地上との別れ(一)
病院にて。
「ハァッ、ハァッ…。たっ、猛くんの病室はどこですか?」
「212号室です」
「ありがとうございます!」
それを見ながら、受付は猛君の事が好きなんだな、と思った。
そして、その後ろを三人の男が通りすぎていった。
212号室:猛・佑樹にて。
「猛くん…。」
息だけが聞こえる部屋だった。二人眠っているが、その二人ともから生命力を感じられない。
「どうして…。」
ガララッ。
「あ…。」
三人が来た。
「あなた達も猛くんに?」
「それもあるけど…こいつも仲間だから」
全身が包帯で包まれているクラーケンを指差す。
「両方見舞いに来た。そんな状況じゃねーけど」
「そうですか…。」
少しの沈黙が続く。話を切り出したのは李伊奈だった。
「あの…少し聞いていいですか?」
「え?ああ…。」
「猛くんが言ってたんですよ…。リーナって友達がいたって…。」
三人が顔を見合わせる。
「その人の事を教えてくれませんか?」
「俺達もフェニックスから少し話を聞いたぐらいで、詳しくは解らないんだが、とても声が綺麗な奴だったらしい。でも、その声は聞いた者を殺す。」
「え…?」
「俺達みたいに超能力を持ってるんだ。ただ、そいつの場合はその力のせいで皆と隔離された。」
「じゃ、じゃあ、猛くんはどうやって会話したんですか?」
「あー…いや、何と言うか…」
説明していたペガサスが困惑する。
「俺達は聞いても大丈夫なんだ。君も。人種の違いで死んだり死ななかったり…。」
「そうですか…。」
気付くと、李伊奈は自分が泣いているのに気付いた。だが、前の三人は泣いていない。
「大人になると強いですね…。私…涙が止まらない…!」
「俺達は…昨日泣いたから。昨日もうだめだ、って医者に聞いたとき。もう…泣いてきたから」
「あ…。」
「泣かねぇ訳ねぇだろ…!仲間が二人死ぬのに…!」
「そう…ですよね…。」
家にて。
「アンタに俺は殺せねぇよ」
サイゴが自信満々に言う。
だが、どんぶりうなぎは何か思いにふけっていた。
「昨日…夢を見た…。」
「はァ?遺言が夢の話かぁ?」
「昔の…夢を…。」
「うだうだ言ってんじゃねぇよ!」
「何でそんなものを見たか解らなかった…。でも…今解った」
「何だよ」
「どんぶりうなぎはお前を殺す切り札を持っている。それを今使う。」
「何だよ。ただのハッタリだろ?言ってみろよ」
「お前は地下界王と契約を結んでいる。永遠に地下界で生きると。」
「そーだよ」
「ならば、地下界王が死ねばお前は死ぬ」
「正解。だがな、お前程度に地下界王は殺せない。それに、殺せるとしても今から地下界に行って、地下界王のいる所に行って、殺す間に俺はアイツらを殺ってるぜ?」
「生き返っても傲慢さは変わらんな…。
まあ、そこで見ているがいい。
我が方法を!」
「どーんと見といてやりますよっ!」
二人が対峙する。
どんぶりうなぎが何か唱え始めた。
「この命、あの五人に捧げる…フェニックス、クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクに…。」
どんぶりうなぎから白い蒸気の様なものが昇り始めた。
「命の呪文であの二人を生き返らせ、五人を強くするつもりか?だが、一度に五人もの人に呪文を使えばお前が死ぬのは必ず。まさか、切り札があの五人とは言うまいな?」
「勿論違う。お前は何も聞いておらんようだが、どんぶりうなぎと地下界王は…呪い火で結ばれている」
「…何の話だ」
「千年前、どんぶりうなぎはお前を突破した後、地下界王と戦った。最も、勝敗はつけられなかったが。その時、呪い火を地下界王が使ったので守った」
「…う…嘘だ…!」
「真実だ。つまり、この技でどんぶりうなぎが力を使い果たせば、地下界王が死に、お前も死ぬ」
「や…やめろ!」
「そろ…そろ…だな」
どんぶりうなぎは死んだ。そして、すぐにサイゴも死んだ。
プッ、プッ、プッ、プッ…。
二人が繋がっている機械から音が鳴る。
「ちょ、え?こ、これって何の音?」
「医療ドラマとかでよくあるヤツですよね?猛くんのももう一人のも鳴ってますよ!?」
「これ、死ぬの?生き返るの?」
「ナースコール!」
「どこだよ!?」
ガララッ。
「静かにしてくださいーって、な、何ですか?」
「こいつらの何か鳴り始めてんだよ!どういうことだよ!?」
「へ?あぁ、ホントだ!医師呼んできます!」
看護師が走っていった。
だが。
「やべぇのはコイツら二人だけじゃねぇみたいだぞ…。」
「ど、どうしたんですか三人とも!?」
「体が疼く…新しい技を貰える時とはレベルが違う…!」
三人の息が激しくなる。それとともに機械音もテンポが早くなる。
「しっかりしてください!」
李伊奈が混乱しながらも自分の出来ることを探すが、見つからない。
医者が来た。




