番外編 リルの記録——“掃除”と不可解な家族
あの日から、少しだけリルの日常が変わった。”庭”はまだ不安定だけど、心は、少しだけ軽くなった。理由は分かってる。あの人たちが来たから。
でも、その代わりに、問題が増えた。“ゴミ”が、増えすぎた。
本来なら自然消滅するはずの欠片。未完成の物体。忘れられた存在の残滓。それが、異常な速度で溜まっていく。
(……どうしよう。)
正直、手に負えない。一つ処理するだけでも時間がかかるのに、もう数えきれない量になっていた。本来、ここまでなることはないのに、やはり”庭”が不安定になっている。
(呼ぼう。あの人たちを。)
一瞬迷って、それでも決めた。覚悟を決めて、ゲートを開く。
「おはよう。」
声をかけた瞬間、
「「びっくりした!」」
(子供たちの反応がいちいちかわいい。)
でも、それが少し嬉しかった。事情を話すと、
「掃除?」
空気が一瞬止まる。
(あ、これ面倒なやつだって思ってる。)
でも、そのあと、
「みんなでやろう」
あっさり受け入れられた。
(ほんとに来ちゃうんだ……。)
そして、みんなで“庭”へ。”庭”の光景を見たユーヤの第一声が、
「うわっ!」
(うん、それが正解。)
浮かぶゴミの群れ。未完成、歪み、失敗作。全部まとめて“世界の余り”。最初は驚いていたものの、彼らは全くひるまなかった。それどころか、なんということはないといった感じで、
「一気にやるか。」
その一言で、始まった。
まず父。
「フリーズ」
全部、止まった。
(え、なにそれ。)
次に兄。
「再構築」
ゴミが、完成品になって消えた。
(え、え、なにそれ!?)
弟は、
「これゲームに使えそう…。」
(持ち帰ろうとしてる!?)
母は、もっと意味が分からなかった。
「帰れる?」
それだけで、ゴミたちが光になって、そして消えた。
(……え?)
“存在”に話しかけてる。そんなこと、普通できない。
そして最後。
「キュアァ!」
ドラゴンが一声鳴いた瞬間、ほぼ全部、消えた。
(なにこの人たち…。)
あたり一面にあったゴミが、ほんの数分で跡形もなく消え去った。私は、ただ立って見てるだけだった。
「……ありがとう。」
あまりの光景に、たったそれだけしか言えなかった。
そして、残ったもの。
“安定した欠片”。
(久しぶりに見た……。)
これが生まれるのは、完全浄化されたときだけ。本来なら、とても貴重なもの。渡すとき、少し迷った。でも、
(この人たちならいいか。)
そう思って渡した。そして、その結果。
「クッション?」
(なんで!?)
理想って、そういうことなの?
でも、その後、ドラゴンが気持ちよさそうに丸くなっているのを見て、
(……これはこれで、正解なのかも…。)
そう思った。
遠くからウェーノ家の様子を伺いながら、気づけば笑っていた。
ずっと一人だったこの場所に、笑う理由ができた。
(また来るかな。)
たぶん来る。あの人たちは、そういう人たちだから。そして私は、初めて思った。
この”庭”が、少しだけ『楽しい』と。




