表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航跡 ブレギア国興亡記  作者: 秋山 文里
第1章 ヴァーガル河の戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/29

【1-22】 帝国の後詰動く 下

【第1章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n6599md/3



【地図】 航跡 ヴァナヘイム ブレギア国境 第2部

挿絵(By みてみん)


 夜更けにもかかわらず、若君・レオンの天幕に、補佐官衆が集合している。


 斥候兵からの報告は次のとおりだった。


 後方に位置する帝国増援軍各部隊は、夜陰にまぎれ西へ出立したとのこと。その数は約7万。



【10月26日8時】ヴァーガル河の戦い 地図①

挿絵(By みてみん)



「7万だと……」

 レオン以下、若者たちは息を飲んだ。


 帝国軍は後詰について、そのほぼ全軍を移動させ始めたわけである。


 前面河向こうの帝国陣営では、篝火かがりびが変わらず燦然さんぜんとしているが、その後方20キロの地点では、帝国軍兵馬は既にいないというのか。



【11月5日23時】ヴァーガル河の戦い 地図②

挿絵(By みてみん)



「西方へ動き出した――帝国兵は、ノーアトゥーンに引き揚げるつもりでしょうか」

 補佐官・ブリアンが気を鎮めながらたずねた。


「旧都に撤退するのであれば、前衛を河辺に置き去りにしたまま、夜中にこそこそ移動などすまい」


 トゥレムは持ち前の神経質そうな声を隠さずに続ける。西進は恐らく擬態ぎたいであり、どこかで必ず北上か南下をするだろう――と。


「帝国増援軍の狙いは、あくまでも我等ブレギア軍であり……」


「申し上げます!」

 筆頭補佐官による推論を遮ったのは、後続の斥候兵であった。


 帝国軍後詰は一度西方に向かい、ヴァナヘイム旧都へ引き揚げるように見られた。ところが、突如進路を南方へ変更し、遠くヴァーガル河に平行するようにして南下しつつあるという。



【11月6日3時】ヴァーガル河の戦い 地図③

挿絵(By みてみん)



 見事だ――と言わんばかりに、レオンは力強くうなずく。


 帝国軍後詰は、筆頭補佐官の読み通りに動いている。彼に称賛の視線が集まっていく。


 トゥレムは、泰然としたていを装っているようだ。しかし、最も手ごたえを感じているのも彼なのだろう。癖のある黒髪が得意げに揺れてしまうのは、どうしようもなさそうだ。



「南下する敵は、どこかでまた東進し、ヴァーガル河をこちらに向けて渡るでしょうか」

 ハーヴァが質問を継ぐ。帝国軍はブレギア軍のどこをいてくるというのか。


 御親類衆筆頭・ウテカ=ホーンスキンが敷いたブレギアの陣形に隙は見られない――図上、鳥が美しい翼を広げている。


【1-18】 形勢逆転 上

https://ncode.syosetu.com/n6599md/23/



「おそらくは……我が軍の左翼を側面からやくすつもりなのだろう」

 トゥレムは絵図に指を添えながら答える。



 最左翼……ナトフランタルとブイク両宿将の陣営である。



 御親族衆に比べ彼らの自領は狭小であり、自然じねん彼らが動員している兵数は多くない。


「帝国軍の狙いは、まずは薄い左翼を粉砕し、崩した同区域を梃子てこの起点にして、ブレギア本軍を突き崩すことにあろうかと」

 トゥレムは、自軍の弱点を冷静に指摘して推論を結ぶ。


 他の若者たちは、誰もが言葉を失っていた。筆頭補佐官は、最後に主人に対し黙礼する。


 やや()()()に口を引き結んで、レオンが応じる。しかし、それは精一杯の強がりであった。


 このまま筆頭補佐官の読みどおりに戦況が推移した場合、自軍は最左翼を皮切りに全軍が浸食されよう。


 仕上げとばかりに、対岸の帝国敗残兵まで押し寄せてきたら、


 ――ぞっとしないな。


 若者たちは一斉に息を呑んだ。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


筆頭補佐官・トゥレムの頭脳が冴えわたっていると思われた方、このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。


レオンたちが乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます。



【予 告】

次回、「闇夜の行軍」お楽しみに。


今夜の偵察の難易度は、星空の下とは比べ物にならないだろう。御親類衆はもちろん他の部隊の斥候兵も、帝国軍の動きをまるでつかめていないようだ。


 ――掴めたのは、宰相あいつ()()()()だけか。

レオンの口からは、無自覚にため息が洩れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