2.怪人たちの事情
目を覚ました。教室だ。
眠たい朝のつまらない授業。ためにならない必修二講目。
いつまでもいつまでも、くだらない空想に没頭していたい気分だ。
顔を上げると、先生は黒板に向かって一生懸命授業していた。隣では雅彦が完全に眠っている。
「まだ寝たりない」
晶人は顔を伏せた。
俺、今日学校に行ったっけ?
余計なことを思い出した。そのせいで奇妙な声が頭に響く。
『晶人、助けて・・』
晶人は自分がどこかへ落ちていくのを感じた。
ここは天国か、それとも地獄なのだろうか。
晶人はうっすら目を開け、まずそう思う。首を回すと視界に町のような光景が映る。
晶人はもう一度目を閉じて、今度は床の感触を確かめた。
手はあるようだった。どうやら足もある。腕で床を押すと、上半身が持ち上がることがわかった。
晶人は今度は大きく目を開けた。やはり町が見えた。自分の体を見ると破けたデニムが見えた。上半身は裸である。なにも変わりはなかった。
背中がひりひり痛い。ふくらはぎや太股に疲れを感じる。
「生きているらしい」
晶人は跳ねるように立ち上がった。辺りを見回す。
自分は通りの横の石畳のような場所で寝ていた。通りは屋台のような店が並ぶいわゆる「街」だ。
もし晶人の見た光景がそれだけだったのなら、状況を把握するのにまだ時間がかかっていただろう。
だが不幸なことに、ここは明らかにさっきの闘場の続きであった。
道行く人はたくさんいる。皆店で何かを買っていっている。しかしその人というのは全て怪人だった。ここは怪人達の町なのだ。
アメンボ足人間、人面グモ、炎をあげて燃えている生物、全身目の怪物。そんなものばかりだ。
なぜ死んだはずの自分がこうして生きているのかはわからない。しかしここが天国や地獄でないことは明らかだった。
晶人は体のほこりを払うと、そのままふらりと「街」を歩き出した。
道行く怪人たちは皆、晶人を特別とは思わないらしい。誰も晶人に目を向けない。
考えてみれば当たり前だろう。異形だらけのこの世界では、晶人も異形の一つでしかないのだ。
たまに晶人の背に風が当り、痛みが走った。
服屋でもあれば・・
晶人は露店を見て回った。
歩きながら気がついたが、この世界の店はいわゆる「店」とは言えないようだった。通行人達は店の物を勝手に持っていく。店にいる怪人達も何も言わない。お金という概念がないらしい。
目に映る怪人達の中には、見た目にも華奢でどう考えても戦えそうにない者達もいた。店の中にいる者達は大抵そうだった。怪人と言っても戦っている者ばかりではないようだ。姿だって、目が大きすぎるとか色がおかしいとかいうくらいで、人間に近い形態の者も多くいる。そして、生物的に女を思わせる形態の者もたくさんいた。三分の一くらいは女性を感じさせる形だった。もっとも三分の一くらいはあまりにも化け物じみていて男とも女ともすぐには分からないが。
晶人はしばらく歩いて、街のはずれまできた。その先は砂漠になっており、建物らしきものは見えない。更に先には大きくまぶしい太陽が見えた。
晶人は体をぐっと反らせて伸びると、今までのことを思い返してみた。
自分は何かの光に包まれてドーム状の闘場にやってきた。
そこでは怪物達が血みどろの戦いをしており、自分は隣にいた怪人に殺された。
問題はここが何処で、どうすれば元の世界に帰れるかだ。
晶人は来た道を戻り始めた。
服屋は見あたらなかった。しかし服を着ている者はかなりいる。というよりも、なぜかどんな怪人も服っぽい何かを身につけている。そういえば、登場で戦っていた全身ハリネズミも麦わら帽子をかぶっていた。何か意味があるのだろうか。
晶人は布地を置いてある店の前で立ち止まった。取りあえずこれを巻いているだけでもいいだろう。
晶人が近づいていくと、店の中の怪人が首を伸ばした。それは鳥を擬人化したようなイメージの怪物だった。体色はカラフルな原色だらけで、くちばしが左右に開くようになっている。胸が大きく、そこに布を巻いている。女なのだろうか。
「作って欲しい物を考えろ」
鳥人は無機質な声で言って晶人の頭に翼をかざした。晶人が呆然としていると、彼女?はまた同じ言葉をくり返した。晶人は試しに以前着ていたシャツをイメージしてみる。
そうすると彼女は翼を戻し、目の前の布地をとって翼とくちばしで織りあげていった。
晶人のイメージどおりの服ができるまでに、一分とかからなかった。
鳥人はできた服を晶人に投げよこして、またもとの位置に戻った。
どうやら仕立屋らしい。確かに怪人達の体格は様々である。既製の服があっても役には立たないのだろう。
晶人は続けて中の怪人を呼ぶと、服や下着の一揃えとそれらを入れる袋を作らせた。
