第35話 殺人カップルは企む
我々は食事をしながら荒野を歩く。
しばらくしてポテトをくわえたジェシカが思い出したように言った。
「そういえば魔王城の場所が分かったわ」
「ほう、いつの間にか特定したんだい?」
「禁呪に含まれた魔力から逆探知したのよ。少しだけ面倒だったけど成功したわ」
ジェシカは得意げに述べる。
思わぬ収穫だった。
まさか彼女がそこまでやっているとは。
細かな調査はどちらかと言うと私の役割で、作戦の立案を含めて引き受けてきた。
ジェシカは攻撃役が専門だったが、異世界に来て大きく成長したようだ。
禁呪の魔力から逆探知したということは、あの魔物の軍勢との戦闘中に探ったのだろう。
よくもそのような余裕があったものである。
彼女なりに私に貢献しようと考えたのか。
(さすがジェシカだ)
その心意気に感謝する反面、自らの不甲斐なさを感じざるを得ない。
最近は彼女の魔術に頼ってばかりだ。
召喚魔術のおかげでやれることは増えたが、前世に比べて明らかに活躍できる割合が減っている。
私も負けていられない。
彼女の支えとなれるように尽力しなければ。
チーズバーガーセットを完食したジェシカは、右方を指差しながら説明する。
「魔王城まで結構な距離があるけど、ヘリを使えばすぐに到着するはずよ」
「なるほど。じゃあ今日のうちに襲撃しよう。君はそれでいいかい?」
「もちろんよ。派手に仕掛けましょ」
ジェシカが可憐にウインクをする。
私はそんな彼女の髪を撫でて頬に触れた。
「ちなみに感知魔術で魔王の現在地は探れるかな」
「……まだお城にいるみたいね。こっちの感知を阻害しないから、私達の到着を待っているのかしら」
「ほほう、それはいい。よほどの自信があると見える」
魔王は数十万の配下が殲滅されたことに気付いている。
その間に逃げようとはしなかった。
プライドがかかっているのもあるが、戦えば負けない自信を持っているのだろう。
冷酷ながら相当な自信家である。
始末するのがますます楽しみだった。
不敵な笑みを浮かべていると、ジェシカが私の顔を覗き込んできた。
「ところで魔王を倒す作戦はもう決まったの?」
「ああ、いくつか用意している。どこまで通用するか分からないがね」
「ダーリンの策ならきっと成功するわ」
「期待を裏切らないように頑張るよ」
せめてそこで貢献しなければ、ジェシカの夫を名乗れない。
世界最悪の怪物を殺すのは我々だ。
他に誰にも譲るつもりはない。
世界を救うヒーローに興味はなかった。
ただ獲物を狩って悦に浸るだけ。
それが殺人鬼の本性というものだ。
圧倒的な暴力で捻じ伏せてみせよう。




