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第85話 殺人カップルは殺戮の日々を送る

 私とジェシカは広々とした一室にいた。

 温かみのある木造建築で、赤い絨毯とのコントラストがよく映える。

 暖炉の火は、小さな音を立てて薪を燃やしていた。


 我々はテーブルを挟んで椅子に腰かけている。

 それぞれの前には酒と料理があった。

 私はワインを飲みながら外の風景を眺める。


 窓から見える景色は廃墟だ。

 およそ一カ月前に滅ぼした都市である。

 様々な魔術兵器で対抗してきて、それなりに楽しませてくれた。

 ただ、特筆するほどの能力ではなかった。


 ワイングラスを置いた私はジェシカに尋ねる。


「今度はどんな戦争がしたい?」


「そうねぇ……五つの英雄連合を戦わせるなんてどうかしら」


「悪くないね。せっかくなら魔王も呼んでおこう。黒竜王は人間とも仲が良かったはずだ」


 私が提案すると、ジェシカは嬉しそうにする。

 饒舌に語る彼女は、その合間にジャンクフードを食べ進めた。

 味の好みはずっと変わらないらしい。

 飽きないのか気になるが、満足しているのだろう。

 元より食事に強いこだわりがないのだと思う。


「今回の武器はどうするの?」


「前回は超科学兵器だったから、逆に原始的なものにしようと思っている。たとえば石斧とか」


「いいじゃない! じっくり楽しめそうだわぁ」


 ジェシカはハンバーグの包み紙を丸めながら笑う。

 そして、愉快そうな囁き声になった。


「ねぇ、ダーリン」


「何だい?」


「次はどれくらい持つのかしらね」


「賭けでもしてみようか」


「そうしましょ。今度は負けないわよ」


 我々はそこから勝敗予想や賭け金について話し合う。

 何度も繰り返してきた恒例イベントだ。

 滞りはなく、ルール確認も必要なかった。


 殺戮に付随する素晴らしい娯楽だ。

 ギャンブルはかけがえのない暇潰しとなっている。


(これが我々の人生だ)


 初めて世界を滅亡させてから七百年が経過した。

 いや、もうすぐ八百年に達するのではないか。

 細かい年月はカウントしていないが、我々はそれだけの期間を殺戮に費やしている。


 世界を再生させて育てる。

 そこから壊していって最終的に滅ぼす。

 たまにインターバルを挟みながらも、そんな破壊と創造をループさせていた。


 蘇らせる世界は一定ではない。

 飽きないように工夫している。

 同じ国をいくつも召喚することもあれば、違う時代の国々を戦わせることもあった。


 そこに我々が介入するのだ。

 あちこちで不規則な条件下で戦争を勃発させる。

 まるで自由度の高いシミュレーションゲームをやっているかのような感覚だった。


 我々はそのような日々を満喫し、何百年という時間を過ごしてきた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今話もありがとうございます! [気になる点] 破壊神夫妻と化したこの最凶カップルをどうにかできる存在、この世界にはもういないよね? (勝てそうな存在、別世界にしかいなさそう。魔王ドワイトか…
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