第119話 桜桜花戦、作戦会議
九条咲、進藤竜也、六条遊人、高橋雪夜、夏目真衣。
五人による、桜桜花高校との練習試合のメンバーを決める会議が始まった。
まず、ホワイトボードに各ポジションを書き出すことにした。
雪夜がペンを手に取り、順に書いていく。
投手――
田中三郎、天宮真十郎、白石広志、夏目海、伯方歩夢。
捕手――
中山太郎、高橋雪夜。
一塁――
高柳龍二郎、浮田総二。
二塁――
早田士郎。
三塁――
進藤竜也、竹田栄司。
遊撃――
六条遊人。
外野――
新井元気。
九条が言った。
「とりあえず、新井は確定でいいな」
全員が頷いた。
「投手陣も、この五人でいこう」
ここまではすぐに決まった。
問題は――残りのポジションだった。
「捕手は……中山でいいか」
進藤が言う。
誰も異論はなかった。
すると話題は、外野の残り二枠へ移った。
雪夜がホワイトボードに書く。
「レフト高柳、ライト高橋……」
六条が首をかしげる。
「肩が弱すぎるかな」
九条も同意した。
「これはやめよう」
雪夜はすぐに消した。
次の案。
「レフト浮田、ライト竹田……」
今度は真衣が言った。
「浮田君の肩がちょっと……」
進藤も続ける。
「竹田は守備に不安があるな」
再び却下。
なかなか決まらない外野手。
だが――
会議の空気は暗くなっていなかった。
むしろ、意見を出し合うことで、少しずつ楽しくなっていた。
「じゃあセンター新井固定で…」
「肩を考えるなら…」
「守備重視にするか?」
ホワイトボードには、書いては消される名前が増えていく。
強豪・桜桜花高校との一戦。
それでも――
東鶴間高校野球部は、前を向いて準備を進めていた。
なかなか決まらない外野手。
沈黙を破ったのは、キャプテンの進藤竜也だった。
「では、僕をライトに使うのはどうでしょうか」
その案に、全員が考え込む。
進藤をライトに回せば、三塁は竹田栄司で決まる。
だが――
三遊間の守備力が低下する。
すると、六条遊人が口を開いた。
「だったら、僕をライトにして、進藤キャプテンをショートにしたらどうでしょうか」
その案に、雪夜がホワイトボードを書き換える。
ライト六条。
ショート進藤。
サード竹田。
六条は強肩だ。
ライトにも適性がある。
悪くない配置だった。
「となると……レフトだな」
試しに、早田士郎の名前を書いてみた。
肩と守備は平均的だが、足が速い。
レフトとしては悪くない。
「これで外野は決まりか……」
だが、問題はまだ残っていた。
残るは一塁と二塁。
メンバーは――
高柳龍二郎、高橋雪夜、浮田総二。
三人のうち、一人を外すことになる。
「これ……誰か外すと打撃力が落ちるな」
進藤が言った。
打撃を重視すれば、また配置を最初から考え直す必要がある。
会議は再び振り出しに戻った。
時間だけが過ぎていく。
気づけば、外はすっかり暗くなっていた。
九条咲が口を開いた。
「仕方ない……今日はここまでにしよう」
「投手は田中、捕手は中山、センターは新井……ここだけ先に決めることにしよう」
残りのメンバーとポジションは、後日決めることになった。
あまりにも遅くなったため、九条の車でそれぞれの家まで送ることになった。
帰りの車内。
疲れているはずなのに、どこか満たされた空気が流れていた。
なかなか決まらない。
それでも――
確かに、充実した時間だった。
桜桜花高校との一戦へ向けて、
東鶴間高校野球部は、一歩ずつ前に進んでいた。