「便利なものだな」
やはりお金など請求されなかった。晶人は軽く鳥人に礼を言い、荷物を受け取って店の裏手に行く。そしてその場で着替えた。使い古しの服はその場で捨てる。
晶人が気分よく歩き出すと、突然後ろから肩をつかまれた。晶人はびくりと立ち止まる。
「捜したぜ。ちょっと目を離した隙にいなくなりやがって」
声に聞き覚えがあった。振り返ると、目の前にはやはり彼がいた。
がっしりした体、虎色の毛、狼のような口、長いたてがみ。
間違いない、彼は自分を殺した怪人である。
晶人は彼を見たまま何も言えなくなった。言いたいこと、聞きたいこと、あまりに多すぎて何から口に出せばいいのかわからない。
「これから仲間の所にいく、ついてこい」
彼はそれだけを言って歩き出した。晶人は口を挟もうとして、止めた。
必要ない。彼についていけば何かがわかる。それだけは間違いのないことなのだから。
晶人は彼の後ろを歩き出した。
獣人は店の並ぶ通りから外れ、横の細い道に入っていった。
両側は高い建築物が並んでいる。貧民街を思わせる場所だった。
道には何人か怪物達が座り込んでいたが、別に歩く二人に興味を示しているようでもなかった。
しばらく彼らが無言で歩いていると、通りの横からコートに身を包み、深くフードをかぶった人物が近づいてきた。コートが大きいせいで体つきまではわからないが、獣人に比べて小柄なことははっきりわかる。
その人物は獣人の前に立った。
「そいつなの? 私達の待っていた奴は」
その声は女性のものだった。
獣人は立ち止まって無愛想に答える。
「さあな、ただ可能性があるだけだ」
「そう。みんな待ってるよ」
今度は彼女が先導して歩き出す。晶人は何も言わずに続いた。
二人の怪人はまっすぐ建物の一つに入っていった。晶人も入る。
建物の中にも何人かの怪人達がいた。二人はやはり彼らに構わず歩き続け、一番奥の扉までくる。
彼らはそこで一度立ち止まって、晶人を見た。晶人はきょとんと彼らを見つめ返す。
彼らはまた前を向いて扉を開けた。その奥は更に通路になっていた。
三人は細い廊下を進み、やっと目的地らしき広いホールにたどり着いた。
暗い通路とは異なり、不思議なほど明るい場所だった。
晶人はそこで新たな二人の怪人を見た。
「連れてきたぜ」
獣人がやはり無愛想に言う。
しかし皆は答えなかった。全員黙って晶人に注目している。
フードを深くかぶっていた怪人が晶人から離れて立ち、上着を脱ぎ捨てた。
まぶしいくらいの小麦色の肌が現れる。彼女の今着ている物は、胸から太股までを覆う肌の色よりも若干黒いレオタードだけだった。
「ねぇ、本当にそいつが私達の待ってた奴なの?」
彼女は今まで晶人が見てきた怪人達とは、良い意味で少し異なっている。
すなわち人間の女性とまるで変わらなく見える。
髪は短めで、顔は少女のような印象を与える。手足や身体も普通の女性のそれで、よく見ないと怪物的な部分は見付けられない。一瞬晶人は彼女も自分と同じ、「よそから迷い込んだ人間」なのではないかと思ったくらいである。
しかしこの明かりの下で見るとよくわかる。彼女は人間ではない。
髪の色、目の色は見事なクリーム色で、眼球は無く、そこにはただクリーム色の膜があるのみである。唇も人間のような赤みは持っておらず、小麦色の肌のままだった。SFのアンドロイドに似ている。
「可能性があるというだけだ。本当のところはわからない」
「でもさ、私、今日《戦う場所》に行かなかったからわからないんだけど、そいつすごく弱そうじゃないか。仮にも私達のリーダーなんだよ」
彼女の言葉に獣人は少し笑う。
「エレサ、お前の正解だ。こいつはとてつもなく弱い。おそらくそこらに転がっている屑にだって勝てないだろう。なんならサモールにも聞いてみな。こいつの奇妙な戦い方を見ていたはずだ」
「何だって! 正気、グラッズ。そんなの私達が呼んだ奴なわけ無い」
「俺もそう思ったさ、始めはな。だが考えても見ろ、あいつは自分が強いなんて一言も言わなかったぜ。だったら強い奴という条件は付ける必要がないだろう。それに何よりもこいつは他の条件が合いすぎていた」
「でも!」
彼女はまだ何か言いたそうだったが、後ろにいた大きな怪人が口をはさんだ。
「むしろグラッズが正しいのかも知れぬ」
その怪人の体は皆を圧倒して大きい。エレサと呼ばれた怪人と比べると、二周りは上になるだろう。あのグラッズと呼ばれた怪人でさえ小さく見えてしまう。
髪は逆立っており、頭に二本の太い角を生やしている。顔は人間のそれで、鋭い牙はあるもののなかなかのいい男だった。背には大きな翼を付けており、手足の爪は鉤になっていた。
