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五人の覇者  作者: コウモリ
お金稼ぎ
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お金稼ぎ(四)

クラーケンの体に炎が回る。

「クラーケン!大丈夫かぁぁぁ!!」

サンガーが結界に音を消されないよう声を張り上げる。それに気付いたクラーケンも、

「はい!今のところは!」

大声で返した。

そうは言ってもクラーケンは既に焼け始めている。だが、フェニックスの作戦を成功させるため、我慢するほか無かった。

「早く倒してくださいよ、フェニックス君…!」






カメラマンは既にカメラで撮影していなかった。

何故か。

怯えた訳じゃない。こんな事で怯えるような肝でカメラマンにはなれない。

では、何故か。

撮っても無駄だと悟ったのだ。辺りは一面の炎。撮ってもフレーズには赤しかない。カメラなんか撮ってる暇があったら、一生に二度も無いだろうこの光景を自分の目に焼き付けた方が良いと判断した。






「まだか…?」

フェニックスは炎の中に揺らめく恐竜のシルエットを睨む。テラフレアをぶっ続けで出し続けられるほど体力は無い。いや、それよりも心配なのはクラーケンだ。無防備で自分の炎をくらい続けるクラーケンが心配だった。だが、ここでは止められない。攻撃したなら殺すまでやらないと、傷負いのモンスターは何を仕出かすか解らない。

「耐えろよ…クラーケン…!」






ペガサスは藤巻を庇っていた。極悪非道の藤巻さえも一つ心配事がある。

「ペガサスさん」

「どうした」

「クラーケンさんは回復魔法を使えるのでしょうか?」

「使えるが…」

「それは、自分にも使えるのですか?」

「それが解らないから俺様達も必死で心配してんだよ…。」






バジリスクは結界、シールドを張りながらも千里の眼を使い続けていた。モンスターが死ねば他の全員にいち早く伝えるためだ。無論、クラーケンのため。そして、その時が来た。

「死んだ…。

全員聞けぇぇ!恐竜は死んだぞォ!」

炎が消える。中から黒焦げになった恐竜の死体と膝をつくフェニックスが現れた。見たようではただの疲労だ。次々にシールド、結界が消える。無傷の数人が現れた。

一人を除いて。

「くっ、クラーケン!しっかりしろ!藤巻、救急車呼べ!すぐに!」

全身火傷。息はあるものの生命力を感じることが出来ない。瀕死だ。

「出来ませんね」

「え?ふ、藤巻?」

「残念ですが、このモンスター退治をテレビカメラに収めることができませんでしたので、救急車は呼べませんね」

「は?ふざけんなよ、俺達はケータイ持ってねぇんだよ、さっさと呼べよ!おい、誰でもいい、カメラ、お前が呼べ!」

カメラの男がケータイを取り出す。

だが。

ダァーン。

「…え?じゅ、銃?」

カメラの男のケータイは跡形もなく消え去り、その代わりに藤巻の右手に拳銃が握られていた。

「呼ぶなと言っただろ。次なんかしようとしたら殺すぞ?」

「藤巻テメエどういうつもりだ!?カメラがどうとか関係ねーだろ、さっさと救急車呼べ!」

ペガサスが叫ぶ。が、言葉の代わりに銃口がペガサスに向いた。

「ごちゃごちゃうるさいですね。撃ちますよ。あ、でも、一人は絶対撃つんですけどね」

「…え?」

銃口がある人に向き、

ダァーン…。

血しぶきが舞った。

「フェニックス!どうしてだよ!?」

「彼がカメラに動画を収めさせなかった張本人だからですよ」

藤巻は狂っていた。だから、銃口をフェニックスに向けたままだった。

「…。ギ…ギガポイズン!」

「うっ!ぐあ、ぐあああああああああああああああ」






ペガサスが初めて人を殺した日だった。






天上界にて。

「ノア」

「はい」

「あの塗り薬を持って地上に行け」

「五人に何か」

「フェニックスとクラーケンが死にかけている」

「解りました。では、すぐに」

ノアが薬をもって家から出ようとすると、ドアの前に一人の男が現れた。同時に、薬が跡形もなく消え去った。

「あなたは…!私が殺したはず…!」

「そんな事もあったな…。」

「…あっ…。」

ノアが消えた。

「ノア!き、貴様は!」

「地下界精鋭部隊隊長、サイゴ」

「ノアが殺したのでは…!」

キング・ジャイアントが疑問を抱く。

「残念なことに、地下界王が自らの命を削って生き返らせたんだよ。」

「なっ…!」

「これで地上界の奴等を助けに行けねぇなあ!薬はもう無いもんなぁ!もう、俺が行って殺してきてやろうか?」

「やめろ!」

キング・ジャイアントがサイゴの行く手を塞ぐ。

「邪魔すんの…?」






「おいカメラ!藤巻いねぇんだからさっさと救急車呼べ!二台だよ!」

「はっ、はい!」

マイクだった男が恐る恐る話しかける。

「あ…あの、三台じゃないんですか…?」

ペガサスが睨むと、

「黙れ。殺すぞ」

「はっ、はい…。」











次の日、ペガサス、サンガー、バジリスクは家にいた。

トントン。

「…どうぞ」

「列島テレビの神崎です。この度は部下が大変申し訳ない…」

「謝って済むことかよ」

「十分承知しております。しかし、我々に出来ることは謝罪以外ありませんので…。また、番組の方は引き続き…」

バン!

ペガサスが机を叩く。

「それ所じゃねぇんだよ…!仲間二人死にかかってんだよ!」


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