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航跡 ブレギア国興亡記  作者: 秋山 文里
第1章 ヴァーガル河の戦い

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【1-13】 会議後――若者たち

【第1章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n6599md/3



【世界地図】 航跡の舞台 ブレギア国編

挿絵(By みてみん)



【席次】ブレギア国 国政の間

挿絵(By みてみん)




 東の隣国・シイナより侵攻の気配あり――急報に接し、ブレギアの国政会議は一時散会となった。


 国政の間から退出した若君・レオン=カーヴァルは、ダーナの御館みたちにおける私室に、若き補佐官衆を集めていた。


 彼等は郊外の沼畔ぬまのほとりに木造家屋をこしらえて生活している。長らく使用していなかった私室は、整理整頓されながらも、ややほこり臭い。


「いっそのこと、我らでシイナ国の軍勢を迎撃しませんか」

「さよう、いまの御親類衆であれば、我らの東方出撃を認めることでしょう」


 ――それも悪くはない、が。

 レオンはそう思いつつ、ブレギア国土図面をテーブルに拡げる。



【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部

挿絵(By みてみん)



 配下の若者たちはそれに見入っていく。だが、彼等は()()()()()ことにも余念がない。


「それにしても、ホーンスキン一族どものうろたえようときたら」

 補佐官の1人であり、主君の乳母子でもあるダン=ハーヴァが促す。


 補佐官一のファイターであり、お調子者でもある・ムネイ=ブリアンが得意の物真似を披露する。

「『ぬぁ、なぜどぁ……』ってな」


 先ほどのブラン=ホーンスキンの動揺ぶりを再現し、ブリアンは一同を笑わせる。


【1-11】 東の大国、動く 下

https://ncode.syosetu.com/n6599md/15/



 部下のモノマネについて、あまり似てないな、とレオンは思う。だが、その場を空気ごと明るくしてしまう陽気さを、ブリアンは持っている。


 ――可笑おかしいなら、素直に笑えばいいのに。

 部屋の隅で背を向けている筆頭補佐官・ドーク=トゥレムを見て、若き主人は苦笑する。黒い癖毛が小刻みに揺れていた。




 部下たちの間にひとしきり笑いの花が咲いたあと、レオンは初めて口を開く。


「はるか東方において、老国の軍勢を撃破したところで、いかほどのことがあろうか――」


 若き主人の言葉に、若き補佐官たちは一斉に談笑をやめ、床の上に身を沈める。そして、居ずまいを正した。


「帝国だ」

 レオンは国土図面に見つめたまま立ち上がると、サーベルをさやから抜きつつ続ける。


「帝国軍を粉砕して、『フォラ=カーヴァルの後継者』たることを実力で国内外に認めさせるッ」

 金髪の若者は、言葉を吐き捨てるのと同時に、逆手に持った白刃を図上に突き立てた。


 旧ヴァナヘイム領の上に刺さり、振動するサーベルの柄を見つめながら、彼はさらに口を開く。

「それも、ラヴァーダなしで成し遂げることで、より一層の効果が発揮されるというものだッ」


「「「「ハッ」」」」

 主人の言葉に、全員が頭を下げて一斉に応えた。



 この部屋の若者たちの思考は一致していた。


 名宰相・キアン=ラヴァーダの支えなしで、父王・フォラ=カーヴァル以上に、帝国相手に暴れまわる――自分たちの力を証明するにはそれしかない。


 しかし、それは、皮肉なことに、ホーンスキン一派と同じ思考回路でもあった。


【1-12】 会議後――御親類衆

https://ncode.syosetu.com/n6599md/16/



 敬礼する部下たちを見下ろしながら、レオンの脳裏には、1人の美青年の面影が消えなかった。



***



 我が君に叱られてしまいます――。


 純白の民族衣装を身にまといし彼は、光沢ある銀色の長髪を背中に流していた。


 頭髪と同色の形の良い眉を下げて、戸惑い困ったような顔をしている。



***



 ドアをノックする音が室内に響き、御曹司の思考は中断された。


「なんだ」

 補佐官・マセイ=ユーハが扉を開けると、そこにはホーンスキン家の使いだと名乗る若者が立っていた。


「レオン様、()()()()()様がお呼びです。至急、()()()()()様の執務室までお越しください」


 ジャルなんとかとは、昨今、御親類衆筆頭・ウテカが勝手に名乗り出した、この国の旧官途名だ。


「なんだとオッ」

「臣下が国主を呼び寄せるとは、何事だ」

 ブリアン・トゥレムが、訪問者に鋭く詰め寄る。


 大柄のファイターであるブリアンの凄みに、細身の知謀家であるトゥレムの詰め寄りだ。より一層の迫力がある。


「は、わ、わ、わ、わたしは、()()()()()様に、め、め、め、命じられたまででして……」

 訪問者が聞きなれぬ官途名を口にするたびに、2人の眉間のしわが深くなる。



「よい。そのようなつまらぬことで騒ぎ立てるな」

 レオンは、補佐官たちの肩を軽く叩くと、室外に出ていった。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


レオンとその仲間たちは楽しそうだな、と思われた方、このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。


ブレギア家臣団が乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます。



【予 告】

次回、「結託」お楽しみに。


「……そこで、東方への援軍は、宰相に率いていただきたいと思うが、いかがかな」

 ウテカは、痘痕あばたの残る頬をゆがめ、無理やりつくったかのような笑顔で、国政の間をめまわした。


この提案にはたまらず、西側末席の本人は銀色の眉を動かした。

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