三種の神器
短編。ジンギの過去
ある女性から三つ子が産まれた。その名を、
ツルギ・カガミ・タマ
と言う。
三種の神器
「本当に仲が良いわね、この三人は」
「そうだな」
ツルギ、カガミ、タマの三人が離れたことは殆ど無い。同じことをしている訳ではないが、各々自分のやりたいことを背中を合わせてやっていた。
「それで、そろそろAIH値を計るべきだと思うんだけど」
「そうだな」
病院にて。
「検査は済みました。」
「それで、結果は?」
「三人とも同じ、16です」
「じゅ…16?」
「はい」
「子供のAIH値は両親の中間辺りになるって…」
「基本的にそうなんですが、たまに突然変異で高かったり低かったりします」
「そうですか…。それで、力は?」
「三種の神器」
「聞いたことありませんね…どんな力でしょうか」
「この三人は、一つになることが出来ます」
「え?」
「見ていてください」
医者が三つ子を抱え、それぞれをくっ付けた。
すると、三人が光を発し、やがてそれは一つの光となった。
その中から一人の子供が出てくる。
「これは…!」
「三人の合体した個体です。」
「どちらが本物なのですか…?」
「どちらも本物です。是非、この娘にも名前を付けてあげてください」
医者に勧められ、二人が考える。
「お前の名は…ジンギ。ジンギだ」
医者が微笑んだ。
三人にも一人にもなる彼女らは、学校でも一際目立った存在だった。
理由は力だけではない。
三人は、個々特別な力を持っていた。
ツルギはアタック、
カガミはディフェンス、
タマはスピード、
この三人が合わさり、
ジンギはマルチの力を持っていた。
そのため、周囲の期待は大きかった。
(あの娘達はきっと偉大な戦士になる)
(男達にも負けない立派な戦士になる)
両親も、その期待に応えさせようと、三人を道場に通わせた。
日々練習漬け。
その事実に周りの噂はギアを上げた。
(彼女らは特訓以外はしない)
(それ以外何も興味ない)
噂に彼女達は付いていく事が出来なかった。
ある日、学校ですら誰とも話せなかった三人に、女の子が声をかけてきた。
「ねぇ、たまには一緒に遊ぼう?」
「…え?」
「いいじゃん、特訓の休憩にさ!」
三人にとってこれ程嬉しかった事はない。
すぐにオーケーしようとした。
だが。
「駄目だよ、ルルちゃん、三人は今日も特訓なんだから。誘っても忙しくて来れないよ。」
「そっか、ごめんね三人とも。」
「…あ」
誰も悪意はない。
それが彼女達を更に悲しくした。
道場にはもう一人女の子がいた。
その娘も同じように毎日特訓漬けで、誰かと遊んでいる様子はない。名前を、
ノア
と言った。
休憩時間にカガミがノアに話しかける。
「ノアちゃん」
「なに?」
「ノアちゃんは誰とも遊べなくて寂しくないの?」
「ううん、ツルギちゃん、カガミちゃん、タマちゃんがいるから大丈夫だよ」
「え…?」
「私も道場が男の子だらけだったら寂しかったけど、三人がいるから大丈夫」
「ありがと」
カガミはにっこりと笑った。
「ジンギー、ノアー、試合の準備しろー」
コーチが呼ぶ。
「はい」
「はーい」
ノアとジンギは向かい合った。ジンギは、誰と戦うときも最初はジンギとして戦う。
「スタート!」
ジンギが蹴りをノアの横腹に入れる。
ノアが顔をしかめるが、立て直してジンギの首を掴む。
コーチは、反則を取らない。実戦と同じ形にするためだ。
「カハッ…」
「…落ちた」
ノアがにっこりと笑った瞬間にカガミとツルギが現れた。いつの間にか首を掴んでいるのがタマになっている。首を放し、髪の毛を一本抜く。
ツルギが腕を刃にする。ツルギがノアに切りかかるが、ノアは髪の毛一本でそれを防ぐ。ノアの背中に球体が近付く。
「っつ…!」
ノアが前に宙返りし、ツルギに球体が接近するが、刃で跳ね返した。
「気を付けな、タマ!」
「ごめん、ツルギ!」
今、ツルギとノアは背中合わせの状態。
「ノア、仕掛けたら?」
ツルギが挑発する。
「嫌よ」
「どうして?」
「カガミが守るもの」
「良くお分かりで」
突然ノアの前にカガミが現れ、顔面を蹴飛ばした。
「ぐっ…!」
「ノア、あなたは攻撃しようとしまいとやられていたのよ」
ツルギがノアの首筋に刃を当て、一気に切り裂こうとしたが、ノアは口から波動を出した。
「どう、新しく覚えた技よ?」
「面白いじゃない」
額から血が出たツルギが不気味に笑う。
「でも、あなたは私には勝てません」
ピーーッ!
