第九章 それぞれの仕事-18-
先ほどまでよりも、その植物は大きくなった。いや、まだ成長している。
夜の闇をすべて吸い込むような勢いだ。上を見れば、どちらが夜なのか分からないほどだった。
「何を栄養にしてんのよ⁉」
「こいつっ……切ってもまた生えてきやがるし、魔法も効かねぇみてぇだ!」
いち早く幻獣の元に辿り着いたミーシャとエザフォスは、すでに闇の植物と交戦していた。
が、どれもあまり手応えがない。
『本体が、別の所へ移動したようだ』
「移動? どうやって⁉」
タクシィが、向かってくる闇の蔦を上手くかわしながら、広範囲を索敵する。
『何か、……他所にこいつが出現したキッカケがあるらしい』
『ここにいるのは、ほぼ抜け殻ということか?』
アベレスも、こんな幻獣を見たことがないらしく、困惑していた。
『闇の属性だからな。どう動くか全く予想ができない』
形無き者だ。光と闇は、幻獣達にも把握し切れていない存在だった。
ただ、触れてはいけないもの、とは見た瞬間感じた。
「空からなんか見えねぇのか⁉ タクシィ!」
エザフォスが岩肌に隠れながら叫んだ。
『待て、今……む? あれは、カズホとルベルか?』
「えぇ⁉」
「あいつら、また……」
『街だ。街の中心部にいる!』
『戻るぞ!』
「おう!」
「待って! 二人とも!」
踵を返しかけるエザフォスとアベレスに、ミーシャは言う。
「ここで、待ちましょう」
「なっ、……ミーシャ何言ってんだ⁉ カズホがあぶねぇかも……」
「大丈夫、カズホなら大丈夫。あたし達は、こいつがこれ以上何かしないように見張りましょ。それに、本体がこっちに戻ってきた時、みんな街に戻ってたら、倒し難いわ」
ミーシャの提案に、エザフォスは若干戸惑っていたが、小さく頷いた。
「分かった。信じよう」
「うん」
ミーシャは、闇の植物を見詰める。
さっきよりもまた成長したようだ。
どこかで、街中にいる本体と繋がっているはずだ。
カズホは、必ずそれを倒してくれる。彼がそれを倒してくれれば、後は――
そして、幻獣が出現した穴を見る。それはまだ開いたままだった。
彼をここに近づけたくない。それも、ミーシャの本心だった。
カズホが帰られるかもしれない、その穴。
どうやったら、永久に開かくなるのだろうか――
(あたし……なんてひどい奴。でも、もう、傍にいないと落ち着かないんだもん。こんなにも……)
タクシィに掴まる手に、ミーシャは無意識に力を込めていた、
秩序の鷲は、何も言わずに、宿主の心境をただ感じていた。




