第十二章 新たな一歩-16-
『これは、ペリオズリモス・ケレイスですね』
ラオ・タオが、無感情に呟いた。
『知らん奴だ』
『また新しい奴が生まれたのか』
アベレスとタクシィは、すでに臨戦態勢だった。
が、ラオ・タオだけはまだ小猿の姿のままだった。
『ぼくも知ったのはついこの間です。最近、この手の者が多いみたいですよ』
固まっているカズホの肩で、ラオ・タオはやはり感情なく言った。
「どんな奴だろうが、放っておくわけにはいかんだろ。行くぞ!」
「タクシィ! あいつを上から叩くわよ!」
『了解した』
タクシィがミーシャを乗せて、宙へと舞い上がる。
アベレスも、エザフォスと共に地を駆けた。
カズホは、動けずにいた。
『カズホさん、どうされたんですか?』
「……俺のせいだ」
『ならば、あの人に食われてあげればいいじゃないですか。彼女はそれで満足しますよ』
「ッ⁉ やっぱり、あれは……アリキ」
カズホの微かな声に、紫の蔦はぴくりとして止まる。攻撃を仕掛けようとするミーシャやエザフォス達には見向きもせず、そしてまっすぐカズホへと矛先を向けた。
「ちょっ! カズホ!」
「何ぼぉっとしてやがる⁉ 避けろ!」
食われてやればいい――
カズホの耳に、木霊したその声。
『あなたは、一体何を信じているのですか?』
ラオ・タオの言霊がカズホをその場に留めた。
「ぐっ……」
絡まる蔦に、息が詰まる。
しかし、抵抗という文字が浮かばない。
カズホはそのまま紫の蔦の中に埋もれていった。
息が詰まる。
暗い世界が、どこまでも広がっている。
言霊が、反響する壁がないこの場で響くのだ。
『なぜ……? なぜ?』