「そこまで、お疲れさん」
その後も順調に彼女らは強くなっていった。ノアの行方は解らないが、きっと彼女も強くなっていることだろう。
そして、極界戦争が勃発した。
ヒューン…。
「カガミ、東に鉄の塊が落ちるみたい!あと三分で落ちるわ」
「何かしら…でも、守ることが先決ね」
カガミが向かう。
鉄の塊はカガミに落ちていく。そのまま彼女を潰すと思われたが、意に反してその塊は元来た方向に帰っていく。
「あれを追えば敵の位置が掴めるかも」
タマが高速で走る。
ツルギもそれを追いかけた。
「いた」
鉄の塊が落ちた場所には何百という死体と敵がいた。
「天上界の奴等だ、殺せ!」
リーダーらしき男が部下に命令する。
「タマは下っ端、私はボスよ!」
「いつも美味しい所だけ持っていくんだから」
「フフッ」
タマは不満を良いながらも下っ端を倒していく。
「ちょろいね。いつかは私とツルギが力を合わせないと勝てないぐらいの敵がいて欲しいわ」
ズーン…。
「ツルギ…?」
ツルギが倒れていた。しかし、すぐ立ち上がる。
だが、男がツルギより速く拳を繰り出し、ツルギを吹っ飛ばそうと…した…のだが。
「大丈夫、ツルギ?」
「サンキュ、カガミ」
カガミも後を追ってきていた。
自分の拳をくらった男は後ろに倒れていった。
静かになる。
「この辺の地下界軍はこいつが仕切っていたようね」
三人が安心しきったその時。
フォーーン…フォーーン…。
三人の頭の中に不思議な音が響く。
「何かしらこれ…?」
「解らない…けど、南に行った方が良さそうな気がする…。」
ツルギとタマが南に走っていく。
「ツルギ、タマ!」
カガミはその音を聞かなかったが、それはその音が「技」であることを示す。
「止めなきゃ…。」
カガミも二人の後を追った。
ツルギとタマは南に行くにつれ、音が大きくなるのを感じていた。まるで、そうそう、合ってるよ、と言うかのように。
だが、その音について行ったことが間違いだとすぐに知った。
「何これ…?」
たくさんの死体、地面に空く大きな穴。
「もう少し早く着いたら私達もこうなってた…?」
カガミが追いつく。
「良かった、無事だった…。」
「それより、この穴…。」
ツルギが見つめる。
「どうするべきかしら…?」
戦士としての精神が入れと囁く。
だが、人間としての本能がこの穴から逃げようとしている。
「一旦天上界王に報告しましょう。その後にどうするかは考えましょう」
三人が天上界王のいる所に向かうと、一人の男が寄ってきた。
「ツルギ、カガミ、タマ!何かあったか?」「大変です、N町が悲惨なことになっています!」
「本当か?」
「はい、この眼で確かめました」
「天上界王に報告してくる、ここで待っていてくれ」
男は走っていった。
しばらくすると、もう一人男が走っていった。何やら急いでおり、呼び止めても止まらなかった。
先程の男が来た。
「天上界王からの命だ。偵察隊としてその穴に入れ」
「はい」
三人が待ってましたと顔で示す。
彼女らは走っていった。
いつの間にか穴には扉が付いている。
「開くわね」
「ええ、開くわね」
中に入る。中はただの洞窟だった。
すると。