イメージで言うなら、日本の鬼をヨーロッパに持っていって悪魔仕立てにしたといったところである。上半身は裸のままだが、ズボンをはいており、それは膝までしかない。柄も鬼っぽい。
「どういう意味よ!」
エレサは怒鳴ったが、魔人はもう答えなかった。そのかわりグラッズが言葉を継ぐ。
「サモールが言いたいのは『俺達のリーダーはむしろ弱い奴の方がいい』ってことだ。実は俺もそう思い始めている」
その言葉にサモールはしっかりとうなずいた。エレサがかんしゃくを起こす。
「弱い方がいいって! 何バカなこと言っているの、あんた達は!」
「だがな、例えばエレサ、お前は自分より強い奴が先導者として現れたとして、素直に従う気になるか? 嫌だろう。俺より強い奴なんて存在しないはずだ。そんな奴が現れたなら、まず確かめたくなる。それが本当に強いのか、本当に自分より優れているのかをな。だが確かめれば、その先導者は俺に殺されることになるんだぜ。それじゃあ意味がないとは思わないか。せっかく招いた者を殺してしまってはなんにもならないだろ」
エレサはそのセリフを聞くと目の色を濃く変え、静かに笑った。
「なるほどね。確かにそう。私もそうするよ、だけどグラッズ、あんたの言い方はおかしい。まるで自分が一番強いと言っているようじゃないか。冗談じゃないよ。一番強いのはこの私。何なら確かめてみようか」
「俺は構わないぜ。・・と、まぁ今はそう言っている場合じゃねぇな」
グラッズがわざとらしく話を戻すと、エレサは舌打ちしてまた言葉を続けた。
「わかった。確かに今言ったとおり、強い奴が来たらこの中で争いが起こると思う。だけどさ、私弱い奴になんか従う気にならない」
すると後ろでサモールが呟いた。
「気持ちの問題ではない」
グラッズも続ける。
「そう言うことだな。問題はこいつが条件に合っているかだ。覚えているだろう。俺達が呼んで、あいつが始めて答えた時の言葉を。『近いうち《戦う場所》に現れる。無知でここについては何も知らない。名はアキート』。《戦う場所》に現れたのは知っての通り。こいつが無知なのも俺はよく知っている。そもそもあそこで俺に話しかけてくること自体、非常識だからな。名前もアキヒトだという。ちょっと違うがほぼ一致だろう」
しかしやはりエレサは不満を言った。
「やっぱりおかしい。あいつは《戦う場所》って言ったんだよ。《戦う場所》に来るような奴が弱いわけない!」
そしてエレサはアキヒトに近寄り胸元をつかんだ。
自分で確かめようとでもいうのだろうか。
喧嘩を売られて晶人は慌てたが、すぐに落ちつきを取り戻す。
恐がることはない。今まで感じてきた恐怖に比べれば、これくらい何でもないことだ。
横からグラッズが静かに言った。
「だがあいつは自分が強いとは一言も言わなかった」
エレサは再度舌打ちして晶人を放した。
今まで黙って聞いていて、晶人はいくつかのことを理解することができた。
一つは彼らについてのこと。
どうやら彼らは、戦いがたまらなく好きらしい。そして常に自分が一番だと思っているうぬぼれ屋のようである。この中で喧嘩が起こらないのが不思議なくらいだ。
もう一つは彼らが実際に行ったこと。
彼らは「何か」をするために、先導者、もしくはリーダーとして何者かをここに招いた。それもおそらく『別世界』から。そしてその何者かはアキートという名でこの世界については無知であり、《戦う場所》つまり闘場に現れると答えたようだ。自分はそこにタイミング良く(・・・・・・・)現れたということだろう。
そう、タイミングよく。自分は明らかにアキートに該当していない。なぜなら彼らに名前だとか現れる場所だとかを伝えたことはないのだ。そして自分がここに来た理由である『助けを求める光の女』がいない。触れるほどそばに引き寄せられていたはずなのに。
〈面白いな、アキヒト〉
いきなり晶人の頭の中で声が響いた。晶人はきょろきょろと首を回す。しかしこの場にいる怪人は四人。そしてこの声は今まで聞いたことのない声。ならばそれは四人目の怪人の声だろう。
晶人はまっすぐ一番奥に浮いている怪人を見た。
そいつはでっかい赤ん坊のような二頭身の姿をしていた。身長はサモールの半分にも満たないが、それでも人間の赤ん坊にしては大きすぎる。
彼は縮こまったような体勢で宙に浮いていた。目をりんと輝かせ、アンテナのように尖った耳を絶えず動かしている。手足は短く実用的な物とは思えなかった。大きなマントを羽織っている。
彼は再び晶人の頭に話しかけてきた。
〈私はメイグ。私は声というものを持たないが、君の頭の中に直接話を伝えることができる。今までずっと君の思考を呼んでいた。君の考えていたことにはとても興味がある。今他の三人にも伝えてみよう〉
