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27話

 5日目午前8時00分 残り43時間



「は?」意味不明な発言に思わず声が出た。


 柏木さんがじろっと僕の事を横目で睨む。


「いや、あの、加藤さんが金子を殺したって事です?」


「違う、小林さんはちょっと黙ってて!」


「はい、すみません……」柏木さんに叱られて本気で落ち込む僕。


「あたしも、ちょっと、わからないんだけど……」と珍しく御崎さんが言い淀む。


「あのね、加藤さんが、隆君を助けるために監視カメラの映像を消したんじゃないかって、そう言いたかったの」


 それを聞いて御崎さんは口に手を当ててしばらく考えてから口を開く。


「加藤が……斉藤の映像を……まさか、他の部屋から?! あの人、協力しないどころか邪魔までしてくるんかい!」


 若干口調が変わるほど驚く御崎さん。しかし、僕には未だによくわからなかった。


「あのぉ、監視カメラにハッキングの痕跡は無かったんじゃないでしたっけ?」


 僕の疑問に御崎さんが答える。


「以前、神谷の言動の裏を取るためにあたしは一度、あのマンションの監視カメラの映像をハッキングして落としています。ここからのハッキングは痕跡が残らないんでしょう」


 それを聞いてようやく理解した。


「しかし、よく気付きましたね。閻魔様に確認取りますけど、たぶんこの説で間違いないですよ。すごいです加奈子さん」


「えっへん」と柏木さんが腰に手を当てて胸を張る。


 学生服のポケットからスマホを取り出して御崎さんが閻魔様を呼び出す。


 しばらくすると、ドアが現れ、中から閻魔様が顔を出す。


「はい、なんでしょう?」


 閻魔様は起きたばかりなのか、疲れているからか、少し目を細めているように見えた。


「加藤を呼んでください。もしくは加藤の場所へ案内してください」御崎さんが要求する。


「出来ません」と閻魔様が答える。


「何故ですか? 捜査の協力ではありません。理由を教えてください」


「加藤はつい先ほど天国へ旅立ちました。柏木さんか伊藤さんなら案内出来ますが、そういう用件じゃありませんよね?」


 ……誰も声を発しなかった。一同唖然としていた。


 最初に口を開いたのはやはり御崎さんだった。


「まさかとは思いますけど、いや、絶対あり得ないんですけど、加藤は犯人がわかったわけじゃないですよね?」


「はい」


「じゃあどうして……」


 僕もそれが知りたかった。


「彼の未練は殺意に深く結びつくものでした。自分を裏切った金子への殺意が犯人への殺意を上回っていたので、金子が死んで満足したようです」


「加藤が金子殺害の手助けをしたという事ですか?」


「知りません」


「加藤がここから出て行った後、彼はどこにいました?」


「別の部屋を用意してそこにずっといました」


「その部屋というのは──」


「この部屋と同じです。用件は以上ですか?」


「はい……」


「では、頑張ってください」そう言って閻魔様は退室して行った。


「ど、どうしましょう……」あまりの展開について行けなくて御崎さんに助けを求める。


「どうしましょうね、どうしようもないんじゃないですか?」と御崎さんが素っ気無く答える。


「どうしようもないって……どうすればいいんです?」頭が混乱していた。


「とりあえず、斉藤の件は完全に闇に葬られました。金子殺害事件は難航を極めるでしょう。斉藤が自白することを祈るくらいしか手はありません。村上が襲われた件も相まってかなりの人員がそっちに割かれるでしょう。状況は完全に手詰まりな上に警察の捜査力は下手をすれば半減。新しい情報を待つか、今までの情報を見直すかって所ですかね」


 御崎さんはかなりイラ立っていた。


「新しい情報と言えば……」柏木さんが呟く。


 僕と御崎さんが一斉に柏木さんに注目する。柏木さんの思いも寄らない一言で捜査が進むのではというかすかな期待があった。


「連続通り魔の被害者、今日は無し?」


 柏木さんの言葉を聞いた瞬間、御崎さんが立ち上がってマップを起動した。かなり慌てている様子だった。


「どうしたんですか?」と尋ねる。


「『音声認識!死体!屋外!都内!』……くそっ……」


 検索結果は出なかった。


「なんでそんなに慌ててるんです? 被害者が出なくて良かったじゃないですか」


「馬鹿ですか? あたしが最後の被害者だったらもう情報が出て来ないかもしれないんですよ? あたしは被害者が出て貰わないと困るんです!」


 あまりに不謹慎な発言だったが、その通りだった。


「ピピー、今のは良くないよ。陽子ちゃんイエローカード」


 いつもの口調だが目が真剣な柏木さん。


「すみません、気が動転してました」と御崎さんは素直に謝る。


「連続通り魔が動かない可能性もあるということは、今までの情報から犯人を見つけなきゃいけないって事ですか?」


「もしくは今までの犯行から新しい情報を見つけるかですね」


「閻魔ちゃんの口を滑らせるとか」柏木さんが言う。


 柏木さんは本当にあらぬ方向性で鋭い事を言うなと感心する。


「あたしはそれでもいいですけど……」と御崎さんが僕の顔を見る。


「すみません、それはなしの方向で……」


「あ、そっか」と柏木さんは察してくれたらしい。


「では今日は今までの捜査に見落としや勘違いがないか検討しましょう」


「はい」「はい」僕と柏木さんが御崎さんの号令に答える。


「小林さんは加藤さんの事件から順番に、あたしは逆に最近の事件から洗い直します。柏木さんは警察の情報にあたし達が知らない情報がないか、新しい情報が入ってないかをチェックしてください」


「はい」「はい」と了解する。


「なぁ、オレは~?」久々に伊藤さんの声を聞いた気がする。


「……ネットでも見てて下さい」御崎さんはすこし考えてからそう言った。


「まかせろ」と伊藤さんが胸を叩いた。


 どうせすぐ飽きるんだろうなと思いながら、僕は事件をイチから推理し直した──


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