第九章 それぞれの仕事-13-
宿屋に戻れば、一階の食事処にミーシャとエザフォスが待っていた。
「おかえり! カズホ」
「どうだった? 役所の仕事ってぇのは?」
二人とも仕事内容を聞きたくてうずうずしているようだった。
が、何故か二人の顔を見たら、また肩が重くなった。
「まあ、いろいろやったよ。はあ……」
「どうかしたの?」
「変な奴に絡まれたりしたのか? あそこは人が多いからな」
「まあ、変な……いや、仕事は慣れたらどうにかなりそう。今日も西へ行ってみるか?」
あまり話したがらないカズホに、ミーシャとエザフォスは顔を見合わせた。
が、西の調査はしなければならない。
「さっきタクシィに空から見てもらったけど、まだ穴は開いていなさそう」
「アベレスにも土から何か聞こえねぇか調べてもらったけどよ、変な感じはないそうだ」
『俺様が提案したのだ。わざわざ西に赴かなくても、俺様達の耳や目を使えとな』
「アベレス。約束忘れたの?」
『あっ、パン』
それだけ言って、アベレスは引っ込んだ。
道理で静かにしていると思えば、ミーシャから何かしら約束事をさせられたのだろう。
が、カズホにはそれに突っ込む気力もなくなっていた。
「そうか」
どっかりと椅子に沈み込むカズホを、ミーシャは心配した。
「ほんと大丈夫? 今日はあたし達が調べるから、カズホは先に休んだら?」
「そういうわけにはいかないさ。昼間も、ルイーズさんに調査はちゃんとするって約束したし」
「リーダーが倒れちゃ、意味ねぇだろ。夕刻に穴が開かなかったとすりゃあ、今日は静かそうだしな」
カズホが返答しかねていると、決まって口を挟む者がいる。
『カズホ、仲間の言葉は大事だ。今日のところは、大人しくしているのだな』
いつもだったら反発しているが、それすらもできない。
相当疲れていることをカズホは実感した。
「分かった。お言葉に甘えるよ。ごめんな、二人とも」
「いいってことよ。代わりに、俺がへばったら、若いもんが頑張れよ」
「おじさんになるって大変ねぇ」
「ああ、そうなんだよ。おまえらも、いずれこうなんだから、しっかり見習え」
「はいはい」
二人の普段通りのやり取りに、ふっとカズホは笑った。
が、同時に眠気が襲ってきた。
(お節介だったのかな?)
二人に調査を任せ、カズホは自分の部屋へと戻ったのだった。