第117話 多数決
桜桜花高校との練習試合は、多数決で決められることになった。
静まり返った部室。
投票箱の中身が、ゆっくりと開けられる。
監督の九条咲が、一枚ずつ票を読み上げていく。
「賛成……」
「反対……」
部員たちは、固唾をのんで見守っていた。
そして――
結果が出た。
賛成八票。
反対七票。
わずか一票差だった。
九条は小さく息を吐いた。
「試合をしたくない者が……七人もいるのか……」
部員たちも同じことを思っていた。
無理もない。
去年の県大会四回戦。
5対17。
五回コールド負け。
あの大敗の記憶は、まだ生々しく残っていた。
九条は静かに言った。
「それでも、多数決だからな……練習試合は受けることにする」
だが――
部室の空気は重かった。
あの桜桜花高校と、また戦うのか。
そう思う者も少なくなかった。
九条は続けた。
「だが……そうだな」
少し間を置く。
「私もこの試合……正直、迷っているんだ」
その言葉に、部員たちは少しだけ驚いた。
試合は数日後に行われることになった。
東鶴間高校野球部の面々は、再び練習を始めた。
不安を振り払うように。
だが――
二年生と三年生は思い出していた。
17点も取られ、勝負にならなかった、あの試合を。
それでも――
前を向いて進まなければならない。
それが、強くなるための道だと信じて。
東鶴間高校野球部は、ただ黙々と練習を続けるしかなかった。




