第十二章 新たな一歩-5-
「あっ、エザフォス、新調したぶっ……⁉」
「馬鹿ッ……声がでけぇよ」
背後から兵士に声をかけられたが、エザフォスは慌ててその彼の口を塞ぐ。
その間に、カズホは笑いながら、しかもその笑みは今まで見たこともないほど優しい雰囲気だった、その女と奥へと引っ込んでしまった。
訳が分からないといった風の兵士に、困惑を隠し切れないエザフォスは訊く。
「さっきの、カズホと一緒にいた女は誰だ?」
「へ? あ、ああ、この役所一可愛いアリキだよ。ほんと、今日も可愛いよなぁ」
どうやらこの兵士は、アリキというあの女が好きらしい。
「そんなこたぁどうでもいいんだよ! カズホと、……その、どういう関係なんだ?」
鼻の下を伸ばす兵士に問い質す声にも力が入った。
ただ仕事の話をするにもあの密着度はない。あの笑顔はしないだろう。
兵士は首を傾げていた。
「さ、さあ……? なんでも、アリキが困ってるとこをカズホが助けたらしいことは聞いたが……くっそぉ……俺がいたら、俺が真っ先に助けにいったのに……たまたま非番だったんだ。いや、でも、焼いてもかっこ悪いからな。俺は懐が広い。カズホがいるのも後四日だろう。その後、また俺の良さに気付いてもらえればそれで」
「おまえのことはいいんだよ」
兵士の力説を一掃したエザフォスの頭に、さっきの光景が何度も繰り返される。
そして、浮かぶ少女の姿。
(ミーシャには黙っておいた方がいいか……)
話を聞いてくれと言わんばかりの兵士に、新調した武器を渡して、エザフォスはとっととその場を去った。
なぜか、その後はどっと疲れ、ホロメスにまで心配されたエザフォスだった。