途端に皆の目が晶人に向いた。再びエレサが晶人ににじり寄ってくる。
「どういうこと! はっきり言いなさい!」
早くも晶人の話は彼らの頭に入ったようだ。
晶人はエレサに胸をつかまれる前に口を開いた。
「わかってる。そろそろ話に加わるつもりだった」
「いいから早く言えってば!」
「止めろ、エレサ」
エレサは諦めて口を閉ざした。
晶人は軽く息をついて話し出した。
「メイグから聞いただろうけど、俺は君達と話をしたことがないんだ。君達に対して自分の名や現れる場所、そしてに無知だなんて少しも言っていない。簡単に言えば、俺は君達が呼んでいたアキートではないってことさ。ただ俺が人に呼ばれてここに来た事は間違いないけどね。君達じゃない誰か。俺を呼んだのは光輝く女だった。彼女は『助けて』と繰り返し言っていたのを覚えている。俺の知っていることはそれだけ」
エレサが笑い出した。
「ほら見ろ、グラッズ。こいつは違うじゃないか。やっぱり先導者なんかじゃなかったんだ。諦めてアキートが来るのを待とうよ」
エレサはいかにも安心したような顔をする。しかし晶人は言いにくそうに言葉を足した。
「それはきっと、ダメだと思う・・」
エレサがうるさそうに晶人をにらむ。
〈アキヒト。君の考えは正しいかも知れない。はっきりと話してくれ〉
皆の目が一瞬メイグの方に向いた。晶人はうなずいてまた話しだした。
「偶然にしてはできすぎているような気がするんだ。アキートが『無知』と言ったのは別に問題ない。それは俺だって同じだから。ここ以外の場所から来たのなら、ここに無知なのは当然だろ。問題は場所だよ。君達と『光の女』、どうやら二つの場所で同じように人を招こうとしたみたいだ。ところがアキートが指定した場所に『光の女』に招かれた俺が現れてしまった」
「間違えたというのか?」
グラッズの言葉に晶人はうなずく。
「理由はわからないけど、入れ替わったと見るのが自然じゃないかな。俺とアキートが別人なのはきっと間違いない。俺は君達に連絡を取った覚えがないし、俺を招いたのが君達じゃないことも明らかだからね」
じれたようにエレサが叫んだ。
「結論だけ言いなよ。何が言いたいわけ!」
「俺が思うに・・、きっとアキートがここに現れることはないよ」
エレサの動きが止まる。皆も晶人を見つめていた。
サモールが小さく言う。
「確かに理屈は合う」
「そうだな。入れ替わったのならアキートはこことは別の場所にいることになる。いくら《戦う場所》で待っていても現れない」
グラッズが自嘲気味に言葉を継いだ。
「そんな! じゃあ今まで私達が待っていたのは・・」
慌て出すエレサにサモールはまた一言呟く。
「無駄になったのかも知れない」
皆沈黙した。
沈黙を破ったのは晶人だった。晶人は皆の顔を交互に眺め、思い切って口を開く。
「一つ聞きたいことがあるんだ。俺を呼んだ女の人に心当たりはないかな?」
すると頭の中で声がする。
〈なるほど、君を呼んだ者がわかればアキートの居場所は分かる。そして君がここに呼ばれた目的も。そういうことか〉
晶人はうなずいた。
〈しかし残念ながら我々の中に君の見た『光の女』を知る者はない。光をまとった者はここら辺りにも多くいるが、君の知る者とは一致していないようだ〉
晶人は肩を落とす。やはりそう都合よくいくものではない。
「じゃあもう一つ。君達が他から人を呼んだということは、その人をもとの世界に返すということもできるのかな?」
〈正直言って、わからない。本来我々は『人をよそから招く』などという能力を持っていないのだ。今回起こったことは奇跡に近い。だからこそ、このような混乱が起きたのかも知れないが〉
もっとも晶人は彼らがもとの世界に返す能力を持っていたとしても、それで日本に帰ろうとは思っていなかった。
彼らが呼んだのはあくまで「アキート」であり、その「アキート」が自分と同じ世界の住人である保証はないのだ。むしろ名前の雰囲気からして、違う世界の人間なのではないかという思いの方が強かった。
「で、どうするの? 今更新しいことなんてできないよ」
エレサがやっと言葉を見付けたようだ。
「諦めるしかないのか・・」
誰ともなく呟く。
彼らの落胆ぶりは明らかだった。しかし晶人になにかできることがあるとは思えない。晶人はこの場では招かれざる客であり、ただの部外者にすぎないのだ。
グラッズが晶人の方を見た。
「お前はこれからどうするつもりだ?」
晶人は少し考えて、しっかり答えた。
「もちろん捜すさ、もとの世界に返してくれるような奴を。そもそも俺の知る『光の女』だって、この世界の奴とは限らないだろ。だから俺を確実にもとの世界に返すことができる能力を持っている奴なら誰でもいいよ。とにかくそういうのを探すさ。この世界にそういう能力を持った奴はいないのかな?」
