第13話 ユーヤ、スキル進化を狙う!?
ソーヤの劇的なスキル進化から一夜明けた、ウェーノ家のリビング。
そこには、朝から凄まじいまでの怨念の視線が渦巻いていた。
ジーーーーーーーーー……。
「……なぁユーヤ。さっきから俺の顔を穴が開くほど睨みつけて、朝食のトーストを恨めしそうにかじるの、やめてくれない?」
耐えかねたソーヤが苦笑いするが、ユーヤは机にベタァッと頬を押し付けたまま、呪詛のような声を漏らす。
「ずるい……兄ちゃんずるいよ……。“無から創造”って、もうラノベの主人公じゃん! 完全にチートの極みじゃん! 僕の《ゲーマー》だって、毎日ログインボーナス引いたりスライム出したりして頑張ってるのに、なんで進化しないのさ! 僕だってかっこよく進化したいぃぃぃ!」
ジタバタとソファでのたうち回る次男坊を見て、トーヤがコーヒーを飲みながら呆れたようにツッコミを入れた。
「ユーヤ。スキルの進化というものは、そんな風に無理に狙ってできるものじゃないだろう。ソーヤだって、色々と悩んだ末のブレイクスルーだったんだから……。」
「えぇぇぇぇ、そんなの納得いかない! ゲームの仕様なら、特定の行動を繰り返せば熟練度が溜まって進化イベントが発生するはずなんだよ! よし、決めた。僕は今日、何が何でもスキルを限界突破させてみせる!」
ここから、ユーヤによる涙ぐましい(そして非常に迷惑な)迷走劇が幕を開けた。
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【作戦その1:とりあえずRPGっぽくレベル上げをすれば進化する説】
「いくぞ! 経験値稼ぎだ! スライム召喚! 」
リビングのど真ん中でユーヤが叫ぶと、ぽよん、とお馴染みの最弱モンスターが現れた。ユーヤは物置きから持ってきた古びた木の棒を構え、果敢に突撃する。
「くらえ、僕の渾身の一撃ぃぃ!」
ベシッ、と小気味いい音が響いたが、スライムの驚異的な弾力により、木の棒は見事に弾き返された。その反動で、棒の先端がユーヤ自身の額を直撃する。
「いったぁぁぁぁい!?」
「……スライム相手に自爆して負けるって、斬新なレベル上げだな。」
ソーヤが生温かい目を向ける中、ユーヤは額を押さえて転げ回った。
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【作戦その2:オリジナルゲームを運営すれば進化する説】
「ならば、創作者としての格を示す! 『異世界ファミリー大冒険RPG〜最強の僕は今日も無双する〜』のシステム構築を開始!」
ユーヤはノートを開き、ノリノリで設定を書き殴り始めた。
「主人公:ユーヤ(最初からレベル999、全属性無効)。兄ちゃん:ソーヤ(荷物持ち)。父さん:トーヤ(たまにヒントをくれる村人)。母さん:アイン(ラスボスをワンパンする裏ボス)」
「ちょっと待て、なぜ俺の扱いが村人なんだ。それに母さんの設定、説明は雑なのに強すぎないか!?」
トーヤの至極真っ当なツッコミが飛ぶ中、ユーヤは「オリジナルゲーム作成!」と天に向かって叫んだが、もちろんシステム的な通知は何一つ起きず、ただただ虚しい沈黙がリビングを支配した。
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【作戦その3:兄への純粋な嫉妬のパワーで覚醒する説】
「うおおおおぉぉぉ! 嫉妬の炎よ、僕のスキルを焦がして進化の糧となれぇぇぇ!!」
「……いや、そんな負の感情で進化したら、それ完全に闇堕ちルートだからな?」
ソーヤが冷静にツッコんでいた。
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夕方、全ての作戦が撃沈し、リビングの隅っこで体育座りをして完全にいじけてしまったユーヤ。
そんな彼の元へ、アインが焼き立てのクッキーを持ってトコトコと近づいてきた。
「はい、ユーヤ。お疲れ様〜。クッキー食べる?」
「うぅ……母さん……。僕、やっぱり駄目なのかなぁ……。」
アインはユーヤの隣に座ると、そのくしゃくしゃの髪を優しく撫でながら言った。
「そんなことないわよ。あなたの《ゲーマー》って、お母さんは世界で一番大好きなスキルよ? だって、みんなをワクワクさせて、笑顔にしてくれるもの。そういう“遊び心”や“楽しい”って気持ちこそが、あなたの力の源なんじゃないかしら〜?」
「楽しい、気持ち……。」
(そうだ。僕はゲームが好きだから、この力が使えてたんだ。進化しなきゃって焦って、義務感でやってちゃ意味ないじゃん!)
目からウロコが落ちたユーヤの胸に、今度は純粋な「もっとみんなと楽しみたい!」という決意の炎が小さく灯った。
(見てろよ……! 絶対に僕らしい、最高に面白い進化をしてやるんだからな……!)




