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五人の覇者  作者: コウモリ
短編1
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12/147

クラーケンの恋人

短編。クラーケンに彼女ができる

 家にて。


「今から、五覇者会議を行う」

「いきなりなんだよ、ペガサス?」

「議題は、『何も起こらない』だ」

「どういう意味だ?」

「初めてのお使い以来、この一週間モンスターが現れたことはない」

「平和でいいんじゃないんですか」

「あの日はあれだけ騒ぎ立てたマスコミも、それ以来動きがない」

「時事問題なんてそんなもんだろ」

「ファンレターの一通も来ない」

「しゃあねえだろ。イケメンっつったらクラーケンぐらいだし」

「やめてくださいよ、イケメンなんかじゃありませんよ」

「でも、求婚ぐらいはされたことあるだろ?」

「ま、まあ…。」


 トントン。


「え、客?」

「どうぞー」


 バタン!熟年女性が入ってくる。


「佑樹、佑樹なのね!?」

「は、母上!」

「えぇ!?クラーケンのかーちゃん?」


 パチン!


「あんたって子は!」

「い、いや、クラーケン母さん、会って早々ビンタは…。」

「あんたの『あの事件』のせいで、結婚話が全部無くなったじゃない!一人息子なのに、一族が絶えてしまうわ!勘当されたくなかったら、明後日までに結婚相手連れてきなさい!」

「そんな、無茶ですよ母上!」


 ズカズカズカ、バタン!


「…………。」






「聞かせてくれ、『あの事件』の事を。そうしたら俺達にも協力できることが見つかるかもしれない。」

「解りました…。」






「佑樹、結婚相手は決めたの!?」

「まだです、母上…。」


 現在クラーケンこと佑樹は、十五人の女性から結婚相手を選んでいた。何故こんな事をせねばならなくなったかと言うと、佑樹が今まで彼女を作ったことがないからだ。イケメンだから、佑樹は告白された事が無いわけではない。と言うより、人より多いだろう。それなのに何故かと言うと、佑樹が臆病で告白されてもイエスと言えないのだ。そして、遂に成人し、一族の絶えを恐れた母が部屋に閉じ込めて妻を選ばせているのだ。






「そして、極度の精神不安定に陥り、発狂し、名簿をビリビリに破いて暖炉で燃やした、と言うわけですね…。」

「悲しい事件だな…。」

「皆さん、名案はありますでしょうか?」

「今の話には関係ないが、一つ思い付いたぞ。」

「本当ですか、フェニックス君!?」

「俺達四人の誰かが女装する」

「…………。」

「…………。」

「…………。」

「僕は…構いませんけど」

「構わんのか、クラーケン!?」

「ええ、どうせその場しのぎですし」

「そ、そうか…。なら、誰がやる?」


 フェニックスが質問に答える。


「そりゃあ、ジャンケンだろ。いくぜ、じゃーん、けーん、ぽんっ!」






「…………。」

「…………。」

「言い出しっぺが負けるとは、この事だな…。」

「じゃあ、フェニックス君、よろしくお願いします…。」

「いやああああああああああああ」「決まったことに男がウダウダ言うな!」

「お願いしますよ、フェニックス君!」

「助けてリーナァァァァァァァァ!」

「ウチ、金ならありますよ!?」






「花柄のワンピースかしら、水玉かしら?ね、どう思う、クラーケンさん?」

「ど…どちらも似合ってますよ…。」

「カツラは金かなあ、この際、黒髪でもいいか」

「ハッハッハ、金が入ると俄然やる気だなー」

「フェニックス、俺達四人で買い出し行ってくるからそのまま女装続けろよー」

「はーい」






「帰ったぞフェニックスーって、あいつ、女の子代役とったな。あのシルエットは奴じゃない」


 四人が帰ると、ソファに知らない女の子が座っていた。


「君、フェニックスの代役かい?」


 女の子がこちらを向く。それは眩しいほどの美しさで、ペガサス、サンガー、バジリスクのハートを撃ち抜いた。


「やあ、君名前は?」

「可愛いね、フェニックスとは友達かい?」

「クラーケンに君はもったいない、俺と結婚しよう…。」

(あれ…フェニックス君ですよね?)


 ただ一人、クラーケンだけが理性を保っていた。


「名前は…………フェニックスじゃ、テラフレア!!」

「はぁうっ!」


 フェニックスが黒焦げの三人を蹴りまくる。


「なぁ〜に、同僚に萌えてんだよ!あん?」


 ガスッ、ガスッ。


「痛っ、やめっ、だってホントに可愛いんだよ…。」

「男に向かって可愛いたあ、いい度胸じゃねーか!」


 ガスッ、ガスッ。


「フェニックス君、それぐらいでやめときましょう…。それより、その女装はあなたと同年代の女の子ですよね…?」

「そうだけど?」

「それだと、約十歳差で僕がロリコンになるのですが…。」

「あ」


 すると、燃えている(萌えている)ペガサスが口をはさんだ。


「別に、それでもいいんじゃないの」

「…………。」

「…………。」

「僕も手伝いますよ、フェニックス君…。」

「火は消すなよ」

「大丈夫です、心臓にアイスレーザーを当てて、寒暖の急激な差による心配停止を…」

「ぬおおおおおおテメエの失言のせいだ、ペガサス!」

「いやああああああああああああ」






 と言うわけで。と、言いたいところだが、今クラーケンとフェニックスは手を繋いで歩いている。いや、クラーケンと「紅子さん」と言うべきだろうか。そう、フェニックスの女姿、「紅子さん」。


