第七章 穴-4-
三人でああでもない、こうでもないと言い合っていると、ホロメスが斧を持って、店に入ってきた。
「ほら。ついでに、柄も綺麗にしておいた」
「助かるぜ、オヤッさん」
エザフォスの感謝に、ホロメスはうんうんと軽く頷いた。が、さっきよりも心なしか嬉しそうにも見えた。
「ミーシャ、それが気に入ったんなら持っていきな」
「ちょっと高い」
「いくらならいい?」
「三割くらい……まけて?」
「二割八分でどうだ?」
「うぅん……」
「分かった分かった。三割まけてやる。剣もおまえがいいようだ」
「ありがと! ホロメスさん!」
ミーシャが早速細剣を一振りしていた。
「うん、良い感じ」
満足そうな彼女に、カズホも笑みを浮かべた。
自分はどうしようと、ともう一度店内を見回す。どれもカッコイイが、何すればいいのかは正直分からない。ミーシャからもらった剣は使いやすいから、それを打ち直してもらう方がいいのだろうか。
カズホが悩んでいると、ホロメスがさっき打っていた剣を持ってきた。
「おまえさんには、これがいい」
その剣は、店頭でホロメスに打たれていた時よりも、さらに輝いていた。陽の光がまさにその中に封じ込められているような、そんな感覚までする。
ホロメスは、その剣を愛おしそうに眺めた。
「この剣は、俺がずっと手塩にかけて打ち続けてきた物だ」
「そっ、そんな大事な剣を、俺なんかが持てないです」
カズホが遠慮すると、ホロメスは刃を立てるようにし、そこへ己の顔を映した。反対には、カズホの顔が映っている。
「刃がしっかりとおまえさんを見ている。気に入られた証拠だ」
「え……?」
「武器はな、使い手次第でいくらでも姿を変える。殺すためのただの道具、他者を生かす道具、己の意志を反映させる手段……おまえさんなら、この剣をどう使う?」
「どう、使う?」
それからホロメスは、柄をカズホへと向けた。
「持っていけ。金は半額でいい」
提示された額は、やっとこの世界の金銭感覚が馴染んだカズホから見ても、手軽なものだった。
それに背を押されたわけではないが、カズホは柄を握る。
「ありがとうございます、ホロメスさん」
手にしっかりと吸いつく柄に、カズホは驚いた。
「やっぱり、気に入られたな」
はじめてホロメスが満面の笑みを見せたのだった。