しかし晶人の世界にだってそんな奴はいないのだから、ここにいないと言われても不思議はなかった。困ったことではあるが。
「そうだな、少なくとも俺の知る限りはいねぇぜ。いるとしたら、あれ(・・)だけだ」
〈しかしもちろん他にいる可能性はある〉
グラッズとメイグが交互に答える。
「あれ(・・)って?」
晶人が首を傾げると、グラッズは実に気軽に答えた。
「超越者・皇帝リーミアだ。あの化け物なら何でもできるだろうぜ」
しかしその途端皆の鋭い目がグラッズに向いた。一瞬何が起こったのか晶人にはわからなかったが、すぐにその視線もやわらぎ皆は何事もなかったような顔をする。
晶人は自分には関係のないことだろうと思い、あえて口をはさまなかった。
「そうか、じゃあ俺はいなくなるよ。もう関係ないんだろう? 最後にそのリーミアがいるっていう場所を教えてくれよ。取りあえずそこに行くことにするから」
今度は晶人に皆の視線が集まった。その目は確かに何かを訴えかけていた。
「どうかしたのか? まさか遠いとか」
しかしグラッズはやはり軽く答える。
「そんなことはねぇよ。あれ(・・)のいる所は誰でも知っている。その辺に転がっている奴等にでも聞いてみればいい」
「ああ、わかった。じゃあな、グラッズ。助けてくれてありがとう」
晶人は頭を下げると、怪人達に背を向けて歩き出した。
「ちょ、ちょっと」
するといきなり晶人の前にエレサが立って、行く手をさえぎった。
「グラッズ、あんたおかしいよ。こいつを放って置いていいと思ってるの? 私達のことを知られたんだよ!」
晶人は不思議に思う。自分は聞いてはならないとてつもないことを、聞いてしまったのだろうか。
「もしかして、よそから人を呼んだということが知れると困るのかい?」
「当然よ! そんなこと知れたら、私達がリーミアを狙っていることが・・」
「エレサ!」
「あっ・・」
エレサは慌てて口を押さえる。
「バカか、お前。リーミアのことを言っちまいやがって」
「は、始めにリーミアの名を出したのはあんただろ!」
エレサは負けじとグラッズに怒鳴りつける。が、晶人から見てもエレサの方が分が悪い。
「俺は自分達がやろうとしていることについては、何も言っていない」
「確かに。そんな話、俺、始めて聞いたぜ。忘れるから許して下さい、なんてわけにもいきそうにないなぁ」
エレサがキッと晶人をにらむ。
「き、聞かれたからには・・」
エレサが晶人の胸をつかむと、途端にばちばちとはじける音がした。
しかし晶人は別段表情を変えずにエレサを見返していた。彼女が本気を出せば自分が死ぬのは明らかだし、抵抗は全くの無駄である。
「自分で勝手に言ったんじゃないか」
「く・・、と、とにかく!」
エレサにつかまれている部分の服がはじけ飛んだ。
「自分勝手な」
「・・」
エレサは目をまっすぐ見返されて当惑した。けんか腰で来るような相手なら、倒すことにためらいはない。今までずっとそうだった。しかしこう無防備で見つめられると、どう対処していいのかわからなくなる。
「止めろよ、エレサ」
グラッズが軽い口調で助け船を出した。
「だったら逃がしてもいいって言うの!」
エレサのやり場のない怒りがグラッズの方へ向いた。
「いや、まぁ、そりゃ確かに逃がせないけどよ・・」
グラッズも口ごもって肩をすくめた。
リーミアについての話はよっぽど聞いてはいけないことだったらしい。
晶人は頭の中で簡単に話をまとめた。
彼らは皇帝リーミアという名の「何でもできる化け物」を倒そうと計画していたのだろう。アキートというのはその為のリーダーであり、先導者であるに違いない。
確かにこんなこと第三者に聞かれては困るだろうが、それは晶人のせいではない。
いきなり太いサモールの声が響いた。
「アキヒトはリーミアの許に行くと言った」
はじかれたようにグラッズは顔を上げる。
「! おいアキヒト。お前リーミアの許に行こう(・・)とできるんだな!」
「? 行くのが難しいのか?」
晶人はエレサに胸をつかまれたまま首を回した。しかしグラッズは首を振る。
「いや、そうじゃない。ただ行こうと思える(・・・・・・・)かどうかの話だ」
「そりゃ、行かなくちゃならないだろ。俺が帰る為には必要なことなんだし・・」
「それで充分だ。サモール、お前の言いたいことはわかったぜ」
「何の事だか全然わからないよ!」
エレサは晶人を放すと大声で怒鳴った。のけ者にされているようで、気に入らなかったらしい。
サモールが答える。
「アキートがアキヒトであっても構わない」
「?」
エレサはまだ首を傾げている。
