第172話 三回戦、中盤
三回戦――。
三回表。
ここから、相手打線は二巡目に入っていた。
田中三郎と中山太郎のバッテリーは、なんとか抑えようとする。
だが、一度目で見た球筋。
徐々に対応され始めていた。
甘く入ったストレートを弾き返され、さらに変化球も見極められる。
気づけば、この回で二失点。
試合は簡単には進まなくなっていた。
さらに相手打線の勢いは止まらない。
田中は粘っていた。
中山も必死にリードしていた。
それでも――。
五回終了時点で、試合は5対5の同点。
ベンチへ戻る中山の表情は、重かった。
(……これって、俺のせいなのか……?)
一回戦でも失点した。
二回戦では、雪夜と天宮のバッテリーが完封した。
そして今日も、自分がマスクを被ると失点している。
その現実が、中山の心を少しずつ追い詰めていた。
六回表。
東鶴間高校は、ここで動いた。
投手交代。
田中三郎に代わり、夏目海がマウンドへ上がる。
海は緊張しながらも、懸命に腕を振った。
ノビのあるストレート。
緩急を織り交ぜた投球。
海の力投もあり、六回を無失点。
さらに七回も抑え、流れを引き戻そうとしていた。
だが――。
八回表。
相手打線も簡単には終わらない。
夏目海はついに捕まり、一点を失った。
それでも、東鶴間打線も粘っていた。
高柳龍二郎、高橋雪夜、新井元気たちが繋ぎ、追加点を奪う。
八回裏終了時点で、スコアは6対8。
東鶴間高校が二点リード。
そして九回表。
最後のマウンドへ向かったのは、伯方歩夢だった。
中山太郎はマスク越しに声をかける。
「伯方……最後を締めてくれよ」
歩夢は小さく頷いた。
「……はい……」
だが、その胸の内は穏やかではなかった。
(……どうしよう……)
(雪夜さんが捕手じゃないから……緊張する……)
歩夢にとって、高橋雪夜の存在は特別だった。
雪夜のリードがあるだけで、安心して投げられる。
だが今、自分の後ろにいるのは中山太郎。
もちろん、中山が悪いわけではない。
それでも――。
歩夢の心は、どこか落ち着かなかった。
そして。
三回戦の相手チームは、この若き投手へ容赦なく襲いかかることになる。




