義務教育(二)
昼休み。
「猛くん」
「なに」
「昼休み用事は?」
「登校初日で行くアテがあると思うか?」
「…………。」
「で、何か」
「テニスしようよ」
「テニスだァ?俺はラケットなんか持ってねーぞ」
「用具倉庫で借りれるよ」
「て言うか、何でテニス」
「嫌い?」
「嫌いも何も、やった事無い」
「やろうよ」
「何で」
「私が部活に入っているから」
「じゃあ、俺がバスケ部に入ったら一緒にバスケをするのか?」
「やってもいいよ」
「変な奴だな…ま、いいぜ、たまにゃ坊っちゃんになるか」
因みに、朝からフェニックスが李伊奈と話しているのを見ている男子どもは、
「いいなぁ、猛は。初日でクラス一の美少女ゲットしたよ」
「やっぱ覇者の影響?」
「でも、李伊奈は小学生の頃は人の本質を見て近づくべきか否か決めてたらしいぜ?スキルは関係ないとか」
「じゃあ、猛は性格も良いのか?」
「さあ」
「行くよ、」
パン!
「せやっ!」
ボン!
「おい、俺のボンって鳴ったぞ!?」
「当て方が悪いんだよ。」
パン!
「基礎を教えろーー!!」
ベイン!
「あっ、後ろに飛んでったぞ…。」
ゴン。
「イテーーー!」
「おう、すまんすまん、俺テニス初めてでよ」
フェニックスがタメ口で話すが、相手は明らかに先輩である。
「猛くん、先輩には敬語使わなきゃ」
「あん?そう言えば、俺最近年上としか会ってないし、そいつらと普通にタメ口だかんな…。」
「テメエ…!ぶっ殺す!」
ボールを当てられた先輩がキレる。だが、
「それ、俺に言ってんの…?」
フェニックスが手から炎を出す。
「あ…。さーせん…。」
テニスコートにいた人達がざわついた。「生フェニックスだぁ」と喜ぶ者、「俺達死ぬんじゃね?」と身を案ずる者…。
「猛くん、猛くん!」
李伊奈が呼んでいた。
「あ、すまん。なに?」
「続きしようよ」
「おう」
五時限目、理科。移動教室。
「さっ、猛くん理科室行こ」
「おう」
聞いたところによると、今日は酸化銅に関する実験らしい。無論、フェニックスは酸化銅の意味は理解していない。
理科室では四人一組の班を作るらしく、三人だった班に入ることになった。李伊奈は既に他の班だった。
「よろしく」
「俺は御門。」
「ミカドか。」
「私は遥。」
「ハルカ」
「アタシは百合。」
「ユリ」
自己紹介を済ませ、先生の説明を聞いた。
「ガスバーナーに火を付けるよ。」
遥がマッチを持って言う。マッチ箱を覗くと、三本マッチが入っていた。
「三本」
「そう。全部失敗したら班員全員正座の罰だよ」
「ふーん」
フェニックスは、いざとなれば俺が燃やせば良いかと思っていた。それに、三本も失敗はしないだろう、と。
だが。
シュッ、バキッ。
シュッ、バキッ。
シュッ、バキッ。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
「…………。正座だな」
御門が口を開いた。
「ごめんなさい。猛君来た初日なのに」
遥が謝る。だが、フェニックスは、
「俺を誰だと心得る。火鳥フェニックスだぞ」
「え?ああ、まさか!?」
「そのまさかだ。このバーナー、俺が火を付けるッ!」
「遥、ガスバーナーを黒焦げにしたらどういう罰だっけ?」
「さあ、前代未聞だね。」
「猛君、俺は正座が良かったな…。」
「申し訳ございません」
「うさぎ跳三百回だよ」
後ろに先生がいた。
六時限目、学活。
「えー、折角覇者が一人いるので、今日の学活は質疑応答にしようと思う。」
「え゛」
「また、技も披露してもらうために、運動場でやることになった。」
「い゛」
「その事を職員室で言ったら、じゃあウチのクラスも、ウチも、という感じで全学年全クラスで合同学活をすることになった。」
「う゛」
と言うわけで。
現在フェニックスは皆と少し離れた場所で結界を描いている。
「…これが結界と言って…敵と戦うときに周囲を巻き込まないようにします…。」
「おーっ!」
「僕は五つ技を持っていて…フレア、メガフレア、ギガフレア、テラフレア、精霊技です…。テラフレアは結界張っても外側に影響が出るので、他の四つを披露します…。フレア!」
フェニックスから炎が出てくる。この量でも学校ぐらい全焼出来るのだが、普段ギガフレア、テラフレアしか使わないフェニックスに取ってはあまり迫力がなかった。だが。
「おーっ!」
「マジで炎出た!」
「俺ニュースの奴はCGかと思ってた!」
フェニックスが次を繰り出す。
「メガフレア!」
この程度の炎ならこの町を焼ききれるだろう。
「すげぇ…。」
「味方で良かったよな…!」
大半が圧倒され、絶句して、喋れるのは一部の男子だけだ。だが、フェニックスの芸はまだ終わらない。
「ギガフレア!」
結界の中が赤一色になる。
「…………。」
「…………。」
誰も喋らない。全員、考えていることは同じである。
(テラフレアって…。)
「じゃ、皆単調な炎で退屈してたと思うから、精霊技を出します。火の精霊よ集まれ、そしてサラマンダーとなれ!」
大トカゲが現れる。身体中に火をまとったそのトカゲは結界の中で唸った。
「こいつは俺が操っています。身体中にまとっている炎を消すことだって出来ます。」
炎が消え、中からただの大トカゲが現れた。結界中をその体で埋め尽くすほどでかい。
「誰か…三十人ぐらい…乗ってみますか?」
爆弾発言。
「大丈夫、俺が操っているから危害は加えない」
フェニックスが結界を消す。サラマンダーを運動場に出した。
「俺…乗ってみてぇな…。」
御門だった。
「じゃあ、前来て。他には?」
「お…俺も…!」
「アタシも乗る!」
総勢、二十七名(フェニックス込み)。リーナはさすがにいなかった。
「出発!」
二十七人を乗せたサラマンダーが運動場を駆ける。全員がサラマンダーの鱗に掴まっている。
「キャーッ!」
「うおーっ、すげーっ!」
フェニックスは乗れなかった人も楽しませれるよう、地面に座ってる人達の上をジャンプさせたりした。
「ひいぃい!」
「うわっ!」
約七分間。サラマンダーは二十七人を乗せて駆け回った。
はっきり言って質問はクラーケン達が報道陣からされたもの、フェニックスが朝されたものとほぼ同じだった。それでも、あっという間の五十分だった。
教室に帰ると、リーナが話しかけてきた。
「猛くん、部活は?」
「特に何も」
「テニス部入ろうよ」
「昼間で懲りた」
「む…。他にアテは?」
「そうだな…。普段から運動(モンスター退治)はしてるから運動部じゃ無くて良いかな…。文化部でも漁ってみるか」
かくして、フェニックスの放課後が始まる。




