第七章 穴-6-
「で、ルイーズさんからの仕事だけど、俺は、……正直受けたい。帰れるキッカケがどっかにあるかもしれないからさ」
カズホの言葉に、ミーシャもエザフォスも、ついでにアベレスも頷く。
ルイーズの仕事はこうだった。
『最近、幻獣が現れる場所はほぼ決まっているのです。西の街道からの出入口、そこが最も多い。何故そこから奴らが現れるのかを、調査してほしいのです』
夜の警護というよりも、根本的なことを調べてほしい、と。
何故、自分達に頼むかという、カズホの問いに、ルイーズは応えた。
『各地にいる傭兵の数は、現在三千人を超えています。しかし、幻獣を見に宿した魔法使いは、千人弱。その中で幻獣との戦いに慣れ、信頼できる者はさらに限られています。ミーシャには、最初から頼もうと思っていましたが、彼女一人では荷が勝ち過ぎてしまう……そう思い、時を待っていたのです』
新人傭兵の時からお世話になっているルイーズの言葉に、その時のミーシャは心が揺れているようだった。
ルイーズは続けた。
『幻獣一体ならば、数で押せることもあります。が、もし発生している箇所となれば、普通の人間では……ですから、あなた方のお力が頼りなのです。チームとして機能する傭兵達でなければ、この仕事は任せられません』
それから、ルイーズは立ち上がり、頭を下げた。
『お願い致します。サリアを、この国の行く末を頼めるのは、あなた方だけなのです』
カズホは、長のその姿に、すぐさま仕事を承諾しかけたが、三人で話し合うという選択肢を取った。
本当に信用できる人物なのだろうか――ルイーズ・ミツォタキスという男は。
「頭の切れる奴だとは思うぜ。恐らくだが、俺の団を潰す仕事を紹介したのは、あいつだろう?」
「ええ」
エザフォスにミーシャが応えた。
「なら、やっぱ先を見ていたんじゃねぇか。俺は元傭兵だ。しかも、自慢じゃねぇが魔法が使えない時もそれなりの功績を上げていた。それこそ、上に信頼され、仲間殺しの勲章まで頂くほどにな」
「その、仲間殺しってなんです? エザフォスさん」
カズホが言えば、エザフォスは息を吐いた。それは、質問に対してではなく、カズホの言い方に不満があるようだった。
「そろそろ『さん』付けや畏まった言い方はやめようや、カズホ。昨日今日出会ったもんじゃねぇんだから」
「いや、昨日出会ったばかりだけど」
カズホのツッコミに、エザフォスは「それもそうか」と笑い飛ばした。
「とにかくだ、そんな畏まんな。『エザフォスさん』って呼ばれるたんびに、むず痒くなれぜ」
体を掻く真似をするエザフォスに、ミーシャは面白がっているようだった。
「じゃあ、あたしも呼ぼうかしら? エザフォス『さん』」
「なら、俺はミーシャ先生とでも呼んでやろうか? 魔法使いでは、先輩だからな」
「やめてよ! 言わないから!」
これにはカズホも笑うしかなかった。




