番外編 がんばれ! 新人君!
こんにちは! 僕は新人傭兵バウルです!
今日は僕の仕事をご紹介します!
今日の僕の仕事は、ある女性に、手紙を届けること、です。
え? そんなに小さい仕事?
そんななことはありません!
仕事に大きいも小さいもない。
僕は、最近それをある人から教えてもらいました。
僕の尊敬する先輩――
先輩は本当にすごい人なんです!
あっ、今は仕事中だった。
これが終わったら、僕の先輩のことたっぷりをご紹介しますね!
では、まずは仕事仕事。
依頼者は、ドメニコスさん、二十三歳。僕よりも四つ年上の男性です。
このお手紙を、ある恐ろしい獣がいるという通りを抜けた先の家にいる女性アラーラさんへ届けてほしいというものです。
恐ろしい獣……街中に? どういうことだろう?
もしかすると、街中にも怪物が出るようになってきているのか? それはいけない。街の人達が危険に晒されている。届けるついでに、退治しよう。
よしよし、道はこれで合っているな。
見たところ、恐ろしい獣はいないみたいだけど……
あっ、猫ちゃんだ! 僕、猫好きなんですよ。
可愛いですよね? 可愛いですよねぇ? 癒されるぅ。
人懐っこいなぁ、おまえ。うん? あぁ、ごめんよ、今日は何も持っていないんだ。今度来たら、美味しい干し肉をあげよう。
バイバイ、猫ちゃん。
さあ、仕事仕事。
……おかしいな、恐ろしい獣なんかいたか?
あっ、あの家だ!
「こんにちは、お手紙を届けに参りました」
「はぁい。誰からかしら?」
「ドメニコスさんからです」
「まあ! 彼から⁉ 嬉しい! ありがとう!」
「いえいえ、どういたしまて」
こんなにも喜んでもらえるなんて、やっぱり傭兵という仕事はやりがいがあるなぁ。
「でも、彼はどうして自分で来ないのかしら?」
「なんでも、あなたの家に来るまでに恐ろしい獣がいるらしく……あっ、今はいませんでしたよ? 僕がちゃんと確認しましたから、ご安心ください!」
「恐ろしい、獣?」
「はい。でも、今日は猫ちゃんしかいませんでした」
「猫、……まさか、あいつ」
さっきまで喜んでいたのに、どうしたんだろう? アラーラさん。
顔が、怖いんですけど……
「猫が怖くて、直接手紙を渡せないってこと⁉ なんて奴なの⁉ わたしと猫とどっちが怖いと思ってやがんだ、あのへたれ駄目男がぁ!」
「ええぇええ⁉」
僕を突き飛ばしたアラーラさんは、そのままどこかへ……
な、なんだったんだ? 彼女の方がよっぽど怖いけど……
まあ、とりあえず、手紙は届けたし、報告しにドメニコスさんの元へ戻ろう。
あ、もう猫ちゃんがいなくなってる……
そうだ! 先輩を連れて、また来よう!
あっ、ドメニコスさんだ。ん? なんか絡まれてる……じゃ、ない。
あれは、アラーラさん? めっちゃ怒ってるぅ……!
「あぁ! 君は傭兵の! なんで言っちゃうんだよぉ⁉ 俺が猫嫌いで、猫が怖いから届けられなかったなんてぇ……!」
「やっぱりかぁ! てめぇ! どんだけ弱っちぃんだよ⁉ ほんとにアレついてんのかぁ⁉ あぁ?」
「ごめんなさいごめんなさい! 落ち着いてアラーラ! 君も、助けてくれよぉ~!」
「あ、いや、ごめんなさい。僕は手紙を届けるだけなんで、もう行きますね」
「ちょっ、ちょっとぉ……! こうなったキッカケは君なんだからねぇ~! 待ってくれ~!」
い、一応、手紙は届けたし、成功でいい、かな? いいよね!




