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五人の覇者  作者: コウモリ
過去の回想
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過去の回想 バジリスク編

 クラーケンに説教してから五時間。深夜である。フェニックスは頑張って地図を見ていた。あれから五ページ進んだ。少しピッチが上がっている。何故かと言うと、クラーケンも手伝っているからだ。見開き一ページの右がフェニックス、左がクラーケン。クラーケンはまだ慣れていないので、少し遅いが。


「五時間で五ページ…。かなりキツいですね…。」

「何を言う、これでも早い方だぞ。」

「はあ、残りの三人も協力してくれれば…。」


 トントン。


「こんな時間に客か?どうぞ」


 ガチャ。


「剛士郎!剛士郎!」

「ゴウシロウ?」


 体操座りをやめて、寝ていたバジリスクが目を覚ました。


「どうした、親父。ん、親父?親父がいるのか?」

「剛士郎!」

「お、親父!どうしてここに?」

「ったく、クラーケンの母さんの次はバジリスクの父さんかよ…。」






「申し遅れた、わしは剛士郎の父、鋼四郎だ」

「ほう、コウシロウの息子がゴウシロウですか」

「因みに、わしの兄は鋼一郎、鋼二郎、鋼三郎だ」

「ガッチガチの兄弟ですね。では、俺達は仕事があるんでゆっくり『静かに』親子で話してください」

「行きますか、フェニックス君」


 二人が去ると、鋼四郎は剛士郎を殴った。

 ドゴン!


「親父!」

「貴様と言う奴は!勝手に家出したと思ったら勝手にトラックなんかに轢かれおって!許さん!」


 ガチャ!


「貴様ら、『静かに』話せと言ったよな?」

「すまん、フェニックス。親父、外に出て話そう」

「解った」






「親父があんなんだから家出たんだろうが!!」


 ドゴーン!


「貴様もその口に入ったんだろ!?しかも敵の組に入りやがって!」

「貴様の所よりはましだ!ウチのボスは町中で発砲なんかしなかった!」

「だから撃たれたんだろォが!」

外にいても、二人の声はフェニックス、クラーケンにまで届いた。

「不吉な話をしてますね…。」

「親子揃って暴力団関係だな…。しかも敵対してるらしい…。」


 すると、ドアが不吉な音をたてた。

 ガンガン!ドンドン!


「オラァ、剛士郎!貴様生きてんなら組に顔ぐらいだせやァ!先月の納金溜めてんだろうが!」

「春日組だァ!剛士郎テメエがボコったやつのツケ払いに来たぞ!」

「んだぁ、テメエら春日か?」

「貴様ら南海かよ!」


 うわあああああああああああああと外で二組のケンカが始まった。






「お父さん、あなたが所属するのが春日組ですね?」

「そうだ」

「バジリスクさん、あなたが所属するのが南海組ですね?」

「ああ」


 クラーケンが喧嘩を仲裁している。


「なら、二組を代表してバジリスクさんと鋼四郎さんがサシで勝負したらどうですか?異論の方は」


 一人の男が手をあげた。


「俺ァ春日の者だが、剛士郎は今『チカラ』持ってんだろ?なら、鋼四郎が不利じゃないか?」

「ご安心を、今我々はその『チカラ』を失っておりますので。他に異論はありませんね?では、レディ、ゴー!」


 クラーケンの合図で二人が動く。二人のポケットから銃が…


「ちょっと待ったァ!!」


 フェニックスが突っ込む。


「二人とも、家ン中で銃はやめろ。て言うか捨てろ。拳で決めんか」


 二人が銃を外に投げ捨て、殴り合いを始めた。


「ウラァァァァ!」

「ゼヤァァァァ!」


 二人の気合いと歓声が家を包む。


「いいんですか、これじゃ集中して地図見れませんよ?」

「今見る気力がない」

「そうですか…。」






 三時間後。バジリスクのノックアウトで鋼四郎率いる春日組が勝った。春日組も、南海組も、鋼四郎、バジリスクを残して帰っていった。


「クソッ、クソォ!」

「剛士郎、貴様がわしに勝てるわけがなかろう」

「黙れ!」


 バジリスクが床を叩く。

 ドン!ドン!


「バジリスクさん、そろそろやめましょう。我々は覇者です。あんな組抜けて、お父様と仲良くしてください。」

「クラーケン、族抜けなんか出来るわけねぇだろ…!」

「やらなきゃダメだろ。」


 フェニックスが口を挟む。


「出来る出来ないなんてカンケーねぇだろ。誰かの言葉パクったけどさ。」


 フェニックスは鼻で笑いながらそう言った。


「ま、お前に任せるよ。俺の事じゃねえ。」






「僕の時と違ってアツくならないんですね。」

「気力がない」

「本当に?」

「…………。」


 フェニックスが黙る。


「何か訳があるんじゃないんですか?」

「覇者なのに暴力団員なんて恥ずかしくて俺なら凹むからな…。そっとしといた方がいいと思ってな」

「ホント、フェニックス君は最年少の分際で一番大人ですね。」

「ケッ、テメエらが子供なだけじゃねえのか?」


 バジリスクが部屋に入ってくる。


「決めたのかよ」

「ああ。もう南海には戻んねえ。親父とも仲良くするよ…。」

「まっ、それがいいだろうな!」






 朝方になって。


「フェニックス君、君が大人な対応をしているのはどうしてですか?確かに、僕たちは子供っぽいところがありますが、それでも君は普通には見えない。」

「まあ、気が向いたら話すさ…。」


 現時点で、地図の十二ページを見終わっている。

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