「キレーなネーチャン発見だァ!今夜一緒にデートしない?何もない洞窟だけど強い男はたぁくさんいるよォ!」
酔っぱらった風の男がやって来た。
「あなたがこの洞窟を作ったのですか?沢山人を殺して!」
「んにゃ、作ったのは俺の上司。俺は手伝っただけで…」
男の首が飛んだ。
ツルギが刃を出している。
ツルギは小刻みに震えていた。
それを察知したカガミが言った。
「先を進みましょう」
その後も、敵を倒しながら奥へと進んでいった。
十分余り経って。
「ここでストップだ」
数人目の番人が現れた。
「女に殺られるたぁ、精鋭部隊の名が汚れるなぁ!ま、精鋭部隊はこれが初仕事なんだけどよ」
「どいてください」
「やなこった」
「殺しますよ…今までの人と同じように!」
「俺ァ、さっきまでの奴等たァ違うよ。三人と言えど女には負けねぇ」
ツルギが刃をだす。
斬りかかるが、男は避ける。
すぐに立て直して斬りかかるが、男はツルギの上腕を掴んだ。
「ぐっ…!」
「離れねぇよ。所詮テメエらは女。どんなに鍛えようと男にゃ敵わねぇ」
すると、上腕を持ったまま男はツルギをタマの方に引きずり、
刺した。
「…え?」
タマが何も理解できない。
ツルギの刃が自分の左胸に突き刺さっている。
「…タマ!」
身動きの取れないツルギが涙声で名前を呼ぶ。
だが、タマはそのまま倒れた。
「次はそっちの奴だ」
ツルギの刃がカガミを向く。
「ちっ…!」
カガミが逃げる。
勿論、ツルギを守るために。
「逃がさねぇよ!」
スピードも、男の方が上だった。
グサッ!
ツルギの刃が、
ツルギに、
刺さった。
「ごめん…ツルギ…!逃げ切れなかった…!」
「面白い技…持ってんじゃん」
男が使い物にならなくなったツルギを捨てて、カガミを見つめる。
「勝てるかな?」
男が挑発してくる。
「それとも、自決かな?」
不気味に笑う。
「あ、今のは俺の隊長の受け売り」
カガミは、もう勝てないと悟った。
だから。
「ふぅーん…。戦う意思もないバカだったか…。」
地下界にて。
「地下界王」
「何だ」
「天上界から戦士が二界道に派遣されました。全員死にましたが」
「どのような奴だ」
「女が三人。全員かなりの特殊能力を持っている様子」
「私が生き返らせる」
「解りました」
側近の二人は話し合った。
「一度に三人の人を生き返らせるなんて狂気の沙汰だよな…。」
「地下界王だから出来ることだ。並大抵の人間なら一人を生き返らせるにも命を落とす。一度に数人を生き返らせ、かつ自分も生き残れる人なんて三世界に一握りだ」
「おいおい、地上界は未発達だぜ?皮肉にしかならん」
「言われればそうだな…。」
その後。
「普通、二界道で死んだ者は生き返らん。しかし、お前らは生きておる。それはこの私が命を削りお前達を助けたからだ。これからお前達は地下界の民として時が来るまで生きる。その間、私に忠誠を尽くせ。」
「誰がアンタなんかに…」
「やめな、タマ!」
「…解りました」
「よし、この言葉を心に焼き付けろ。
『お前達が従うのは自分の心ではない。
地下界王の命令のみ。
たとえ主が死のうとも。』
解ったな」
「…はい」
三種の神器、終了。




