表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/130

第41話 本気

 監督の九条咲が本気になってから、

 東鶴間高校野球部の練習は、明らかに質が変わった。


 まず矢面に立たされたのは、投手陣だった。


 座間康太、佐々木冬次郎、田中三郎。

 三人はマウンドとグラウンドを行き来しながら、

 投げ込みと走り込みを繰り返していた。


「座間、佐々木、田中」


 九条の声が飛ぶ。


「お前たちは、スタミナが足りん。

 だから三回前後で息が上がる。

 それに――打たれすぎだ」


 三人は顔をしかめながらも、足を止めなかった。


「なんで俺たち、こんなに走らされてるんだよ……」


 座間が弱音を吐く。


「仕方ないだろ。

 俺たち、打たれるわ、スタミナ切れるわで、

 いいところ一つもなかったんだから」


 佐々木が、歯を食いしばりながら言った。


「でも、今から体力作りしたって、遅いっすよ……」


 田中の言葉に、九条が即座に反応する。


「喋る元気があるなら、黙って走れ」


 三人は、それ以上何も言わなかった。


「……もしかしてさ、

 俺が三回四失点したからか?」


 座間が小声で言う。


「俺だって二回二失点だぞ」


「俺も、同じっす」


 だが、その言葉に答える者はいなかった。

 結果が、すべてだったからである。


 一方で、別の場所では――


 キャプテンの渡辺貴明が、

 捕手としての配球とリードを見直していた。


 前の試合で許した八失点。

 その責任の一端は、自分にある。


 そう、渡辺は理解していた。


(あれは……俺のミスだ)


 だからこそ、ノートを広げ、

 何度も同じ場面を思い返していた。


 進藤竜也と六条遊人は、

 黙々と守備練習を繰り返していた。


 打てないなら、守るしかない。

 自分に出来ることで、チームに貢献する。


 その覚悟が、二人の動きには表れていた。


 中田大はティーバッティング。

 打率の低さを自覚しているからこそ、

 一球一球を無駄にしなかった。


 中山太郎は、一塁と外野の守備練習。

 捕手には渡辺がいる以上、

 自分は「穴を埋める存在」でなければならない。


 そして――


 高柳龍二郎、高橋雪夜、新井元気、天宮真十郎。


 この四人は、特別な指摘を受けることはなかった。


 だからといって、楽をしているわけではない。


 いつも通り。

 だが、意識は確実に変わっていた。


 マネージャーの夏目真衣は、

 そんな部員たちを支えながら、

 雪夜、そして九条と共に個別練習のメニューを考えていた。


 監督がやる気になったのは、間違いない。

 だが、その分――練習は容赦なかった。


 夕方になる頃には、

 部員たちは皆、疲労を隠せない表情をしていた。


 それでも、誰一人として、弱音は吐かなかった。


 なぜなら――


 次が、二回戦だからだ。


 東鶴間野球部は、

 すでに「次」を見据えて動き出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