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01 異世界転生しました!・・・で、私は誰?

「知らない天井だ……」


 思わず呟いたけれど、そもそも天井じゃなくてベッドの天蓋? かな。ベッドの四隅にある柱から布が渡してあって、その布でベッドが覆われている。

 もちろん一般人であるわたしにとっては見たことも聞いたこともない……え? 一般人? 違う。

 わたしは……私はグラース公爵令嬢。王族とも血縁関係のある最上位の貴族だから、天蓋付きのベッドなんてあって当たり前……あれ?


 おかしい。そう思った瞬間に、日本で生きた32年間の記憶と、この世界で生きた5年間の記憶が同時に頭の中を駆け巡る。

 ラノベなんかでは頭痛や高熱が出るのが定番だけど、そんなこともなく記憶の統合はあっさりと終わる。


「異世界……転生だ」


 叫びたくなる気持ちを抑える。前世ではオタクだったから異世界転生なんて垂涎ものだけど、公爵令嬢である私の記憶では扉の向こうではメイドが待機している。

 大声を上げれば不審に思って入室を求めてくるだろうし、異世界の記憶があるなんて狂人になったと思われて両親に報告されてしまう。

 異世界転生しているとわかったからには、まずは作品を突き止めなくちゃ!


「……誰?」


 いそいそとベッドから降りて、鏡の前に立ってみるけれど、そこには金髪碧眼の幼女がいるだけで、誰かなんてわかりもしない。

 待って待って。わたしはこれでも前世ではオタクだったの! 有名どころだけじゃなくて幅広く作品を愛していたの!

 でもね、幅広く愛しすぎて、わたしが読んでいた、あるいは見ていた作品は数千を超えるの! パッと見で、あの作品のヒロインね。なんて、わかるわけないでしょ!


「ラノベの主人公ってすごいのね」


 思わず呟いたけれど、それが正直な感想。なんで物語の主人公たちは、自分の出自が即座にわかるのかしら?

 いや、わたしだってアニメやゲーム、コミックになっていて絵がついている作品ならわかる自信はあるけれど、投稿小説みたいに絵がないのに気づくってどういうこと?


「多分、アニメ化された作品じゃない。ゲームでもコミックでも」


 自身の中にある私の記憶を総動員してみた結果、この国はテイラー王国で、私の名前はローズマリー・グラースであるということはわかる。

 この世界には魔法はないけれど魔術は発展していて、いわゆる便利家電のような魔導具が生活のそこかしこに存在している。

 グラース公爵家は2代前、私の曾祖母が当時の国王と兄妹で、王女が降嫁することで公爵家へと格上げされた歴史がある。


 現在の国王は曾祖母の兄であった国王から見て孫にあたる。つまり、私の父と現在の国王は、はとこになるわけね。

 ……うん。全然、心当たりがないわ。名前もローズマリーって、ラノベにもゲームにもありがちで特定不可だし、見た目も金髪碧眼って、あるあるじゃない。


「これから、どうしよう」


 異世界転生の定番といえば、原作知識で無双する展開だけれど、物語の内容どころか、何の物語かもわからなければ無双なんて無理な話だ。

 そもそも、この世界は本当に物語の世界なの? まったく関係のない、ただの異世界に転生したって可能性もあるわよね。

 訳も分からないまま、自分が物語の主人公、あるいは悪役令嬢だと思い込んで、ヒーロー候補の高位貴族の男性を侍らしていたら危険。


「うん、そうね。まずは現状把握をしつつ、派手な動きはしないようにしましょう」


 前世のわたしの記憶は一時封印ね。グラース公爵令嬢としての私の記憶を思い出しましょう。

 といっても、5歳になったばかりの少女に知識は期待できないけれどね。


 父はジェイソン・グラース。公爵を務めていて公爵領の管理が仕事、屋敷から長期で離れることはないから、王城などでの役職はないでしょうね。

 母はレベッカ・グラース。公爵夫人として父の仕事の手伝いをしているようで、お茶の時間や私への教育の時間以外は自分の執務室に籠っているわね。

 そして私、ローズマリー・グラースはグラース公爵令嬢。兄弟姉妹はいないから、公爵家の唯一の子供ってわけね。今は読み書きや計算、あとはマナーを練習しているわ。


 ちなみに住んでいるのは公爵領にある屋敷……のはず。だって、外には田園風景が広がっているから、これが王都だったとしたら長閑すぎるでしょう。

 それに他の貴族が訪ねてきたりもしていないから、公爵領で合っているでしょう。

 屋敷の中には侍女や侍従、執事にメイドにと私たちの生活を支えてくれる人たちは、たくさんいるけれど、あまり意識して生活したことはないわ。


 私にとっては一緒に生活している家族みたいなものだけど、一人一人の名前や性格を把握しているわけではない……まあ、5歳だから仕方ないわね。

 といっても、扉の外で待機しているのはこれまでの記憶でわかっているから、いそいそとベッドの上に戻って、ベッドサイドの鐘を鳴らしたわ。

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