過去の回想 ペガサス編
夕方。二十二ページを見終わっている。
「ペガサスさん、丸一日半寝てますよ。大丈夫なんでしょうか」
「引きこもり『モード』って言ってんだ、起きるときにゃあ起きるだろ」
「大人ですねぇ、フェニックス君は」
「そのネタやめろ、そろそろ飽きたぞ」
これはクラーケン流の話の聞き出し方だった。しつこく聞けばいつかは帰ってくる。はず。
「さすがに四人で地図囲むと早いな。もう二十三ページだ」
フェニックスがページをめくる。
「コーヒーでもいれようか」
「いいですね、僕はブラックで」
「俺もブラック」
「俺はいらん」
クラーケンとサンガーが頼むのに対して、フェニックスは拒んだ。
「いらんのか、フェニックス?」
「コーヒー好きじゃない」
「フッ、そういう所は子供ですね」
「そのネタはやめんか、俺はどんな俺でも十三歳だ」
「はい」
トントン。
「どうぞ、ペガサスの親父さん」
「フ、フェニックス君、どうして解るんですか?」
「クラーケン、バジリスク、サンガーの親が来たんだ。次はペガサスだろ」
「失礼します」
「バジリスク君、ペガサスを呼んできなさい」
「へいへい、ペガサス、親父さんだ」
ペガサスが起きてくる。
「親父…!」
「春哉」
「か、帰れよ…帰れよ!」
父親が圧倒されてドアの方に向かう。
「フェニックス君、君の出番ですよ」
「もう俺飽きた。さあ、三人よ、我が教えた事を今発揮するときだ」
「都合よく、そして格好よく仕事渡さないで下さい」
「格好よくなってた?ならいいけど」
「わしは格好いいとは思わんが…」
ペガサス、引きこもりモード再発。
「ペガサスさん!」
「ペガサス!」
「ペガサス!」
「…………。」
「意地張りますね…!」
「敵は手強いな…。」
「仕方ない、ここはわしが南海時代に鍛えたこの拳で…」
「無理矢理起こすのではなく、我々がそうだったように自分から目覚めなきゃ駄目です」
「わしはフェニックスに起こされたような気が…。」
二人が言い合ってる間に、サンガーが「ペガサス」と唱え続ける。
「ペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサスペガサス」
「うっせーぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!サンガーテメエ朝十時の癖に朝九時の俺様を起こそうとすんじゃねえよ!」
「お前今日一日中寝てるだろ!」
「お前だって昼まで寝てたんだろ!?」
「ぐっ…」
「俺様の特性を教えてやろうか?俺様が寝ている間に周りの人が喋ってるとそれが夢に出てくるんだよ!」
「す、すごい特性ですね…。」
クラーケンが驚く。
「とにかく、俺様を起こすな」
「でも、今逃げたらもうお父さんに会えねーかも知れねーぞ!現に俺も…」
「現に俺もフェニックスに言われなかったらそうなってたとか言いたいんだろ?俺様の特性ナメんな!」
「ぐおっ…!」
サンガーが精神的な攻撃により血をはく。
「サンガーさん、何で血!?」
「凡人時代、退屈な人生にストレスを溜めていた俺にとって、精神攻撃以上の効果をあげる技はないッ!」
「脆い大人ですね…。」
久しぶりにペガサスのターン。
「大体俺様の親来るとき家の外にレンタカー止まってただろ!?」
「レンタカーかどうかは知らんが車は止まっていたぞ…。」
「やはりな…。あの親父、家はこの近くにはない。と言うかめっちゃ遠い。どうせ飛行機にでも乗ってきたんだろうよ!どうせ今頃飛行機の中さ!でも俺様達に飛行機に乗る金はない。俺様は父を訪ねて三千里も歩きたかねーんだよぉ!」
「何なんだ…何なんだこいつは…。」
ペガサスの弁解にサンガーが圧倒される。
「解ったなら俺様を寝かせろ」
ペガサスがまた寝ようとしたその時。
バンッ!
クラーケンが近くの机を叩いた。
「ク…クラーケン?」
「調子のってんじゃありませんよ、ペガサスさん…。」
「あん?やんのかテメエ…。」
「やってやりますよ…!僕が負けたらペガサスさん、あなたは父親に会わなくても結構。でも。あなたが負けたら父親の家まで『歩いて』下さい。」
「受けてたつさ…。」
二人の喧嘩が始まった。
「決着…ついたようだな」
「ああ」
バジリスクとサンガーが二人を見つめる。
「クソッ、俺様が負けるなんて…!」
「泣く暇があったら歩いてください」
クラーケンが倒れているペガサスを見下す。
「そんぐらいにしとけや、クラーケン!」
気付けばフェニックスがそばにいた。
「しかし…」
「歩く必要はねぇ。入ってきな」
フェニックスの部屋からペガサスの父が出てきた。
「春哉…。」
「親父…どうして?」
「この子の部屋に隠れていたのだ…。『このままでいいのか』って言われてな…。子供とは思えないよ…。」
「すまねぇ、親父…。すまねぇ…。」




