夫だ、リュウ。お前の技をくらった程度でわしは死なん。それより、お前もあの四人と同じぐらいの力を持っているな」

天上界王がクラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクを指差した。

「ありがとうございます。それで、名前の方は…」

「鳳凰火炎!」






「お前の技くらったらマジで逝くわッ!」

天上界王が凄い形相でフェニックスに向かって叫んだ。

「いや、リュウの技見てなんか俺にも出来そうだなーって」

「だからってわしにやらんでもいい!」

「あーも、うるさいジーさんだなぁ。さっさとリュウに答えを言えよ」

「ぐ…フェニックス貴様という奴は…!まぁいい、答えとしてリュウ君、名前の変更はOKだ」

「良いんですか?」

「ああ。貴族の中には記念日の度に変える人がいる」

「それは…また素晴らしいお方で」

「だから、勝手に変えて良いぞ」

天上界王の許可アリでリュウに逃げ場はない。

「さて、リュウ」

「なんだい、フェニックス君」

「たったの今からお前の名前はサラマンダーだ」

一瞬の沈黙。

「…解った。僕はサラマンダーだ」

リュウ、了承。

「よし!リュ…サラマンダーにお祝いだ!」

「天上界王、宴を始めるぞ!」

当初の目的を完璧に忘れている彼らであった。


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