二百年大修行 クラーケン編(二)
「きょーうもあーしたもしゅーぎょうちゅうー。あーあとうぉーたはいーつでーきるー。はよでけ、はよでけ、はよでーきろー。(今日も明日も修行中。アートウォーターはいつ出来る。早く出来ろ、早く出来ろ、早く出来ろ。):でんでん虫の歌に合わせて」
これが、クラーケン作の歌であり、ボスの出した修行方法である。
何でも、替え歌は想像力をよく使うとか。
「ーって、何で地上の歌なんですかー!」
「地上の歌?何を言う、でんでん虫は天上界一の童謡だぞ」
「…………。」
「はい次、蛙の歌でいこうか」
「またしても地上の…」
「馬鹿を言え、蛙の歌は天上界で五本の指に入る童謡だぞ」
「…………。」
では、お聞きください。クラーケン作で、修行の歌。
「ぼ・く・しゅ・ぎょ・う・ちゅ・う。ま・い・に・ち・た・い・へん。は・よ・で・け、ぼぼ・くく・しゅしゅ・ぎょぎょ・う・ちゅ・う。(僕修行中。毎日大変。早く出来ろ、僕修行中。)」
「ワンパターン」
ぺしっ、
「キャイン!」
「またマンネリだったらこの鞭で叩くぞ」
「もう叩いてますが」
「口答え」
ぺしっ、
「キャイン!」
では、お聞きください。クラーケン作で、修行の歌PART2。
「あ・あ・と・うぉ・お・た・あ。は・や・く・で・き・た・い。しゅ・ぎょ・しゅ・ぎょ、とと・れれ・いい・にに・ん・ぐ・さっ!(アートウォーター。早く出来たい。修行、修行、トレーニングさっ!)」
「いささかマ…」
「気のせいですっ」
高速、かつ全力否定。
クラーケンの全てがこの一文に込められている。
「まあ…良かろう。そろそろ弟子イジメ…いや、想像力トレーニングも終わったし、技の修行にいくか」
「僕の耳に不適切な単語が聞こえましたが、まあ、技の修行にいきましょう」
「…………。」
クラーケンの歌…のせいで忘れていたかもしれないが、ここは酒場であって、よって客がいる。彼らも一等の力の持ち主で、クラーケンに勝負に来ている人もいる。彼らはそのクラーケンが微妙な歌を歌っているのを見てこう言った。
「あれが噂のクラーケンか?」
「もっと殺気を放っているのかと思っていたが…」
「本当に強いのか?」
そんな事を聞いたクラーケンは、酒場の皆にこう言った。
「僕は弱いです。噂はただの噂であって、これが本当の僕です。煩悩親父と替え歌を…」
クラーケンはそこで失言に気づく。
「…誰が煩悩親父だって?」
「ぞ…ぞぞぞぞぞぞぞぞぞ存じません」
「声震えてるな」
「ま…ままままままままままさか、」
「ねぇ、誰が煩悩親父だって?」
「ぞ…ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ」
クラーケン、ウォーターフォール。
「まずは、魚を作れ」
「あの…全身骨折してるのですが」
「馬鹿を言え、全身骨折してるなら喋れんだろう。喋れるなら全身骨折じゃない。全身骨折じゃないなら修行ぐらい出来る。」
「最後のはどーゆー理屈ですか」
「フッ、この煩悩数学博士に証明しろと」
ボスがいきなりインテリのガスを吐く。
だが、ホームズより先にモリアーティ教授が怪しいと気づいた賢いあなた方ならもうお分かりだろう。
そう、この瞬間ボスは…
「自分で煩悩って言いましたね」
「はうっ!」
「さっき僕を痛め付けた分返してあげましょうか」
「ま、待て、全身骨折の君は休んで…」
「あなた、さっき僕を全身骨折だと」
「違う、言葉のあやだ!」
言葉のあや。
それはどんな時でも嘘を隠せる魔法の言葉。
だった。
「そんな言い訳通じませんよ。ギガウェーブ!」
「きゃああああああああああああ」
「駄目ですよ、全治五年の怪我なんか負って。これだから天上界の人間は体が脆い。あーあ、修行が進まないなー」
「…………。」
「何です、その『お前のせいだろ』的な眼は。因みに僕テコンドー習得してるんですよ」
「…………。」
クラーケン、間接的な脅迫である。
「喋れるんでしょ、修行の続きをしますよ」
「何故喋れたら…」
そこでボスはハッとする。
自業自得だと。
数年後、クラーケンは酒場を出た。
「また新しい所に行きましょうかね。もっと強い人がいる所に!」
道中、クラーケンはある事を思い出した。
「そう言えば、あの森に挨拶に行けてませんでしたね…。」
クラーケンが思い出したのは、神秘の森。
『私はいつでもあなた達を歓迎します。いつでも来てくださいね。』
その声は優しい女性の声。ゆったりと四人を包むようだった。
バッグを漁る。
ペットボトルが出てきた。
バジリスクが、
水は水の覇者が持っとけ
と渡してきたのだ。
「鑑定しようとしてたんですよね…。」
ペットボトルを開けると一口含ませた。
あの時と劣らず力がみなぎってくる。
「上でも鑑定できるんでしょうか…?」
クラーケンは、もう一度バッグにしまった。




