第28話 殺人カップルは思い出の品を使う
魔物達は我々を見上げて咆哮を轟かせる。
たまに魔術や岩や矢が飛んでくるが、いずれもジェシカの展開したバリアーがブロックした。
彼女の守りは堅牢だ。
そう簡単には破壊できない。
魔王の禁呪すら防いだのだから当然だろう。
一般的な魔術師なら失神しかねないほどの猛攻を前に、彼女は余裕を崩さない。
強がりではなく、本当に辛くないのだろう。
絶対的なメンタルが彼女の魔力量を天文学的な数値に引き上げているのだ。
飛行できる魔物が近付いてきた際は先制して私が射殺していく。
どんな個体だろうが弾丸で急所を破壊すれば死ぬ。
異世界だろうと変わらないルールであった。
弾切れになったリボルバーの再装填を行いつつ、私は眼下の光景に苦笑する。
「大騒ぎだな。そんなに我々の登場が嬉しいのか」
「本当よね。こんなに歓迎されると気分が上がっちゃう」
ジェシカは頬に手を当てて言う。
蕩けそうな笑みだった。
潤んだ目は殺戮への期待で爛々に輝いている。
今にも地上へ降り立ちそうな彼女は、辛うじて理性に食い止められている状態だった。
たぶん私が提案すれば、弾丸のように飛び出してしまうと思う。
しかし、相手は数十万の軍団だ。
極上の獲物には違いないが、いくら我々が殺人鬼とは言え、無策で突っ込めば嬲り殺しにされかねなかった。
勢いだけでも勝てる見込みはあるだろうが、そんな賭けをする必要はない。
きっと最低限の労力でも打ち勝てるパターンがあるだろう。
それを定めるために踏み留まって観察する。
「ふむ……」
私は顎を撫でる。
この数を二人で相手にするのだ。
それなりの手段を用意しなければならない。
脳内に使えそうな攻撃方法をピックアップして、召喚すべきものを絞りつつジェシカに話を振る。
「彼らもやる気らしい。あまり待たせるのも良くない。存分に相手をしてやろうじゃないか」
「そうね。久々に本気を出そうかしら」
ジェシカが殺気を滲ませた。
カタナソードを回転させて澄んだ音を鳴らしている。
そんな彼女の姿を見た私はふと閃く。
「ところでジェシカ」
「何かしら」
「本気を出すなら、これを使ってみるというのはどうだろう?」
私は召喚魔術である物を取り寄せる。
それは二種類の仮面だった。
艶消しの施された表面は滑らかで、勾玉を潰したような形状をしている。
一方が目元を隠す赤い仮面だった。
もう一方が口元を隠す黒い仮面である。
ちょうど二つを組み合わせると、顔全体を覆う仮面になる仕組みとなっている。
これらの仮面こそ、我々を象徴付けるアイテムだった。




