第51話 殺人カップルは挨拶する
建物内を探索するうちに、大勢の人間が隠れている場所を発見した。
扉を開こうとするも、向こう側から施錠されている。
加えて魔術の罠や結界が張られているようだった。
かなり厳重な守りを敷かれている。
(この部屋に重鎮が隠れているのだろうな)
私は部屋のネームプレートを確認する。
そこには大会議室と記されていた。
まさに会議をしている最中だったのだろう。
きっと我々の襲来を察知し、いち早く逃げ込んだに違いない。
タイミングを見計らって脱出に成功した者もいるはずだが、まだ大部分が残っているようだ。
騒動の規模や被害を勘定できず、逃げ遅れたか籠城を決め込んだのだと思われる。
私は扉をノックしてみる。
向こうの気配が緊張するのが感じ取れた。
残念ながら返答はない。
私は振り向いてジェシカに笑いかける。
「我々は歓迎されていないようだ」
「酷い話だわ。臆病なのね」
「それも仕方ないさ。戦う力のない者は頭を働かせるしかない。彼らの判断は賢明だろう」
私はそう語りながら踵を返すと、首を傾げるジェシカを連れて上階に移動した。
そして死体の転がる一室に入って爆弾を召喚する。
スイッチ一つで起爆できるタイプだ。
「何をするつもり?」
「こうするのさ」
私は床に敷かれた絨毯をめくり上げて、そこに爆弾を設置した。
起爆装置が正常に機能していることを確かめると、絨毯を戻してジェシカの手を引きながら部屋の外へ出る。
「せっかくなので、この階から挨拶しようと思ってね」
語りながら起爆ボタンを押し込む。
炸裂音が響き、部屋のドアが吹き飛んで壁にめり込んだ。
室内から濛々と黒煙が漂ってくる。
悲鳴や怒声が聞こえてくるのは、下の階――すなわち大会議室からのものだろう。
爆散した床に穴ができて繋がったようだ。
もちろん目論見通りである。
「普通に扉を壊して侵入してもよかったんじゃない?」
「その方がスムーズだが、少しマンネリかと思ってね。工夫を凝らしたかったんだ」
会話をしながら室内へと踏み込む。
調度品が残らず吹き飛んで、焼け焦げた壁や天井が痛々しい。
床の半分ほどが破砕し、吹き抜け状になって下のフロアが窺えるようになっていた。
ジェシカは腕組みをしながら床を指差す。
「工夫というのがこれってことかしら」
「ああ、ちょっとしたパフォーマンスになるだろう」
「……ダーリンったらイタズラ好きね」
ジェシカは呆れたように笑う。
それでも否定しようとはしない辺り、彼女の優しさが垣間見えた。
互いの趣味嗜好に干渉しない。
それが我々の関係性が良好である秘訣であった。
何事も否定から入らないだけで印象が一転するものだ。
私は妻の素晴らしさを再認識しながら、床の穴から階下を覗き込む。
そこには怯えてこちらを見上げる面々がいた。
私は笑顔を浮かべて彼らに話しかける。
「突然すまないね。君達に伝えたいことがあるんだ」