「フェニ…いえ、紅子さん。あれが僕の家ですよ…。」

「すげ…いえ、素晴らしい豪邸ですね、クラーケンさん…。」


 そして、その二人の後ろを三人が笑いをこらえて歩く。


「佑樹。待ってたわよ。その子が結婚相手ね。名前は?」

「フェニ…子です」

「フェニ子さん?」

「いえ、紅子です」

「そう、よろしくね。お茶でもいれましょうか」






「そう言えば、付き添いの三人は佑樹と同居している人よね?」

「は、はい母上。」

「一人足りないんじゃなくて?ほら、あの小さい子」

ギクゥ!

「は、母上、フェニックス君は高熱のため家で休んでおります」

「そう」


 第一関門は乗りきった。次は、


「佑樹」

「何でしょうか、母上?」

「本当にその子は結婚相手なの?」

「いい…今更何をおっしゃるんですか…紅子さんは僕の結婚相手ですよ…?」

「それにしては若すぎる気がするけど」

「は…あはは…。」


 次は紅子さんに眼が向いた。


「紅子さん」

「はっ、はいぃ!」

「本当に佑樹と結婚してよろしいの?」

「も、もちろんですよ…。」

「まだ若いようだけど」

「そ、そうですが、私は結婚できる年齢、十八歳になったら佑樹さんと結婚します」

「女性は十六歳よ」

「では十六歳に…。」


 危なかった、と紅子さんは心から思った。


「紅子さん。あなた、年齢に関して男性の知識を持っていたようだけど、あなたもしかして…。」

「そ、そんなわけないじゃないですかぁ」

「私はまだ何も言ってないわよ」

「すみません」

「あなたもしかして、男兄弟が多いんじゃなくて?」

「え、そんなこと?」


 予想外の質問に紅子さんは戸惑う。


「そんなことだけど?」

「私は男兄弟が多かった…?です」

「そう」

「母上、そろそろおいとましますよ…。お茶も飲みましたし」

「あら、もう帰るの」


 すると、バジリスクが


「不味いぞクラーケン!敵が来てるッ!」

「何ですって?母上、紅子さん、ここで待っていてください!」

「解ったわ」

「解りました」


 四人は外に出ていった。






「爺たち。この部屋を私と紅子さんだけにしなさい」

「かしこまりました」

「ど…どうかされましたか?」


 外で敵と対峙している四人を見ていた紅子さんは、クラーケンの母の行動に疑問を抱いた。


「あなたも行かなきゃいけないのではなくて、フェニックスさん」

「…ばれてましたか」


 そう言うと、紅子さんは女装を解き、フェニックスに戻った。


「あなた達が来たときから解ってましたよ。それに息子は嘘が苦手でね」

「おばさん。クラーケンは結婚なんかするようなガラじゃない。勘当は許してやってくんねーか…。」

「いい友達を持ったわね、佑樹も…。いいわ、勘当は許してあげましょう。ただ、一つ条件があります」

「何ですか?」

「先程出した爺は佑樹が生まれた時から佑樹を可愛がっていたわ。私以上と言っていいほど。だから、あの子が結婚して一番喜ぶのは爺。彼の前では、紅子さんのままでいてあげて」

「…解りました。では、行ってくるぜ、おばさん!」


 フェニックスは火炎の翼を出すと、クラーケン達のところまで急いだ。






 クラーケン達はモンスターと対峙していた。


「今日は大勢だな」


 ペガサスが話を切り出す。


「ああ。一週間話し合った結果、十人で一斉に攻撃することにした。」

「ぷっ、一週間考えた結果が十人で一斉攻撃かよ!」

「なっ!」

「行くぜ!水草雷土奥義!」

『主は火の覇者』

「え゛」

「フェニックス君!どうしてここに!?」


 クラーケンの問いにニヤリと笑うと、


「おばさんだけにばらした。許してくれたぜ」


 と、言った。


「まあ、いい、行くぜ、出でよ火鳥!」


 火鳥がモンスター達に炎を吐くが、モンスターはギリギリで耐えた。


「な、総力奥義を耐えたァ?どうやって倒すんだよ!?」


 すると、


「火の精霊よ集まれ、そして我が力となれ!テラフレア!」





「高熱を出しているのにありがとう、フェニックスさん」

「いえ、どうも。それでは私はこの辺で」


 フェニックスは帰るふりをして、爺が見えないところで女装をした。


「あ、紅子さん」

「クラーケンさん、大変格好良かったですよ」

「それはどうも」

「うぅ、遂に佑樹様も彼女が…。爺感激でございます…。」

「本当ね、爺」


 号泣する爺と、それを見守る六人の男女がいた。

クラーケンの恋人、終了。

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