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第十一章 大切な想い-8-

 それから、人目を避ける生活だった。

 故郷で犯してしまった罪は、すぐにでも親子を追ってきた。賞金首として、各役所に出回ってしまった。

 そうなってしまえば、役所から傭兵の仕事を受けられない。金持ちや世間的にあまり良く思われない個人から受けるしかなかった。

 それでも、スィエラは仕事を慎重に選んでいた。他の傭兵と組まずに、個人で受ける仕事を多くしていたが、夜の警護だけはどの町や村でも必ず、勝手にだが参戦していた。

『戦うことが、体に染みついている』

 父が悲しげな顔で、そう呟いたことを、ミーシャは憶えている。

 だが、きっと父は放っておけなかったのだろう。傭兵として、魔法使いとして、その運命と責任が、彼を戦場へと駆り立てていたのだ。

 例え、社会的に抹殺された立場にあっても、父の強い信念が、ミーシャは好きだった。例え、人殺しだとしても、愛する気持ちは変わらなかった。

 魔法使いという噂が立ち、どんな地にも長くいれらなくても、ご飯が食べられない日が続こうとも、ミーシャは父について行く覚悟を幼いながらも持っていた。

 風を纏う父の背を、ずっと見てきたから――

 だから、父が自分を置いて姿を消した時、信じられなかった。

 アイマンから、父がミーシャへ『愛している』と言い残したと伝えてもらったが、それも耳に入らなかった。

 ミーシャは、泣いてばかりで、アイマンと彼の妻ハーラに迷惑をかけていた頃を思い出していた。

「お父さん……本当に、生きているの?」

 タクシィが静かに『ああ』と言った。

『我を解放した時、おまえの父親はまだ生きていたのだ』

 ミーシャは、頭を殴られたような衝撃を受けた。

 魔法使いは、自らの意志のみで幻獣を解放することはできない。それは、人間と幻獣の契約だからだ。幻獣も離れる意志がなければならない。

 タクシィ・アエトスのように、家系に縛られている者は、特にその家系の血が途絶えるまでは自由を獲得することはできないのだった。それは、タクシィの片割れである、ハオス・イェラキも同じ。

 だから――

『スィエラは、二体同時に解放するつもりだった。だが、ハオスは、おまえの父親を心底気に入っていたのだ』

 最後の最後まで、スィエラと共にいると、ハオスは強固な意志を見せた。

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