第39話 殺人カップルは魔王と戦う
爆発に次ぐ爆発の連鎖が起きていた。
鼓膜が痛くなりそうな惨状だ。
結界越しの光景は、すべてが炎と煙に覆い尽くされている。
ジェシカが指を振って風を起こすと、それらを押し流されていく。
一分もしないうちに辺りの光景が明らかとなった。
乾いた大地には無数のクレーターができて、赤熱して融解しかけている。
立派な佇まいだった魔王城は跡形もなく消滅していた。
十万発の爆撃に耐え切れなかったようだ。
何もかもが吹き飛んでいる。
抉れた大地は一部が燃えて黒煙を立ち昇らせている。
魔力消費を気にせず奮発してみたが、大した破壊力である。
(さて、どうなる?)
私は顎を撫でつつ魔王城のあった辺りを注視する。
そこにはクレーターがあるのみで、魔王の姿は見当たらない。
まともに考えると生存しているはずがなかったが、私は奴の生存を疑っていなかった。
しばらくすると魔王城跡のクレーターが爆発する。
私がミサイルを落としたのではない。
そこから黒い人型が飛び出して、ヘリの前方まで高度を上げてきた。
粘液を滴らせて浮遊するのは焼け焦げた男だ。
死体のように見えるが、真紅の瞳が我々を凝視している。
そこに宿る感情は、激しい怒りと憎悪。
放たれる瘴気が蜃気楼のように空間を歪めていく。
「ほほう、さすが魔王だ」
私は素直に感心する。
その間に魔王が破裂し、内側から鱗付きの肉塊が溢れ出した。
明らかに元の体積を無視している。
肉塊の一つが爬虫類の平たい頭となり、こちらに噛み付こうとしてきた。
寸前で結界に弾かれるも、結界の表面に亀裂が走る。
落下する魔王の残骸は、際限なく鱗の肉塊を放出していた。
それは一繋がりの細長い体躯となっている。
「正体は蛇のモンスターか」
私はヘリを後退させながら微笑する。
その直後、ヘリの頭部が結界に叩き付けられた。
凄まじい衝撃で、亀裂がさらに大きくなる。
あと一撃で木端微塵に砕けるだろう。
ジェシカは悔しそうに舌打ちを洩らす。
自らの術が壊されそうなことに歯噛みしていた。
「結界も過信できないわね。一旦距離を取るべきかしら」
「そうだね。向こうの出方を観察してみよう」
私はヘリをさらに後退させた。
蛇の怪物となった魔王は、半ば浮遊するようにして追跡してくる。
こうして我々の戦いは、本格的に始まったのであった。