エレサはどうやらものを考えるのが苦手のようだ。今のやりとりだけで、晶人にも彼らの考えていることの見当は付いた。
たまりかねてグラッズが説明を始めた。
「つまりだ。もう俺達はよそから人を呼ぶというまねができない。もともと俺達の中にそんな能力を持った者はいないんだからな。だったら今まで考えていた計画は、諦めなくてはならないことになる。だがもっと根本的に、俺達がよそから人を呼んだ理由を考えてみろ。俺達はただリーミアの許に行く先導者を求めていたにすぎないんだ。それが向こうから連絡してきたアキートである必要があるか? アキートにしろ俺達はその姿さえも知らないんだぜ」
「回りくどい! もっとはっきり、言いたいことだけ言いな」
エレサが叫ぶ。前置きはいらないと言った顔である。
グラッズは少しあきれたような顔をして言葉を続けた。
「アキヒトはリーミアの許に行くと言っているだろう。俺達はリーミアの許に行く為の先導者が欲しい。先導者がアキートである必要はないはずだ。アキヒトだっていい。アキヒトにアキートの代わりを、先導者をやってもらえば同じ事だろ」
晶人の予想通りの説明だった。先導者という者が何をするのかはわからないが、晶人でもいいということは、力が強くある必要はないのだろう。
そしてまた晶人の予想通り、エレサが反論した。
「ちょっと待ってよ。じゃあ私達はこいつの言うこと聞かなくちゃならないの! こんな弱い奴の!」
グラッズが静かに言う。
「前にも言ったように、強いか弱いかは関係ないはずだぜ。そもそも他に方法があるか? 来るはずのないアキートを待つのも、また奇跡を願って先導者を呼んでみるのも、どっちも意味があるとは思えねぇ」
「それはそうだけど・・」
「わかんない奴だな。俺達は一刻も早くリーミアの許に行きたいんだ。無駄な時間は過ごしていられねぇ」
「・・」
自分が何をやらされようとしているのか。
彼らの話からその全てを理解するのは難しかった。
先導者。
先に導く者、ということはリーミアの許に自分が彼らを案内しなくてはならないのだろうか。この世界のことを何も知らない自分にそれは不可能だ。
〈君に難しいことをさせる気はない。我々にとって難しいということだ〉
頭にメイグの声が響く。この声はここにいる全員に聞こえているらしく、皆がメイグの方を振り返った。
〈今までずっと君の思考を読んでいた。君は思考をまとめるのが早いようだが、あまりにも無知だ。君が我々の提案を受け入れてくれるのなら、君のわからぬことを全て説明しよう。この提案は君にとっても有益なはずだ。君は弱すぎる。一人でリーミアの許に着ける保証はない〉
「さっきグラッズがリーミアの許に行くことは難しくないって・・」
〈行くことは難しくない。道は簡単だ。ただそこまでに何があるかは我々にもわからない。我々は何があろうとも関係ないが、君にとってはそうではないだろう。私も君の思考を読んでやっとそれを理解した〉
「そんなに弱いの、こいつ? ますます従いたくないな」
エレサがまた愚痴を言う。しかし晶人は気にせずにうなずいた。
「お互い利用できるのなら利用した方がいいね。アキートの代わりが俺に勤まるのなら喜んで協力するよ。俺も早くリーミアって人の所に行きたいから」
〈では決まりだ。君は我々のリーダーであり先導者のアキヒトだ。取りあえず君のわからないことを説明していくとしよう。君がわからないことが何かは、だいたい理解した〉
つまり晶人の考えを読んだということだろう。しかし、こう考えが筒抜けだと少しやりにくいような気がする。
〈まずこちらのことを説明する前に、君のいた『世界』というものについて考えなければならない。だが、私は君のいた所についてまるで理解できなかった。君の『世界』とは君が『宇宙』と呼ぶものなのだろうか?〉
「・・」
晶人のいた世界。よく考えてみるとその説明は難しい。確かに空間的に考えるのなら、それは宇宙であり、地球であり、日本だろう。また数学的に考えるのなら、三次元世界と言えるのかも知れない。しかしそのどれもが、的確にこの世界との違いを表しているとは思えなかった。
〈君の『世界』とは比べられないようだが、我々の世界についてのみ説明するのなら、ここは『皇帝リーミアの世界』だ。リーミアはここにいる全てのものを支配し、ここで我々が何をすべきかを教えた。君が『闘場』と呼んでいた《戦う場所》を与えたのもリーミアであり、『壊す者』や『作る者』の役割を与えたのもリーミアだ〉
「壊す者?」
「何、こいつ、そんなことも知らないの? 信じられない」
〈アキヒトは何も知らない。『壊す者』とは『作る者』が作った物を壊す者達のことだ。我々も『壊す者』だ。そして『作る者』とは『壊す者』のために物を作る者達だ〉
