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工場

「皆さーん!ここから先は2列になって

道なりに進んでくださーい!」


サミダレがやってきたのは、

日本にある雨列車の工場兼研究所だ。

ここにはレイニーの車両の一つが

大切に保管されており、

雨列車の更なる改良や

レイニーが動かなくなった原因など、

様々なことが研究されている。

サミダレはここで生まれて、

今でも月に1回メンテナンスのために

この工場にやってくる。

だが、今日はメンテナンスのためではなく、

サミダレの旅行として客を乗せてきた。


「さぁご覧ください!

今まさにユウダチのメンテナンスの真っ最中です!」


ユウダチはサミダレの弟にあたり、

人を運ぶサミダレと違って、

物を運ぶことが主な役割だ。

サミダレと同じように

月に1回のメンテナンスがあり、

今日がその日なのである。

ユウダチは雨列車では最長の

18両で編成されており、

深い藍色からは力強さを感じる。

貨物の破損が少ないことで評判が良く、

サミダレの弟として

世界の貿易国から重宝されている。


「それでは、ここからは実際に

工場で作業をされている方から

より専門的な説明がありますので、

皆さんよく聞いてくださいね!」


この工場で仕事をしている人に乗客を預け、

ガイドの女性は後ろの方へと下がる。

客達が解説を聞きながら

工場を1周するまでの小一時間、

いつも違う場所で時間を潰すのが

女性の習慣であった。

だが、今回は客の最後尾から

全ての解説を聞くことにした。

久しぶりに聞くことで、

もしかしたら、雨列車の心について

何か得られるかもしれないと思ったからだ。


「皆さん、今日は雨列車について、

詳しくなって帰ってくださいね。」


彼はこの工場で

車輪部門のリーダーを務めていて、

旅行でここに来る人達に

いつも案内役をしてくれている。

背が高く細身の彼は、

柔らかい物腰と笑顔をしており、

説明が分かりやすいこともあって、

男女問わず大人から子どもまで

非常に評判がいい。


「では早速、下を見て下さい。

あのように、雨列車の点検では

より精密な検査をするために

車両全体を一度切り離します。

それから何人かでチームを組み、

それぞれの分野ごとに散らばって、

一つ一つ点検しているんです。

例えばあそこ、ユウダチの車輪を

手で回していますよね。」


ガラスを隔てて

覗き込むように下を見ると、

一両ずつに離されたユウダチを

天井から吊るされたチェーンで持ち上げて、

作業員達が横から車輪を

一つ一つ手で回していた。


「あれは車輪の点検をしています。

車輪が欠けていないか、歪んでいないか、

外れそうになっていないか等、

一つずつ丁寧に回して確認しています。

地道な作業ではありますが、

車輪はとても大事なパーツなので、

この工程の後でも

もう一度確認することになっています。」


雨列車を開発する時、

最も研究者が力を入れたのが

車輪だと言う話を聞いたことがある。

車輪は全てが同じ大きさ重さで、

僅かな差も許されない。

技術が進歩した現代となっては

0.1mgの誤差もない車輪を

大量に生産できるようになったが、

レイニーが産まれた当時に

全く同じ車輪を造るのは

至難の業であった。


「次はもう少し奥に進みますよ。

ここからでも見て分かると思いますが、

大きな工具を持った人達がいます。」


車輪の工程の少し先、

大きなレンチのような工具や

ドライバーを持った作業員がいる。

彼らは車両の両端、

つまり車両同士を繋ぐ接続部分を

中心に集まっていた。

よく見ると、なにやら大きな部品が

近くに置いてある。


「あれは列車を繋ぐ要の

接続部分の点検です。

たった今から、点検に必要な部品を

差し込んでもらおうと思います。」


彼が下で待機していた作業員に合図すると、

近くに置いてあった部品を2人で持ち上げ、

車両の接続部分にはめ込んだ。

前後で部品の形が違い、

それに伴って使う工具も変わるようだった。

部品をはめたら工具で固定し、

手でグラグラと動かしたり

様々な角度から観察している。


「基本的に、現代の雨列車は

車両を構成している部品以外の

部品を必要としません。

外部からの部品を必要としないように、

前後で凸凹になるように

設計されているからです。

その方がより安全で、

揺れが少なくなるんです。

だから、点検の時は

接続部分と全く同じ部品を用意して、

破損していないか、隙間がないか等、

確認しているんです。」


現代の雨列車では、

彼が説明したような造りになっているが、

実はこのような構造が確立されたのは

ユウダチの存在があった。

レイニーを始めとした初期の雨列車は、

車両同士の接続のために

専用の部品があったのだが、

ユウダチの開発を担当した

ある日本の技術者が

今のような構造を発案して、

それが抜群の安定感を生み出したのだ。

ユウダチの評判と相まって

その技術は世界共通となり、

先に産まれたサミダレの構造も

ユウダチと同じように造り変えられた。


「それではいよいよ、

雨列車の心臓とも言える、

先端車両の点検に参りましょう。」

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