二百年大修行 サンガー編(一)
「ギガサンダー!」
ダグォ〜ウン…。
「ギガサンダー!」
ギィバダ〜ン…。
雷の音、というのは中々難しいもので、ゴロゴロと言う人もいればゴロニャーを推奨する人もいる。はたまたウーワンワンと鳴っている、などと言う気象学者もいる。しかし、雷様は太鼓で雷を鳴らしているため、ドンドコドンという表記でさえ否定できない。
とどのつまり、雷の音は人の耳を越えている。
だから作者は雷鳴をブエックション、と表現する。
「ギガサンダー!」
ブエックション!
このように、だ。
さて、お遊びはこの辺にして、彼が今何をしているかを説明しよう。
修行の箱という場所でストレ…修行をしている。
何故か?
そんな事知ったことではない。
大事なのは修行内容だ。
ひたすら雷を撃ちまくる。
彼の凡人時代はニートであったが、それよりもタチが悪くなっているのがお分かりだろう。
だが、この「修行の箱」ならば大丈夫だ。
何故なら、ここはどんな技を受けても壊れない。
戦時中シェルターとして使われたぐらいだからだ。
「さて、飯を食うか。サンガー特性の雷神グ弁当♪」
雷神とライジングが掛けられているのがお分かりだろうか。特に意味はない。
「遊びに来たンチ!」
「おお、パックンチ!」
どこからどう見ても毛虫なのだが、丼に入ったドジョウが喋るぐらいだから我々は許容しなくてはならない。
「修行はどうなってるンチ?」
「いつも通りさ。新技の開発は明日にやるからその時また来な」
「解ったンチ!」
食べ終わるとまた、ブエックション、ブエックションとやり始めた。
壬生浪士組より先に新撰組を作ったあなた方ならもうお分かりだろう。
そう、シェルターと呼ばれるほどの箱がどれだけ大きいか。そして、そこをたった一人で使うサンガーのサンダーの威力がどれだけのものか。
次の日。
「また来たンチ!」
「おお、新技のイメージが出来たぞ。言わば、一人奥義!」
「一人奥義…。」
「どうした、語尾に個性がなくなるほど衝撃を受けたか?」
「どういう計測ンチ?」
「とにかく、それを試そうと思う。」
「あ…。や、やめた方が…。」
「何故」
「一人奥義は実際に存在する技ンチ。」
「それで?」
「だから、新技じゃないからやめた方がいいンチ!」
ズッテーン…。
「そ…そんな理由で…。」
「これは忠告ンチ。そんなもの覚えて皆に新技だとか言って恥かくのはサンガーだンチ。元から低い信頼がさらに落ちるンチ。やめた方がいいンチ。」
パックンチは帰った。
「くっそ、あんの野郎コケにしやがって…。ゼッテー新技開発してやる!」
コケにされる理由を作ったのは彼自身なのだが、やる気が出たので結果オーライである。
次の日も彼は新技を開発していた。
「ここをそうして、あそこがそうなって、右が上に来て、あ、でもそうしたらあれがこうなるから…。」
声だけ聞けばまるで15ゲームでも解いているようだが、新技を開発しているのだ。
「うーん、こっちの方向でいくかな…。」
顔だけ見ればゲームプログラマーの企画作りをしているようにも見える。
何度も言うが、新技を開発しているのだ。
「っし、一回試してみるか!
天の雷神よ!祭りだ!」
遂に訳解らんことを口走り始めた。
終いにはズンチャズンチャと踊り出す。
すると。
「雷神、お出まし!」
ドンドコドンドコドンドコドン!ドンドコドンドコドンドコドン!
一定のリズムで太鼓がどこからか鳴り始めた。しかし、修行の箱は安全のため密閉状態。聞こえるはずが…。
ドンドコドンドコドンドコドン!ドンドコドンドコドンドコドン!
聞こえている。ハッキリと。
「でも何も起きねえなぁ…。」
サンガーが不意に外に出る。すると。
「なっ…。なんじゃこりゃあああああああああああああ!!!」
ピロリロリン♪
『雷警報:修行の箱周辺で規則的かつ不規則的な雷が発生。リズムは一定だが落ちる場所はある範囲内でまばら。充分に注意すること。』
まさに雷神の雷。
ここ一時間ずっと町ではドンドコドンドコドンドコドンと鳴り続けている。
無論、彼サンガーの仕業だ。サンガーは躍りをやめていない。
「この躍りを止めたら雷も止まるのか?」
ピタッ。
ドンド…ピタッ。
「止まった。もう一度踊ってみよう」
…コドンドコドンドコドン!
「おお。俺が踊っている間は鳴るのか。だが、踊るのは面倒だな…。何か他に方法は…。」
サンガーの頭の上に豆電球が灯る。
「太鼓を叩けばいいのか?」
彼に「ハウ」という言葉は無いのだろうか。いや、案外そうでもない。
「俺のサンダーで作れたりして…。」
雷を指から出すと空中に雷様が持つような太鼓を描き始めた。