「・・? 何を作り、何を壊すって?」
〈あらゆる物を作り、あらゆる物を壊す。例を挙げるなら、『作る者』の中には衣服や食べ物、建物や人を作る者などがいる。我々は壊す者の中でも、『人を壊す者』だ〉
晶人には話が漠然としすぎていてよくわからなかった。あまりにも世界観が違う。
「人を壊すのは、人が増えすぎないようになのかな?」
〈理由は知らない。人を壊す事が我々の役割なのだ〉
「・・」
〈ここまではいいだろうか〉
いいわけがない。この社会の仕組みがまるで理解されてこない。
しかし晶人は思う。全てを理解しようとすること自体が間違っている。もともとここは自分のいた所とは大きく異なった世界だ。理解するのではなく、そういうものなのだと思った方がいい。
晶人は頭の中を少し整理してから、力強くうなずいた。
〈では我々のことについて話していこう〉
メイグはゆっくりと語り始めた。
『作る者』、『壊す者』というと乱雑な印象を与えるが、実は規則めいた部分が少なからずある。
特に『壊す者』についてはかなり厳格なルールがあった。壊していい物、壊していい状況、それらがほぼ決まっているのである。
規則は全てリーミアの定めたものと言われているが、これを破るのは彼らにとって難しいことだった。よほど逆らう気持ちを持たなくては、自然と規則に従ってしまうのである。リーミアのルールとはそういうものらしい。
特に『人を壊す者』というのは危険な存在であり、ルールは厳格だった。
もうかなり前、突然《戦う場所》が現れた。作ったのは『建物を作る者』達であろうが、作るよう命じたのはリーミアに違いなかった。
そこは『人を壊す者』達が集まり、互いに殺しあう場所だった。
《戦う場所》にもリーミアの定めたルールはあった。一日の対戦は一人五試合、不可抗力、つまり相手が檻の中に入ってきて自分に危害を加えたとかそういうものでないかぎり、乱闘してはいけない。
怪人達はただ従い、殺し合うのみだった。メイグを始めとした四人も、あえてそれに逆らうことはしなかった。
そんなある日、メイグは突然、リーミアの許に行かなくてはならないという感情を持った。
はじめはその理由が分からなかったが、じきに気づいた。ここのところ戦いに飽きてきていた。あまりにも相手が弱すぎる。自分が満足に戦える相手は超越者リーミアだけなのではないだろうか。
しかし問題があった。自分たちは住む場所を変えない。住む場所を変えようという気持ちすら浮かばないのだ。
日ごとにリーミアと戦いたいという気持は強くなるが、身動きがとれない。
そこで彼は、自分と同じ考えを持つ者がいるか、探すことにした。戦いたいという感覚は隠しておく必要があるので、リーミアの許に行きたいという感覚があるかどうかを問う内容にした。
メイグは脳波を武器にしている。特定の波動を広く飛ばすことは難しいことではない。
メイグはできる限り広く波動を飛ばしてみた。
大抵の怪人達はそのような波動に対し無関心であった。しかし何人かが答えてきた。それが、サモール、グラッズ、エレサという三人の『人を壊す者』達だった。
四人はすぐに集まり、考えた。皆意見は一致していた。リーミアと戦いたいのだ。そのためにはリーミアの許に行かなくてはならない。最も強いはずの自分が超越者たるリーミアの存在を許せるわけがない。リーミアは排除せねばならない。最も強いのは自分でなくてはならない。
こうして四人は強く結束し、リーミアの許に行くことにした。超越者の存在を否定するため。
ところが問題があった。誰一人としてこの計画を実行しようとできなかったのである。
集まって考え、計画を立てることはできる。しかし誰も実行できない。実行しようとする気が起きない。
時間だけが無駄に流れた。日毎にリーミアへの戦闘欲が増していく。
メイグはそのうち気づいた。ここから出る気が起きないのは、リーミアのルールが働いているせいだと。
リーミアのルールに影響を受けない人物が必要だった。その人物が、先導者として自分達をリーミアの許に連れていかなくてはならない。
四人はすぐに考えをまとめ、先導者を呼び出すべく行動をとることにした。と言っても四人の中にそんな能力を持つ者はいなかったので、とにかく念じていようということになった。
それから数日後、四人がいつものように集まり念じていると、いきなり頭に情報が流れてきた。
『近いうち《戦う場所》に現れる。無知でここについては何も知らない。名はアキート』と。
〈我々はそれから待ち続けてきた〉
「確かに話を聞く限り、先導者がアキートである必要はないね。アキートの役割が君達を導くことだけなら、それは俺であっても構わない」
〈そうだ。我々もこれ以上、待ってはいられない〉
