第十章 それぞれの時間-8-
雪崩れ込むようにミーシャへ向かってくる少年達の動きを読むのは、容易なことだった。
軽い身体を生かして、ミーシャはほいほいと少年達の頭を踏み台にし、背後を取っていく。
上から覆いかぶさるようにしてくる少年の足元をすり抜け、またも背後をから蹴っ飛ばした。
「ぎゃっ!」
正面からでも、拳を腕で止めて、腹に一発。
最後は挟むようにして殴りかかってくる少年達の頭部に、素早く跳んで同時に蹴りを入れた。
凄むように取り囲んでいた少年達は、いつの間にか全員呻きながら地面に寝ていた。
「千回にしておけばよかったかなぁ?」
「……それ、僕もやるの?」
「え?」
心底嫌そうな声音に、ミーシャは我に返った。
一人冷めた目をして見ていた少年に、ミーシャは少し考え、頷いた。
「そうね、君は止めなった罰として、五百回やってね」
「…………」
少年は嫌そうな顔で何か言いかけたが、結局は従った。
地面に十人ずつ二列に並ばされた少年達は、ひぃひぃ言いながら、上体を起こしていた。
「ほぉら。まだ腹筋だけで半分もいってないじゃない。陽が暮れちゃうよぉ?」
「っそぉ……」
「オレ、もう……むりぃ……」
「泣き言言わない」
「しぬ~……」
「腹筋しただけで死なない、死なない。あなた達が、腹筋から先って言ったんじゃない? ほらほら、もっとはやくやる!」
そう発破をかけても、彼らの体力のなさは分かっていた。続々とその場でまた動けなくなっていく。
(これは明日からの訓練の予定を組み直さないと……)
と、一人黙々と腹筋を続ける者がいた。
(へぇ、結構体力はあるんだ。確か、名前はディノスだったっけ? 大人しい見た目とは裏腹ね)
脱落していく周りには目もくれず、彼だけは、最後まで腹筋と腕立て伏せを終わらせたのだった。