一応筋が通っているような気もするが、晶人にはわからないこともたくさんあった。
例えば一つはリーミアのルールというのが中途半端な概念であるということ。
そもそも考えることは許されて、行動することは許されないなど、ほとんど生殺しに近いルールだ。そのくせ、他から人を呼んで引っ張っていってもらうのは大丈夫、というのだからわからない。
もう一つは怪人達の考え方だった。話を聞いていても超越者を許さないという行動の根拠が曖昧だ。単に強い奴と戦いたいだけなら、別にリーミアにこだわる必要はないように思える。
〈君のように、こことは違う所から来た者に我々のこと全てを理解してもらうのは難しいだろう。しかし君が全てを理解できるまで待つような時間はない。君がリーミアのルールの影響を受けないとも限らないのだ。そうなれば我々のしようとしていたことは、全く意味が無くなってしまう〉
「わかっているよ」
晶人が苦笑して呟いた。メイグはいつでも晶人の心を読んでいるらしい。
「何がわかっているの?」
エレサが首を傾げた。今の会話は晶人以外聞こえなかったようだ。
「俺が君達のリーダーになって、君達をリーミアの許に連れて行くってことさ」
「そうでなくちゃな。もしお前がそれを断ったら、俺はお前を殺さなくてはいけなかったんだ。何しろエレサのせいで俺達のことを知られてしまったんだからな」
グラッズが物騒なことを楽しげに言った。晶人はまた苦笑した。
「それもわかっていたよ」
もっとも晶人には、他の人がこんな内容を知ったとしてもリーミアのルールとやらがある限り問題がないように感じた。そもそもリーミアを倒そうとすることはタブーなのだろうか。彼らはそう考えているようだが。
「ところで、俺はいつ、どうやって、どこに出発すればいいんだ? 計画自体はできているんだろ」
途端に晶人の頭にここの地理についての情報が入ってきた。メイグに違いない。意外と近い。ここからは三つ目の町だ。
「いつ出発するる?」
晶人は全てを聞くとまた口を開いた。
「いつでもいいよ、私は」
「私もだ」
「早い方がいいとは思うぜ」
〈君が決めればいい。そもそも我々はここを出たいとは思えないのだ〉
皆口々に言う。
どうやら少しだけ希望が出てきたようだ。わからないことはそのうち理解していこう。とにかく今は自分のやれることをやるだけである。
「じゃあ、明日。今日はもう日が暮れるだろうし、明日の朝出発しよう」
皆は晶人の言葉にただうなずいた。
時間がたつと自然と部屋の光が消えた。部屋は闇に閉ざされる。
消えて始めて気づいたのだが、部屋の明りは壁が直接光っていたものらしい。
晶人が少し体を動かすと、服が背中の傷をこすり、しびれるような痛みが走った。
晶人は壁を背に座り、じっと考えをめぐらせた。
今日のこと、これからのこと。そして自分の先の行動。考えることはいろいろある。もとの世界のことについては何も考えなかった。誰が行方知れずの自分を心配していようと、今の自分に直接関係はない。考えればマイナスの感情に押しつぶされて行動できなくなるだろう。
怪人達はあれからずっと黙ったままだった。
晶人の座る場所のずっと前にサモールが立っていた。その更に向こうにはメイグがいる。エレサとグラッズは入り口の近くで壁により掛かり座っていた。
晶人は座っていることにすら疲れて、硬い床に横になった。途端に強烈な睡魔が襲ってくる。
思っていたよりずっと疲れているようだった。晶人はあっという間に眠りに落ちた。
「私、寝床に帰る」
それからしばらくしてエレサは闇の中で立ち上がり、脱ぎ捨ててあったコートを身につけた。
「本当にアキヒトを信用して良いのか?」
サモールが静かに呟いた。エレサはすぐに振り返る。
「私は信用してないよ。あくまで仕方が無く。私は弱い奴が嫌いなの」
「俺はアキートなんて野郎よりもましだと思うぜ。こいつには裏がない。自分が弱いって事をよく知ってやがる」
〈彼は味方ではないのかも知れない。しかし、敵ではないことも明らかだ。我々はリーミアの許に行く手段を持っていない。だからこそ、彼に従うことがそれほど悪いことだとは思わない。それに私もやはり彼がアキートよりはいいのではないかと思う。アキートが我々に語ってきた時のイメージはあまりにも超越的すぎた。超越者リーミアを倒しに行くために超越した者を使うことは、我々自身の力を否定することにもなる。アキヒトこそ先導者として適任なのではないだろうか〉
「勝手に言ってて。私は帰る」
そしてエレサはさっさと部屋を出ていった。
グラッズも立ち上がる。
「意見が割れるな。仕方がないか。俺も行くぜ。こんな時間に眠る気になんかなんねぇ」
日は完全に沈んだ。




